第2回では、現代の消費者動向に合わせた制作物、プロモーションを行うには必要となる経営戦略について提示してゆきます。
企業理念、経営ビジョン、分析、競合把握より導き出される経営戦略。その経営戦略からどのようにプロモーションや制作物を活用していくのか? 目先の収益のみを求めたキャンペーンページなどの制作物やポイントセールなどのプロモーションを実施している企業をよく見受けられます。しかし、それは短期的な結果にしかつかながりません。長期的に収益をあげるために、戦略を立てる事が、求められており、経営戦略から導かれたプロモーションや制作物でないと、あたりさわりのない、誰にも刺激を与えられないのが現状です。
戦略を立てるために必要になる企業理念・経営ビジョン
経営戦略とは、企業理念・経営ビジョンを持ち、さまざまな分析を行い、競合を把握し競争優位を創出し、消費者に価値を提供する事です。
それでは、企業理念・経営ビジョンから順番に提示していきます。
企業理念とは、社会に提供する価値、その企業の経営姿勢、行動規範の事、経営ビジョンとは、将来のありたい姿の事です。
企業理念・経営ビジョンを持てば、経営者、マネジャークラス、現場社員のそれぞれの気持ちが団結され、経営が上手くいくのです。企業理念・経営ビジョン持たない企業はその時々の環境で自社の事業を頻繁に変更してしまっています。そうなると消費者に企業のブランドを覚えてもらえることもないですし、業績が上がる事には結び付かないでしょう。
経営戦略を立てるための分析
経営戦略を立てるには、さまざまな分析が必要です。
分析には、外部事業環境の分析・市場環境分析・自社環境分析の大きく3つあります。
①外部事業環境分析
外部事業環境の分析とは、経済的、政治的、技術的、社会的な環境要因に関係してきます。経済的な要因にはGDP成長率、金利動向、為替動向、物価水準データ、政治的な要因には消費税、法人税、特定事業規制法の動向データ、技術的な要因には自社事業に影響を与える動向データ、社会的な要因には人口推計、労働力調査、人口動態調査、世帯動態調査データなどを基に分析をします。
外部事業環境分析は、挙げていけばきりがなく、どれだけ盛り込んでも完壁という事はないので、自社の事業特徴をつかんだ上で、重要な項目に絞って、その動向や自社への影響、対応方針を検討するようにしていきます。
②市場環境分析
市場環境の分析とは、業界全体の売上高推移、業界全体の売上高伸び率、業界の平均経常利益率、年平均売価、製品の需給動向、製品ミックスの変化、新製品や代替製品の出現可能性、市場への参入・退出状況、海外市場の動向、顧客像の変化・顧客ニーズのデータを基に分析をします。
③自社環境分析
自社環境分析は、事業分析、生産環境分析、販売環境分析から成り立っています。
(a)事業分析は製品や営業力、生産力が要因となります。製品分析には、製品はどのくらいの利益につながったか、製品はどのようなマーケットに訴求しているのか、製品のマーケットでの競合状況はどうか、製品は製品ライフサイクル上のどの段階にあって、今後どの程度の成長性が見込まれるのかという事が分かるデータを基に分析をします。
営業力分析には、販売政策、営業組織・体制、営業システム、販売チャネルデータを基に分析をします。
生産力分析には、生産技術・開発、生産システム、設備投資データを基に分析をします。
(b)生産環境分析は、原材料の需給動向、生産技術の変化、業界内での設備投資動向、労働力の需給状況が要因となりますのでこれらのデータを基に分析をします。
(c)販売環境分析は、販売チャネルの変化、広告・宣伝・販促方法の変化、物流の動向が要因となりますのでこれらのデータを基に分析をします。
自社環境分析では統括システム導入を検討する必要がでてくる事もあります。
短期的な収益面ではシステムまで必要ないと考えるかもしれませんが、長期的な収益面では導入しないと戦略が立てられないからです。
分析は、3つのうちどれか1つでも欠けていると誤った判断をしてしまいますので、3つの分析を行うべきです。また、分析を行う際はデータをどこから収集するかも重要になります。多くの企業は分析を行うにあたってデータ収集を体系的なやり方でせず、日常的に入っている断片的な情報を通じて得た経営者の個人的な印象、推測、直感に頼って判断しています。そうではなく、体系的に信憑性のあるところからデータ収集を行い、より正確な仮説を立てる事が求められます。
経営戦略を立てるための競合把握
経営戦略を立てるためには、競合を把握し、競争優位を創出する必要もあります。
どれだけ精度の高い分析をしても競合を把握しておかないと「機会」を失い、「脅威」に影響を受け業績があがりません。
ここでいう「機会」というのは、企業がその競争上のポジションや経済的パフォーマンスを向上させるチャンスの事で、「脅威」というのは、企業の外部にあって、その企業の経済的パフォーマンスを減殺する働きをするすべての個人、グループ、組織を指します。
