オンラインショップや会員制有料サービスなど、Webを使ってビジネスを展開するとき、まず考えるのは集客の方法ではないでしょうか。そうした集客を目的として調査、広告活動することをマーケティングと言います。同じマーケティングでも、Webビジネスならではの手法があります。ここではWebマーケティングの手法を考えてみましょう。
Webへのアクセス数を意識する
Webマーケティングでは、どのように集客するか=Webサイトへのアクセス数を増やすかということが当面の目標となります。アクセス数が増え、オンラインショッピングの売上が伸びたり、有料サービスの会員が増えたりすれば、そのWebマーケティングは成功したと言えるでしょう。
そのWebマーケティングの入口となる、Webサイトへのアクセス数を詳細に調査するのがアクセスログ解析サービスです。アクセスログとは、Webサイトに訪問した人がどのようなページを閲覧したか、その訪問者はどこからアクセスしているかなどを示す「足跡」のことです。アクセスログ解析サービスは、こうした足跡を調査/分析するために必要な情報を提供してくれます。
アクセスログ解析サービスではどんな情報が入手できるのでしょうか。このサービスが利用しているデータは、訪問者のブラウザから得られる環境変数から取得します。私たちはいろいろなWebサイトを何気なく利用していますが、Webサイトにアクセスしたブラウザは、Webサイトにさまざまな足跡を残してきます。
たとえば、ブラウザの「REMOTE_HOST」「REMOTE_ADDR」という環境変数からは、ブラウザが実行されているクライアントホスト名とIPアドレスを入手することができます。クライアントホスト名とIPアドレスをインターネット上で公開されているWhoisデータベースで検索すれば、Webサイトにアクセスした人が利用しているISP(インターネットサービスプロバイダ)、ADSL、FTTH、CATV、ダイヤルアップといった接続回線の種類、アクセス元の都道府県名などがわかります。
また、「HTTP_USER_AGENT」という環境変数からは、どんなOSを利用しているか、どんなブラウザを利用しているかという情報も入手できます。この情報と、アクセスログ解析サービスがクライアントに残してくるCookieの情報を組み合わせることで、クライアントホスト名が変わったり、Proxyサーバを経由したアクセスであったりしても、何回目の訪問なのかを把握することができます。
「HTTP_REFERER」という環境変数からは、どこのページのリンクをたどってアクセスしたかという情報も入手できます。これを分析すると、どの検索サイトで何というキーワード検索を使ってアクセスしたかがわかります。
アクセスログ解析サービスは、こうした情報をログとして蓄積し、それをさまざまな角度から解析して可視化します。Webサイトを構成する複数のページでアクセスログ解析を実行すれば、閲覧されたページのコンテンツ内容から訪問者をセグメント化し、どんな客層が中心なのか把握できます。そして、中心的な客層にターゲットを絞った商品の品揃え、サービスの拡充を行うことで、売上の向上、会員数の増加などが見込めます。さらに、どのリンクがよくクリックされるか、どのような順番でページを閲覧しているか(訪問者のこうした軌跡を「クリックストリーム」と言います)もわかるので、効果的なページデザイン、コンテンツの最適化などを図ることが可能になります。
アクセス数向上の鍵を握るSEO
アクセスログ解析サービスを利用すると、Webサイトへのアクセス数を増やすために取るべき行動が見えてきます。中でもとりわけ重要なのが、上述のHTTP_REFERERから得られる情報からも入手できるように、検索エンジンに登録すべきキーワードを考えることです。ただし、全文検索方式を採用するロボット型検索エンジンの場合、ページ内にキーワードを埋め込むことで、検索エンジンに登録させるのは容易です。けれども、それだけではアクセス数が増えるとは一概に言えません。
そこで登場したサービスが「SEO」(Search Engine Optimization=検索エンジン最適化)です。SEOとは、自社のWebサイトが検索エンジンの上位に表示されるようにページを改善、工夫する技術のことです。
インターネット利用者の中の多くは、検索エンジンを利用して自分が必要な情報を求めています。そうした検索エンジンを使う人は、能動的に情報を取得する意欲のある人と言えます。つまり、検索エンジンでヒットしたWebサイトに訪問する人は、ビジネスに結びつく可能性の高い見込み客と言えるのです。
