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第6回ホスティングサービスでアクセス解析を意識する

オンラインショップを運営する際に必ず導入したいのが「アクセス解析」です。Webサイトの訪問履歴を記録したログを調べれば、何人の顧客がどこから訪問しているのか、どのページがよく見られているか、といった情報が手に取るようにわかります。アクセス解析で入手した情報は、集客数を増やし、売上を伸ばすための第一歩と言えるのです。

アクセス解析とは?

「オンラインショップを開設しました。魅力的な商品を求めやすい価格で提供しているはずなのに、予想以上に売上が伸びてくれません」という声をしばしば耳にします。売上が伸びないという前に、そもそもオンラインショップに顧客は訪ねてきているのでしょうか?

Webサーバには、閲覧者側からのあらゆるリクエストをアクセスログとして記録する機能があり、ホスティングサービスの多くは利用者に対してアクセスログを提供しています。ログには、アクセスした時刻、アクセス元のIPアドレス、Webブラウザの情報など、たくさんのデータが詰め込まれています。ただし、ログファイルだけを見ても、一般の人には英数字の羅列にしか見えません。

そこで、ログファイルに蓄積されているデータをさまざまな角度から解析し、表やグラフの形式でWebサイト運営者にわかりやすい情報を提供するのが「アクセス解析」の役目です。

アクセスログは情報の宝庫

アクセス解析を行うことで、実に多くの情報を入手することができます。アクセス数は表示するページ単位に加えて、HTMLファイル、JPEGやGIF、PNGの画像ファイルなど、ページを構成するファイル単位で記録されています。

たとえば、ルートディレクトリのindex.htmlというファイルのダウンロード数(これを「ヒット数」と言います)からはトップページの閲覧数がわかります。これを時刻別に集計すればアクセスが集中する時間帯がわかります。また、ヒットしたファイル容量を累計することでネットワークのトラフィックも調査できます。

ファイル名と時刻だけでなく、閲覧者がどのWebサイトのリンクをクリックして訪問したのか経路の分析も行えます。これにより、ダイレクトメールやメールマガジン、他社媒体に掲載した広告の効果を計れます。さらに、リンク元のURLからは、どの検索エンジンから訪問したか、検索キーワードは何かという情報がわかるので、検索エンジンを効果的に利用する方策を練ることができます。

この他、閲覧者に関する情報も入手することが可能です。アクセス元のIPアドレスを調べることで、閲覧者のISPや企業/組織を特定できる他、使用しているWebブラウザやOS、画面の解像度や色数などの利用環境がわかります。

ちなみに、アクセスログから取得可能な情報はほぼ決まっています。これは、アクセスログファイルの仕様が事実上標準化されているからです。ほとんどのWebサーバは、共通ログファイル形式(CLF=Common Log Format)である「NCSA形式⁠⁠、NCSA形式をベースにWorld Wide Web Consortiumが拡張した「W3C拡張形式」などのフォーマットでログファイルを生成します。

アクセス解析を行うには、アクセス解析ソフトウェアを導入する方法とアクセス解析サービスを利用する方法があります。

アクセス解析ソフトウェアの特徴

アクセス解析ソフトウェアは、Webサーバが蓄積したログファイルを分析、可視化します。パッケージ製品として販売されている有償のものから、オンラインで提供されている無償のものまで、さまざまなソフトウェアが存在しています図1⁠。

図1 アクセス解析ツールとして有名なUrchin
図1 アクセス解析ツールとして有名なUrchin

アクセス解析ソフトウェアでは、有償/無償にかかわらず基本的なアクセス解析の内容に差はありません。これは、アクセス解析に利用するメ材料モであるログファイルが同じだからです。しかし、基本的なアクセス解析の内容は同じでも、ソフトウェアによって解析の精度や見せ方が異なります。これが有償と無償の大きな差になっています。

アクセス解析ソフトウェアの大きな特徴は処理能力の高さです。ソフトウェアは、Webサイト運営者が利用しているローカルのコンピュータで稼働するので、Webサーバからログファイルを取得さえすれば、ネットワークのトラフィックの影響を受けずに素早い解析処理が実行されます。また、ソフトウェアはグラフや表などの表現力に優れ、非常にわかりやすい解析結果を得られます。そのため、毎日アクセスログをさまざまな角度から詳細に分析して、アクセス数の変化をコンテンツに即座に反映させるサイト運営者には最適と言えるでしょう。なお、ログファイルさえあれば、アクセス解析ソフトウェアを導入する前のデータを解析できるのも特徴です。

