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第11回CMS活用2010(後編)

企業サイトでは更新性の高いコンテンツ管理などに向けてCMSの導入や移行が進んでいます。しかし、導入効果を最大化するためには、継続的な利用だけではなく、新しいデバイスの登場やWebを取り巻く技術の向上といった変化に応じた柔軟な取り組みが不可欠です。そこで今回は、CMS運用のポイントについて考察します。

CMSの運用に求められるもの

CMSは、テンプレートにしたがってページを生成し、ページ間の連携も自動生成することができます。このため、誰でも容易に更新作業ができるようになり、迅速な対応とコストの削減が図れます。また、ワークフロー機能を有したCMSであれば、承認、公開のワークフローや認証、アクセス権限などが設定でき、組織に合わせた運用体制が確立できます。このように、CMSの導入は、企業サイトにとって大きなベネフィットを提供します。

しかし、CMSの特性を踏まえたうえで導入しないと運用に負担がかかり、返ってコストを増大させる要因にもなります。つまり、企画・設計の段階からCMSのシステム要件と業務プロセスのルール化を視野に入れて、スタートを切ることがCMS運用の第一歩となります。

運用管理のポイント

そこで、CMSを効率よく運用していくためのポイントを紹介していきます。

たとえば、コンテンツの管理を効率化する方法として、ポピュラーなものの1つにテンプレートの管理があります。

もともとスキルのある人がページを1枚ずつ制作したり、各ページごとにリンクを手作業で管理したりする作業負荷を軽減するために、デザインや更新作業を共通化して作業効率を高めるのがテンプレートのメリットです。

現在は、サイト全体で1つのデザインテンプレートを設定し、バリエーションを持たせる方法や、ページごとにデザインテンプレートを使用する方法など、企業によってさまざまな運用形態がとられていますが、管理のしやすさと統一されたデザインのバランスをとって、自社に合う運用を目指したいところです。

また、コンテンツの増加によって、テンプレートのバリエーションが増えてくると更新作業が煩雑化します。その場合は、ヘッダやフッタなど共有できる部分を共通テンプレートとして持つことで管理性を高めることが可能です。こうしたテンプレートは、CMSの機能として用意されていることが多いので、選定の際にチェックしておくようにしましょう。

コンテンツの変更を行う場合、変更された部分をタイムリーに公開、配信するには、制作から更新作業を経て、それをアップするまでの承認、確認作業がポイントになります。このフローができあがっていれば、コンテンツの変更も自動更新が可能です。

一方、このフローができていない場合は、変更内容に応じて制作、承認作業を実施する仕組みを作っておくことが大切です。ページ公開を手作業で行っている企業の中には、公開日時の関係でFTPへのアップが深夜になってしまうケースもあるようです。公開後に事後承認をとってトラブルになることもあるので、イレギュラ対応などルール化しておきましょう。

CMSは更新が頻繁に行われるページに利用されるケースが多いため、更新のバージョン管理が正しくできていないと、変更箇所のミスや更新がされない事態にもなりかねません。管理作業のルール化、特に口頭による不明確な修正指示や担当者が複数いる場合の更新方法などは混乱を招きやすいので、ディレクターが内容をまとめ、その指示のもとに作業を行うフローを構築することが必要になってきます。

ほかにも、時間がない中での更新チェックは、複数の承認者に合意を得ることが難しい場合があります。その場合の承認プロセスも決めておかないと、運用の生産性が低下したり、品質が低下してしまうことが少なからずあります。コンテンツ管理をいかに標準化、自動化していくか、そのための仕組みを考えCMSを運用していくことが重要です。

更新作業では、ファイルの管理も重要なポイントの1つです。たとえば、ファイルごとに上書きする部分更新と、全部のファイルを上書きする全ファイルの更新とでは、データの同期にそれぞれ整合性や更新時間などのメリット、デメリットがあります。ファイルの整合性を確保するには、ファイルのステイタス管理を本番環境、テスト環境、作業環境で回していくなど、ルール化が重要な鍵となります。このようにCMSの運用は、CMSの機能に依存するというより、運用体制を確立していくことが大切になります。

動的コンテンツ管理、携帯サイトの運用

最近は動的なコンテンツが増えてきましたが、CMSでも動的なページをプラグインやモジュールによって統一した管理が容易にできるようになりました。しかし、配信作業などまで行うと返って運用負荷が増大してしまうことがあります。このような場合は、静的なページの保管や編集と切り分けて運用するケースや配信をCMS以外でシステム化するなど、管理負荷を軽減する仕組みを検討しましょう。

もう1つの大きな潮流として、携帯電話やスマートフォンなど、新たなデバイスへの対応も求められています。Twitterやブログ、YouTubeなどとの連携機能や効率化を図るためのシステム開発など、設計時にはなかった要件に応えるためには、プログラミングを自社や外部に委託する必要があります。追加要件は、同じプログラム開発会社に頼まなければならないなど制約が多いと運用にも支障をきたすため、それを回避するにはAPIが公開されている携帯専用のCMSを活用しましょう。

ホスティングサービスの活用

これまで紹介してきたように、CMSを運用管理していくためには、制作や管理、承認などさまざまなポイントを整理して、柔軟に成長に合わせて対応していくことが大切です。しかし、自社でCMSを導入する場合、社内にCMSに詳しい専門スタッフが必要だったり、膨大なコンテンツがすでに稼働しているサイトでは、CMSに移行する部分の棚卸、切り出し作業が発生したり、そうした要件をクリアしていく必要があります。

このような煩雑な作業や人的リソースを解決する方法の1つとして、⁠ホスティングサービス(レンタルサーバ⁠⁠」があります。ホスティングサービス(レンタルサーバ)は、CMSの運用をあらかじめ考慮したサービスが提供されており、必要な機器やネットワーク環境、CMSのインストール、設定、障害サポートなどが用意されています。また、CMSアプリケーションのライセンスがレンタルのため、コストを抑えて利用することも可能です。将来の拡張などもオプションで対応できるなど、柔軟性も大きなメリットです。

面倒な設定やシステム運用の部分をアウトソーシングして、ページの制作や更新作業、公開など本来の業務に専念できる環境を作るのも、運用の効率化につながるはずです。


CMSの導入は、活発な情報発信を実現し、企業競争力を高めるだけに、継続的な運用、環境の変化や企業の成長に合わせた運用を目指しましょう。

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