本日2010年1月27日、モバゲーオープンプラットフォームがリリースとなりました。弊社カヤックもモバゲーオープンプラットフォームの企画・開発に取り組んでいます。現在は数十社のみが先行開発パートナー企業となっていますが、今春にはAPIが一般公開され、誰でも開発可能になるそうです。そこで今回から数回にわたり、2010年1月27日にリリースした「モバゲーオープンプラットフォーム」の「ソーシャルアプリ」の企画の立て方から、実際の開発までを、カヤックの事例を参考にご紹介していきたいと思います。
そもそも、ソーシャルアプリってなんだ?
「モバゲーオープンプラットフォーム」についてお話をする前に、今回は初回ですので、「 ソーシャルアプリ」の説明からはじめたいと思います。昨年あたりから国外ならMySpace、facebook、国内ならmixiなど大規模SNSで話題となっていますから、業界の方や開発されている方はご存知かもしれません。
大雑把に例えると、他人の畑で自分の畑を作れる仕組みです。しかも、多くの地主は土地の賃料は無料にしているため、借主は初期費用がかかりません。地主の要求する謝礼は、貸した畑で商売をした売上額に応じて手数料を支払う出来高制にしています。借主は作物を販売したり、畑の見学料など商売の方法は任されています。つまり、美味しい作物や魅力的な畑を作る技術があれば、その土地を借りて誰でも参加ができるのです。さらに、地主のお得意先のお客さんとも知り合えるので、大きな広告予算をとって宣伝をする必要もありません。
なぜ、そのように自分の畑つまりSNSをオープンにしたのかという背景の1つには、Googleが提供しているOpenSocialがあります。これはSNSがオープン化しやすいようGoogleが開発したもので、モバゲーオープンプラットフォームもこのOpenSocialを使用しています。OpenSociaについての説明は割愛いたしますが、詳細は以下のサイトでご確認ください。
OpenSocial
http://code.google.com/intl/ja/apis/opensocial/
気になるソーシャルアプリマーケットの市場規模
このようなオープン化の流れ事態は目新しいことではありませんが、注目すべきは、昨今のSNSサイトがオープン化の波にのったことで新たなビジネスチャンスが生まれているという点。顧客同士のネットワークが商品として価値を生み出すSNSにおいて、それをオープンにするということは、地主のお得意先に作った作物を気にいってもらえれば、噂が広まり翌日からは行列をなして買いに求める現象が起きる可能性が高いということです。
実際、どのくらいの市場規模があるのかというと、西欧圏では推定1,000億円市場、国内市場では株式会社ミクシィの笠原氏の発言によれば推定200億円と言われ、ここ1、2年で急成長しているマーケットと言えます。
GMOリリース記事
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000511.000000136.html
笠原氏発言
http://business.nikkeibp.co.jp/article/nmg/20100113/212134/?ST=nmg_page
コラム:話題のソーシャルアプリ
2010年初頭現在、国内ではどのようなものが人気があるのでしょうか。これから制作をしようという方はチェックしておくべき実例をいくつか紹介したいと思います。
■mixi
サンシャイン牧場(提供:Rekoo Media)
プレイヤーは自分の農場を与えられ、いろいろな作物を育てて、売却することができます。また、レベルに応じて育てるものの種類が増えます。マイミクはその人の牧場にアクセスすることができます。
まちつく(提供:ウノウ)
もともとは独立したサービスでしたが、mixiアプリに参加後さらに人気が向上。街づくりゲームのモバイル版。携帯の特性を活かして、GPS通信を行い、その地域でしか獲得できないお土産やスタンプなどの位置を絡めたコンテンツがあります。
■GREE
クリノッペ(提供:GREE)
専用のペット「クリノッペ」を与えられ、ご飯を食べさせたり、踊りを覚えさせたり本物のペットのように可愛がることができます。他のクリノッペに飴というアイテムを与えてコミュニケーションをとることができます。
釣り★スタ(提供:GREE)