高度なアクセス解析ソフトウェアには、データマイニング機能も用意されています。データマイニングとは、蓄積されたデータを分析し、データ間の相関関係を探し出す技術のことです。アクセス解析ソフトウェアのデータマイニング機能を利用すれば、閲覧者がどんな行動をしているのかセグメントに分け、行動パターンの傾向を知ることができます。

アクセス解析サービスの特徴

一方、インターネットで提供されているアクセス解析サービスは大きく2種類に分けられます。

1つは、ホスティングサービス事業者が提供しているアクセス解析サービスです。これは、Webサーバが保存したアクセスログをベースにするもので、アクセス解析ソフトウェアとほぼ同じ機能が提供されます。

ただし、アクセス解析ソフトウェアとは異なり、解析した結果の表現力が乏しく、時間別ヒット数や閲覧者情報の累計など、ごく基本的な情報しか入手することはできません。また、ホスティングサービスのほとんどは、ログファイルの保存期間が1週間から1ヵ月程度なので、それ以前のデータを分析、比較するようなことはできません。こうしたサービスは、高度なアクセス解析を望むサイト運営者には不向きですが、どのページが最も閲覧されているかという基本情報がわかるので、売れ筋商品の傾向程度はつかむことができるかもしれません。

もう1つは、ASP型のアクセス解析サービスです。これは、アクセス解析専門の事業者が有償または無償で提供しているものです。このサービスは、Webビーコン型とも呼ばれるもので、Webサーバが保存するアクセスログを利用せず事業者のサーバにアクセス解析情報を蓄積します。そのため、アクセス解析を実施するページ単位でHTMLファイルにスクリプトを埋め込んで利用します。解析の結果は事業者の専用ページに表示されます図2⁠。

図2 アクセス解解析サービスの例AccessAnalyzer.com
図2 アクセス解析サービスの例(AccessAnalyzer.com

ASP型アクセス解析サービスの最大の特徴は、閲覧者の特定に優れている点です。HTMLファイルに埋め込んだスクリプトは閲覧者のコンピュータにCookieを発行します。ページを閲覧するたびにCookieを更新するので、誰が何回訪問しているか、前回の訪問はいつかといった情報が得られるのです。閲覧者がCookieを削除しなければ、アクセス元のIPアドレスが毎回変更されるダイヤルアップ接続だとしても、閲覧者を特定できます。

また、Whoisサーバとの連動により、アクセス元のIPアドレスからISPや組織の情報が得られるだけでなく、都道府県、FTTHやADSL、ダイヤルアップなど回線種類も特定することが可能です。

こうした機能とアクセス制御サービスと組み合わせ、特定の閲覧者のアクセスを禁止できるサービスもあります。このサービスは、掲示板の荒らし行為など、サイト運営者を悩ませる悪質な閲覧者からサイトを守る役目も果たします。

アクセス解析の今後

現在のアクセス解析は、基本的にサーバに蓄積されたログを基にしたものですが、新しいアクセス解析も登場しています。

その1つに、RSSのアクセス解析が挙げられます。ここ数年で個人の情報発信ツールとしてブログが急速に普及していますが、RSSはブログの更新情報を配信する手段として利用され始め、現在ではニュースサイトでも積極的にRSS機能を提供しています。そのRSSの利用状況を調べるために、RSSフィールドのアクセス解析を行えるソフトウェアやサービスが登場しています。

また、HTMLファイルにスクリプトを埋め込むことで、そのページが他サイトからリンクを張られたときにRSS経由で情報を通知するサービスも登場しています。このサービスを利用すると、どんなサイトにリンクされているか、閲覧者はどうやってサイトに訪問したかということをより詳細に知ることができます。

アクセス解析で得られた情報を活用し、コンテンツに反映させることは、サイトの集客数を増やし、オンラインショップの売上を伸ばすためには欠かせません。無償で利用できるソフトウェアやサービスもたくさん存在するので、まずはお試しでアクセス解析を行ってみましょう。

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