競合を把握するというのは、競争相手の今後の戦略変更の内容とその成功の可能性、他の同業者が新たに採用する有効な戦略上の動きに対する反応を予測し、さらに将来発生すると思われる業界内での変化や、業界を超えた幅広い環境面での変化に対する対応を知る事です。
また、「この業界ではどの企業を競争相手にするべきか、その企業のどんな動きを競争の対象にするべきか」「その競争相手の戦略的な動きは自社にどんな影響を及ぼすか、その動きをどれくらい重視する必要があるのか」「自社がまともに競争すると相手が感情的になったり自暴自棄になるおそれがあるので、競争を避けたほうが望ましい分野はどこか」なども考える必要があります。
このようにして競合把握をする事で自社のポジション、自社の強みが明確になり、競争優位が創出できるのです。
消費者に受け入れられる戦略立案
企業理念、経営ビジョンの策定で、どのような会社になりたいかをまとめ、信憑性のあるところからデータ収集し精度の高い分析を行い、競争業者の動きを予測してきました。
このような段階を経て初めて戦略立案が可能になり、自社の強み、自社のポジションが明確化され、消費者に価値を提供できます。
皆さんが消費者という立場で考えてみれば、その製品やサービスにどのように魅力を感じ購買行動に至るのかわかると思います。
たとえば、化粧品をWEBで購入するとき、価格だけで購買行動に至りますか? 商品の特徴や他社との比較をしているのではないでしょうか? ターゲットとする消費者に価値を感じてもらうには、強みが明確に伝わり、ターゲットとする消費者に満足してもらえる製品やサービスでなければいけない事が分かるはずです。
ただし、さまざまな分析や競合把握結果を見ると分かるようにプロモーション活用や制作物のみが収益に影響を与えるのではありません。
資金調達、資金運用、財務構造改革、機能別、人事改革、流通の整備、価格体系の見直しなど多くの要因があり、複雑に絡みあっています。
本稿は、現代消費者に求められるプロモーションや制作物の紹介ですので、細かな各戦略についての説明は省略させてもらいますが、プロモーションや制作物は戦術(手段)でしかない事を理解しておいてほしいと思います。
現在消費者に求められているプロモーション活用や制作物
上記で戦略立案をする考え方を述べてきました。それでは、その戦略をどのようにプロモーションや制作物に活用してゆくか提示します。
オンライン広告(リスティング広告)
まず、プロモーションの1つであるオンライン広告のリスティングを見てみます。リスティングの「タイトル」や「広告文」は自社の強みが明確になっているもので消費者に価値を届けられるものでなければ効果がありません。
たとえば、ある審美歯科の場合、タイトルを「大阪駅から1分の審美歯科」 広告文を「ホワイトニング実績1万2,000人!1回の通院で清潔感UPしませんか?」という設定で広告出稿しました。この企業の強みは主要駅から近いという事、消費者に提供できる価値は実績豊富なドクターにより美しくなる体験を届けている事なのですが、それを強調して表現しているのがわかると思います。
Webサイト
次に制作物の1つであるWebサイトを見てみます。
みなさんが活用しているサイトは、自社の強みが明確になっていますか? 制作者は表面的なデザインばかりに目が行きがちですが、ナビゲーションの位置やナビゲーション名、情報構造の上下関係を自社の強みが明確になっており、消費者に価値を届けられるような作りになっているのか確認をすべきです。
たとえば、地方の町中の成人病治療をしている内科では、Flashなどを使用して動きを持たせるよりも、住所や治療や保証内容などの情報を患者がわかりやすい構造で設計します。これは、ターゲットである消費者は高齢者であるので、混乱を避けるためにコンテンツを最低限の量にし、基本情報が一目でわかるようにしなければならないからです。
この内科では独自の治療方法、信頼のできる保証内容が強みであり、患者には健康な生活を送るという体験を価値として届け、届けているのがわかると思います。
その他「Facebookの投稿はどんな趣旨で行えばよいのでしょうか?」「リピート対策、ブランディング施策はどんなツールを使えばいいのでしょうか?」などという質問を頂きますが、企業理念、経営ビジョン、分析、競合把握より導き出される経営戦略を立てなければ回答はできません。
中小企業であれ、大手企業であれプロモーションを行う際、制作を行う際には、戦略から導かれるものでないと収益としての効果がありません。
たしかに、現状は戦略はコンサルタント、プロモーションはマーケター、オウンドメディアは制作者と各々の専門家で分業している事が多いのですが、これでは改善点の判断を誤り、実利に結び付きません。
ですので、今後は、マーケターも制作者も経営戦略を理解した上でプロモーション、制作物を提供してゆく必要があるのです。