現在、WebマーケティングにとってSEOは極めて有効かつ重要な対策と考えられています。より汎用的なキーワードで、ヒットした検索サイトの中でも常に上位に表示されていれば、アクセス数の多い大手ポータルサイトに広告を打つよりもはるかに高い費用対効果が得られるからです。全文検索方式を採用するロボット型検索エンジンは、決められたアルゴリズムに従ってランク付けをして表示順を決定しているため、そのアルゴリズムを解析することで上位に表示することが可能になります。しかし、アルゴリズムは頻繁に変更され、ランク付けも高度化しているため、専門家であっても確実なSEOは難しいとされています。
現在、SEO対策で最も重視されているのが「Google」です。多くのポータルサイトも最近はGoogleと提携し、その検索エンジンを利用しているので、Google対策を行うだけでも相当な効果が得られます。また、Windows標準のブラウザであるインターネットエクスプローラの標準ポータルサイト「MSN」が提供する「MSNサーチ」の利用者も多く、全文検索方式を採用するロボット型検索エンジンではこの2つの対策が重要です。また、人手によって登録されているディレクトリ検索サイトの代表「Yahoo!」の場合、ディレクトリ検索に早期に登録してもらうためのノウハウが存在すると言われています。Yahoo!対策も、Webマーケティングを成功させる鍵を握っていると言えるでしょう。
SEOを行うには、Webマーケティングを専門とするコンサルタントを利用すると良いでしょう。ただし、SEOを請け負うサービス事業者は少なくないので見極めが必要です。料金は適正か、効果測定はアクセス数だけでなく売上を考慮しているか、キーワードの登録数に制限があったりキーワード変更が不可能だったりすることはないか、などをよく吟味して事業者を選択しましょう。
効果的なSEMとメール広告
SEOは検索エンジンの検索結果上位に表示させる手法ですが、SEOも含めて検索エンジンを広告媒体として考え、Webマーケティングを行うのが「SEM」(Search Engine Marketing=検索エンジンマーケティング)です。SEMにはSEO以外に、常に上位表示が約束される有料の検索エンジン登録、ディレクトリ登録があります。
たとえば、GoogleやYahoo!では、ロボット型検索エンジンやディレクトリ検索のほかに、こうした有料サービスを提供しています。とくにGoogleが提供する「AdWords」というサービスは、利用者のキーワード検索の結果の一部としてWebサイトが上位表示されたり、検索結果ページの横に別枠でWebサイトへのリンクが表示されたりします。SEO対策を請け負うサービス事業者に膨大なコストを支払うよりも、有料の検索エンジン登録、とくにキーワード連動型の広告を利用するほうが費用対効果に優れている場合もあります。
一方、Webサイトを利用する以外で効果が高いのがダイレクトメールやメールマガジンを利用したメール広告です。
ダイレクトメールはWebサイトへの訪問者に対し、あらかじめ欲しい情報を登録してもらい、その情報のみを送信するメール広告です。住所、年齢、性別などの属性を詳細に分類し、ターゲットを絞り込んだ広告が配信できるので、その効果は非常に高いと考えられます。とくに、オンラインショップで過去に購買した経験のあるリピーターを確保するにはダイレクトメールが最適です。
メールマガジン広告は、メールマガジンの中に挿入するタイプのメール広告です。メールマガジンは、趣味嗜好に対しスポット的にターゲッティングされたものが多く、商品の購買層を絞り込むのに適しています。メールマガジンの場合、他の企業や団体が発行するメールマガジンに出稿する場合と、自社でメールマガジンを発行する場合があります。すでに発行部数に実績のある前者のほうが効果的です。広告の手法も、メールマガジンのヘッダやフッタに挿入するタイプ、メールマガジンの一部に記事風に展開するタイプなどさまざまです。
効果の高いと言われるメール広告ですが欠点もあります。Webサイトへの訪問者が能動的に登録したはずなのに、受信者が情報に興味を失ったとたん、スパムメールとして扱われるおそれがあるのです。スパム対策にも対応したウイルス対策ソフトウェアなどのセキュリティ関連ソフトウェアを導入している場合、そのダイレクトメールのたった一人の受信者がスパムメールのデータベースに登録するだけで「迷惑メール」と判断され、読まれる前に削除されることもあるのです。
Webマーケティングを活用しよう
今回紹介したWebマーケティングを活用すれば、Webサイトへのアクセス数が増えることは間違いありません。ただし、そこから売り上げ増に結び付けるには、魅力的な商品の品揃え、購買欲を煽るWebサイトのデザインやコピーなども重要になってきます。また、Webマーケティングをアウトソースする場合には、サービス事業者をよく吟味して選ぶことが重要になります。Webマーケティングには少なからず費用が発生するので、どんな方法が費用対効果が高いかを常に考慮して、積極的に情報収集することをお勧めします。