景気停滞が長引く中、少しでもIT効率を上げるための努力を続けている企業は少なくありません。その中で、2009年から注目を集めているのが「マネージドサーバ」です。今回は、ホスティングサービスの主流となりつつある「マネージドサーバ」について概要を解説します。
マネージドサーバとは?
マネージドサーバとは、サーバ管理の手間がかからない専用サーバのことです。リソースを丸ごと利用できる専用サーバのメリットを享受しながら、運用管理や保守、障害対応等をホスティング事業者に委託できます。サーバ管理に関する知識やノウハウが不要なマネージドサーバは、共用サーバと同じ感覚で利用できる手軽さから、急激に人気が高まっています。
一般的な専用サーバは、ネットワーク回線とハードウェアの設置、OSのインストールまではホスティング事業者が行います。引き渡された後は、利用者自身が管理者権限(root権限)を使って、ブログ、SNS、メールといったソフトの追加インストール、プログラム言語(PHP、Perl、Ruby等)を使ったCGIの設定、DNSの設定、データベースの設定等を自由に行うことができます。
しかし、専用サーバは、セキュリティアップデート、不正アクセス対策、障害の一次対応、サーバの再起動等の運用は自前で行わなければなりません。24時間365日サーバを止められない場合、専用の管理者を置き、常時監視・管理する体制を構築する必要があります。急激なトラフィックの増加や、ハードウェアの故障等でサーバ障害が発生した際は、迅速な復旧対策に努めなければなりません。
サーバの運用で最も手間のかかる作業の1つがセキュリティアップデートです。セキュリティパッチが公開されたらできるだけ早くアップデートしなければ、悪意のあるクラッカに侵入され、顧客の個人情報や企業の機密情報が盗まれたり改ざんされたりする恐れがあります。アップデート時は、他のソフトに与える影響を1つひとつ検証する必要があります。不用意にアップデートを実行してしまうと、サーバ上のソフトが動かなくなり、最悪の場合、業務停止に追い込まれる危険性もあるからです。
このように専用サーバの管理は、担当者の大きな負担になります。サーバに詳しい担当者がいない中小企業は、対応に頭を抱えることになるでしょう。大企業でも1人の担当者がサーバ管理にかかりっきりになってしまうのは、業務効率上好ましいことではありません。
マネージドサーバは、上記のような専用サーバのデメリットを解消します。提供サーバを熟知したプロの技術者が24時間365日体制で管理・運用するため、トラブルに対して迅速な対処が可能です。サーバ管理にともなうさまざまなコストを削減でき、安心して本来の業務に集中できます。
マネージドサーバのメリット
それでは、マネージドサーバのメリットを具体的に見ていきましょう。
運用負荷の軽減
マネージドサーバは、専門知識を持つプロの技術者がサーバの運用・管理を代行します。24時間365日の監視し、急激な負荷増に対しては、障害が発生する前の段階で適切な対処を実施。障害発生時は事前に取り決めた手順で復旧プロセスを実行したり、サーバを再起動したりします。自社で提供しているサーバを熟知し、数多くの運用ノウハウを抱えているホスティング事業者が管理・運用を担当するので、最も効率的で確実と言えます。
利用者側は、サーバ運用にかかる人的負担と手間が大幅に削減できます。さらに、専用技術者を教育したり、新たに雇用する必要がなくなります。その結果、今までのサーバ管理者を本来の業務に専念させ、コアコンピタンス確立に向けて事業を推進することが可能です。
高可用性の実現
マネージドサーバは、高可用性を実現するために、システムの冗長化、ハードウェア交換、バックアップ等のサービスを提供しています。万一の障害発生の際にも迅速に復旧する体制を用意。ネットワークやサーバの状況を監視し、過負荷による処理速度の低下が発生したり、何らかのトラブルによってサーバが停止したりした際は、一次対応あるいは二次対応を実行して速やかな復旧に努めます。
また、サーバ運用の専門家である事業者から、日常の運用・監視を通して蓄積されたノウハウをもとに、適切なアドバイスを受けることもできます。
システムの拡張に対応
サーバ運用中、事業の拡大等によって、システムの拡張を迫られることはよくあることです。また、新規サービスを立ち上げたり、顧客獲得に向けたキャンペーンを実施したりするケースも出てくるでしょう。
マネージドサーバならシステムの拡張にも柔軟に対応。ユーザ数やサービスが増えた際も、メールアドレスの追加、ドメインの追加、データベースの追加等が手軽にできます。また、事前にホスティング事業者に相談すれば、パフォーマンス分析に基づくスペックのアップグレードやサーバの追加、複数台構成といったアドバイスを受けることも可能です。
万全なセキュリティ対策
マネージドサーバでは、手間のかかるセキュリティアップデートやOSのアップデートサービスも提供しています。専門家が十分な検証を実施したうえで実行するため、契約者自らが行うより安全で確実、スピーディに対処できます。
また、ファイアウォール機器の設置やOSのファイアウォール機能の設定サービスを提供しているマネージドサーバもあり、自社のセキュリティポリシにマッチした高いセキュリティレベルが設定可能です。さらに、各種ログの分析や専用機材を使ったネットワーク監視によって不正アクセスをブロックするサービスや、拠点間を安全性の高いVPNで接続するサービスを提供しているマネージドサーバもあります。
マネージドサーバに適した利用シーン
管理者のいない中小企業のサーバ運用
数十人規模の中小企業の場合、専門のサーバ管理者を置いているケースはごくわずかでしょう。「人よりITに詳しいから」といった理不尽な理由で、サーバ管理の仕事を押しつけられている管理者も少なくありません。
その結果、管理者にかかる負担が増し、本来の業務に集中できなくなります。最悪の場合、仕事の目標を失った管理者が退社してしまうこともあるでしょう。
このような場合、管理をまるごと委託できるマネージドサーバが有効です。
フロントサービスの開発に集中
Webサービスの開発を中心に行う制作会社等でも、手間のかかるインフラ回りのことはすべてマネージドサーバにアウトソーシングし、上位のアプリケーション開発に専念することで、投資効果を高めることができます。
また、マネージドサーバは、高価なサーバやネットワーク機器等はレンタルとなるため自社の資産になりません。機器のメンテナンス費用や修理代もかからず、運用コストの削減にも効果的です。
24時間365日の安定運用が求められるECサイト
WebサービスやECサイトを展開している企業の場合、システムの停止やサービスレベルの低下は機会損失となるだけでなく、同時に顧客からの信用も失うことになります。
マネージドサーバは、24時間365日の運用・監視体制により、障害対応や故障時の迅速な対応を実現しています。また、セキュリティアップデートやファイアウォール等のセキュリティ対策により、個人情報の流出や不正アクセスによるデータ改ざん等も防御します。
柔軟性の高いサービスの新規立ち上げ
キャンペーンサイト、会員向けサービスサイト等の新規サービスを立ち上げたい場合、すべて自社で行うのは手間と時間がかかります。マネージドサーバを提供するホスティング業者に委託することで、必要なサーバのスペック、サーバ構成、データベースやプログラムの実装等に関して、開発段階から相談に乗ってもらうことができます。