今回はe-文書法のメリットと文書保管のポイントおよびデジタル広告と著作権について解説します。情報のデジタル化という観点から見て、ホスティングサービスを使ううえで意識するポイントを紹介します。
- 今回取り上げるテーマ
- e-文書法のメリットと文書保管のポイント
- デジタル広告と著作権
e-文書法のメリットと文書保管のポイント
文書保管の電子化が可能に
2005年4月1日、これまで紙による保存が義務付けられていた各種書類、帳票類の電子データ化を認めた「e-文書法」が施行されました。この法律は、民間業者が電磁的記録を保存できるようにする「通則法」(正式名称は、民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律)と、個別の法律の一部改正によって規定する「整備法」(正式名称は、民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律)からなっています。
e-文書法は規制のための法律ではなく、規制緩和を目的としています。これまで、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表、税務処理に使う領収書、保険契約や証券取引に伴う契約書などは、短いもので2年、長いものになると10年もの期間、紙による保存が義務付けられていました。今回のe-文書法では、そうした文書保管の電子化が認められました。しかも、複数の法律によって定められた文書が横断的に包括されています。
e-文書法の最大のメリットは、文書の保存のためにかかっていた膨大なコストを大幅に削減できることです。倉庫の保管費用、倉庫までの輸送費用、保管期限を過ぎた文書の廃棄費用などのコストが不要になります。また、文書の検索性が高まり、不要になった文書の廃棄も容易に行えるなどのメリットもあります。
e-文書法で求められる要件
電子化された文書には2つの種類があります。1つは、作成された段階から破棄まで一貫して電子的に存在する文書。もう1つは、元々紙として存在していた書類を電子化した文書です。e-文書法では、そうした種類の違いについて問題にはせず、電子的に存在する文書の保存を認めています。
ただし、電子化された文書は複製や改変が容易であり、正しい文書であるという証明が紙以上に求められます。そこでe-文書法では、繹ー電子保存された内容が整然として明瞭に表示され、書面に出力できるように措置されていること、繹ェ保存義務期間中に消失したり、改変や消去されたりしないように措置されていること、繹ォ盗難、漏洩、盗み見などを未然に防止するように措置されていること、繹ャ文書を検索できるよう措置されていることなどが要件として定められています。
e-文書法に対応した文書管理を行うには、セキュリティ技術の整備と文書のライフサイクルを考えたストレージ基盤が必要です。セキュリティ面では、文書が保存された日時と、それ以降は改竄されていないことを証明する原本性が求められます。そのために、紙文書の印鑑証明にあたる電子署名や公的なサービスが発行するタイムスタンプの技術が利用されることになります。
また、ストレージ基盤では文書が作成されてから廃棄されるまでのライフサイクルを考えることが重要です。この考え方はILM(Information Lifecycle Management=情報ライフサイクル管理)と呼ばれています。ILMによる文書管理では、たとえば、重要性の高い文書を信頼性の高いストレージに保存し、使用期限が過ぎた文書をより安価なストレージに移動し、最終的にテープなどの外部メディアに保存してストレージから削除する方法を採ります。こうした方法を採用することで、より一層確実な文書管理が行えるわけです。
2008年4月以降には、通称日本版SOX法と呼ばれる内部統制に関する法律の施行も予定されています。情報がデジタル化していくことに伴い、ますますデータの取り扱いに注目が集まっていくでしょう。また、管理者レベルでは、その点を強く意識していく必要があります。
デジタル広告と著作権
すべての制作物には著作権がある
オンラインショップなどで利用されるホームページは、テキストや写真、音声、動画など、さまざまなデータで構成されています。このさまざまなデータおよびその集合体であるホームページには著作権が存在するでしょうか。
答えはイエスです。著作権法では思想または感情を創作的に表現したもので、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するものを著作物として定義しています。つまり、表現に独自性、創作性があれば著作物として保護され権利を主張することができます。
そのため、逆に他人の創作物をホームページに利用する場合は注意が必要です。著作権法では私的な複製の自由が認められていますが、個人が趣味で作成したホームページであっても、不特定多数の人が閲覧できる場合は私的な利用とは認められません。そのため、他人の著作物を利用する際には著作権者の許諾が必要になります。
転載可能な著作物と引用
ただし、出典元を明らかにすれば比較的自由に転載できるものもあります。その代表と言えるのが、政府や官公庁、地方自治体などが公開している広報資料や統計調査などです。著作権法では、こうした公共団体が広く一般に周知させることを目的として作成した文書は、新聞/雑誌などの刊行物に転載できることが定められています。ホームページは刊行物には当たりませんが、広く一般に周知させることが目的と解釈され、著作権法に違反しないと考えられています。
著作権法では著作権者の許諾を必要としない例外も認めています。それが「引用」です。著作権法で言う引用とは、他人の著作物の一部を報道、批評、研究などの目的で「正当な範囲内で」そのまま使用することです。ただし、「正当な範囲内」は非常に曖昧であり、ときどきトラブルになることがあります。
そのため、引用する他人の著作物が「従」であるとわかるように構成する必要があります。たとえば、文章を引用する場合、カギカッコで括ったり行を空けたりして明らかに区別するようにします。
すべてがダメではない
著作権は守らなければならないルールですが、著作権に縛られる必要もありません。とくに、オンラインショップの場合、販売する商品の製造/販売元企業のホームページから画像やテキストをコピーして流用することがあります。もちろん、そのまま流用した場合は著作権者から指摘を受けることが考えられます。しかし、商品を販売する場合、製造/販売元企業にも利益になるわけですから、使用許諾を個別にきちんと取得さえすれば転載できることも少なくありません。
また、個別に許諾を取らなくても、出典元やコピーライト表記を掲載するだけで転載できる場合もあります。画像やテキストを流用したい場合は、そのホームページの利用条件をよく読むことをお勧めします。
流用したい場合は、とにかく出所元に確認を取り、未然にトラブルを防ぐ姿勢が大切でしょう。
また、最近は「クリエイティブ・コモンズ」という創造的な作品に柔軟な著作権を定義するライセンスおよび提供団体も登場しています。場合によっては、こうしたライセンスも意識した制作物の展開をすることで、幅の広いコンテンツを創り上げることができます。
たとえば、Web 2.0的なサービスFlickrで公開されている画像イメージのいくつかはクリエイティブ・コモンズライセンスになっており、さまざまな用途での活用が可能です。