Hosting Expert

第13回来るべきHTML5の世界へ(後編)

「HTML5.0(以降HTML5⁠⁠」のリリースに向けて、2010年9月にW3Cから今後の対応が発表されました。それによると、Xデーは2012年3月。そこで、今回は来るべきHTML5の世界の後編として、HTML5でできること・できないこと、HTML5化することのメリット、PCからスマートフォンまでといったテーマでポイントを解説していきます。

HTML5でできること、できないこと

2010年9月、HTML5の最終草案のアナウンス予定日が2011年5月になることが発表されました。おもな仕様はほぼ固まってきており、周辺の仕様が今後議論されていく模様で、順調に進めば、最終草案以降、勧告候補、勧告案、2012年3月にW3C勧告が予定されています。

このように、約1年半後にはHTML5が正式にリリースされ、業界標準仕様へとなるわけです。この期間を長いと見るか、短いと見るか、少なくともWebシステムやWebサイトの作成に関わる人はチェックが必要です。そこで、HTML5でできること、できないことを整理しておきましょう。

HTML5でできること

HTML5ではHTML4やXHTML1との互換性を最大限保てるように、HTML構文が採用されています。

たとえば、SVG(Scalable Vector Graphics)やMath ML(Math Markup Language)をHTML内で使用することができるので、最新のFirefox4やInternetExplorer9などのWebブラウザでは、グラフィックや数式がそのまま表示されます。

さらに、文書を構造化しやすくするため、前回も紹介しましたが、導入部分のグループ化をする<header>、フッタ情報を含むことができる<footer>、参照されるフローを表示する<figure>、ナビゲーションをセクションで表示する<nav>など、レイアウト専用のタグが新設されました。

こうした要素や属性の変更により、たとえば、<html>、<head>、<body>といった属性の省略、<meta>要素や<br>要素を</>のみの記述に省略など、タグを省略することができるため、シンプルな記述でマークアップし、効率よくサイトを作成できるようになります。つまり、構文の互換性を保ちながら、HTML文書内の要素が整理されたといえます。

このほかにも、ネットワークに接続されていない状態でWebアプリケーションを利用できるオフライン機能、データをWebブラウザ内に保存することが可能なWeb Storage機能、入力支援機能を強化した新しいフォーム機能など、Webサプリケーションやサイト作成を便利に、容易にする機能が充実しています。

さらに、音声や画像を利用した動的なマルチメディアコンテンツに対応するため、audioやvideoといった要素が追加されました。これにより、標準的な機能としてコンテンツを公開することができます。これまで、音声や動画を含め、Webアプリケーションの機能は、脆弱な部分が多く見受けられました。HTML5では多くのJavaScriptのAPIが公開されているため、多彩な表現力や操作性を兼ね備えたリッチなWebアプリケーションの開発が可能になるのも大きなメリットといえるでしょう。

HTML5でできないこと

それでは、HTML5でできないことは何でしょうか。そのひとつが、先ほど互換性を最大限保てるとしたように、シンプルにした結果、一部の要素や属性が含まれておらず、開発者側でサポートする必要がある点です。

また、マルチメディア機能では、Flashがストリーミング動画を複数のブラウザに表示できるのに対し、HTML5ではその対応ができません。これは、HTML5向けのビデオエンコーディング技術がブラウザメーカで統一されていないためで、Internet Explorer 9やSafariなどは「H、264」を、MozillaやOperaは「WebM」をサポートしています。さらに、動画機能についても、動画制御や著作権管理、フルスクリーン表示などに未対応であり、マルチメディア機能を中心に実装する動きが活発化する中、できないことも明らかになってきました。

HTML5化することのメリット

HTML5は、すでにアップルやGoogleが対応するサイトを公開し、日本でもHTML5対応をうたうサイトが続々と登場しています。

ある意味完成されたXHTMLとCSSによるコーディングから、HTML5対応を敬遠する動きも一方でありますが、HTML5はもともとブラウザベンダやWeb開発者によってHTMLを進化させる動きが母体となっています。

したがって、HTML5化するメリットは大きいといえます。その中でも、最大のメリットはブラウザの相互互換性です。これまでHTMLやCSSなどで作成されたWebプログラムがブラウザによって動作しないことが多々ありましたが、HTML5では仕様を標準化することでその問題を解決しています。

また、HTML5は、標準仕様によってWebサイトやアプリケーションの構造化が図れます。これにより、検索エンジンとの親和性が高く、SEO対策に近いことができてしまう利点があります。ほかにも、外部の機能を使うことなく、標準機能としてマルチメディア機能が利用できるなど、Webサイトやアプリケーションの表現力、インタラクティブ性は格段に高まるでしょう。

このように、HTML単体では不可能であった機能が多数搭載され、それらが簡単にしかも体系化されている点、相互運用を考慮している点、マルチメディアに対応している点などがHTML5化するメリットになります。

開発や運用においても、属人的なスタイルから脱却し、世界共通の標準的な技術、ルールのもとで行えることも大きな意味があるといるではないしょうか。

PCからスマートフォンまでHTML5

もうひとつ、大きなトレンドにスマートフォンへの対応があります。

PC市場では、Internet Explorerがブラウザにおいて圧倒的なシェアを誇っていますが、スマートフォン市場では、mobile Safariを載せたiPhoneが大半を占めています。さらに、AndroidもWebKitベースのブラウザを搭載する機種が今後登場してくるため、スマートフォン市場のHTML5化が早く進むのではないかという声が多くあるのも事実です。

実際、モバイルアプリケーションをHTML5とCSS3で実装するメリットとして、プラットフォームごとにアプリケーションを開発する必要がない点やアプリケーション開発の容易さ、テストがPC上でできる点などがあります。また、HTMLは動画について、専用のプラグインに頼らない仕様を打ち出しており、クラッシュしにくく、大量のリソースを必要としない点も魅力のひとつに数えられます。一方、HT03-Aへの対応、統合開発環境が少ないなどのデメリットもあります。統合開発環境については、今後、仕様が固まってくるにつれて解消されてくるでしょう。

さらに、前編でも紹介しましたが、HTML5はiPadに対応した動きが進んでおり、ニコニコ動画はHTML5で動画再生に対応することを発表しました。iPadでニコニコ動画の再生やコメント投稿が可能になるなど、iPadでHTML5対応プレイヤを起動させて、動画を再生することが可能になります。今後、HTML5が普及するためには、Flashとの競合が避けられませんが、スマートフォン市場を席巻するiPhoneやiPad、さらにAndroidも含め、HTML5のWebアプリケーション開発に投資できるというメリットは、新たなビジネスチャンスにつながることでしょう。

今日まで築き上げたXHTMLとCSSによるコーディングを捨てて、HTML5へ移行するには技術やコストの問題もありますが、制作会社や運用会社にとってHTML5は近い将来対応しなければならないものであることは間違いありません。約1年半というリリースまでの時間を有効に活用し、来るべきHTML5に向けた準備を今から始めてみてはいかがでしょうか。

おすすめ記事

記事・ニュース一覧