釣りをしながらいろいろなステージをクリアして楽しむゲームです。釣り竿や餌など釣りアイテムを買うとランクの高い魚を釣ることができます。仲間を集めてチームで釣りを競うこともできます。
■モバゲー
怪盗ロワイヤル(提供:DeNA)
プレイヤーは怪盗になり、ミッションでいろいろなお宝を獲得するゲームです。そして、お宝は他のプレイヤーと対戦して奪うこともできます。一方で、仲間を集めると対戦能力が上がり勝利しやすくなります。
ホシツク(提供:DeNA)
自分の星を与えられ時間を進めることで文明を発展させていくゲームです。他プレイヤーの星に探索隊を派遣しアイテムを採取することで発展させることもあります。
現在のところは、どのプラットフォームでもゲームが幅広く人気があり指示されているようです。
面白法人のソーシャルアプリ
カヤックではソーシャルアプリへの取り組みとして、mixiアプリをWeb、モバイルでリリースしています。
誕生日や血液型などマイミクに関するクイズを自動で生成しクイズ形式で回答していくゲームです。
一般ユーザが投稿した漫画を読んで楽しむことができる漫画サービスです。
自分専用の執事を雇い、質問を投げかけると何でも紳士的に受け答えしてくれる人工会話アプリです。
ここで儲ける!ソーシャルアプリのビジネスモデル
ソーシャルアプリに多く見られるビジネスモデルは、アイテム課金を主に収益を上げるものです。基本は、すべてのコンテンツが無料でプレイができるため、中には「フリーライダー」としてずっとタダでプレイしているプレイヤーもいます。ゲームにより有料プレイヤー、無料プレイヤーの比率は異なりますが、9割以上は無料プレイヤーだと言われています。つまり、残りの1割の熱狂的なファンが支えているという構造になっています。
この1割をどうつくり出すか?が、収益性の高いゲームづくりの鍵となります。このあたりの仕掛けの工夫も、次回から紹介したいと思います。
モバゲーオープンプラットフォームの魅力
さて、ここからはモバゲーに話を戻したいと思います。各種ソーシャルアプリの企画にあたって、まず抑えるべきはその媒体の特性。その媒体だからこそできることを、うまく企画に落とし込むのがヒットへの近道と考えます。
モバゲーオープンプラットフォームの特徴を考えてみましょう。
①ゲームに特化!
モバゲーの媒体の特徴としては、ゲームサイトなのでアプリはお役立ちツールのようなものではなく、先の例のようにゲームアプリが受け入れられるのは察しがつきます。では、現在どのようなゲームが人気があるのでしょうか。
昨年の9月頃にリリースした4つのゲーム(前述の「怪盗ロワイヤル」「 ホシツク」と「海賊トレジャー」「 セトルリン」の4つ。どれもユーザ間のコミュニケーション色が強い「ソーシャルゲーム」 )で、1ヵ月で合計3億円の売上を上げていて、今現在もゲーム内でいろいろなイベント企画を実施していたり、TVCMを打っていることから人気が伸びていることが伺えます。最近では「モンスタートラップ」というソーシャルゲームも追加リリースされています。
また、IR資料からソーシャルアプリの1ユーザあたりの売上は月間約1,000円と報告しているので、約30万人の熱狂的なファンがいることになります。先の無料、有料ユーザの比率9:1に照らし合わせてみると、ソーシャルゲーム全体のユーザ数は非公開だったので、この発表を見た時点でのモバゲーの登録者数が1,500万で計算してみると、約2%のユーザがソーシャルゲームを有料ゲームを楽しんでいる計算になり、比率としては近似します。
さらに、1人あたりのARPU(Average Revenue Per User:月間平均収益)が約1,000円の売上という数字は驚きの数字。詳細な計算式はわかりませんが、先日営業利益の上方修正をしたグリーでさえもコンテンツARPUは120円といっている ので、その10倍となるということは、コンテンツそのものによる差なのか、モバゲーのサービス特性なのか、ユーザ層が明確に違うのか、はっきりとした答えはまだわかりませんが、いずれにせよ将来性がありそうです。
②既存のモバゲーアバターとどう連携するか?
モバゲーのサービスのもう1つの特徴として、すべてのプレイヤーが持つアバターがあります。注目したいのは、アバターそのものではなく、アバターに着せ替えるアイテムです。このアバターに着せるアイテムの種類が豊富なことと、3Dアバターという他ではあまり例を見ないアバターに力をいれていることからアバターの着せ替えアイテムが人気であることがわかります。
また、ゲームをクリアすると獲得できる着せ替えアイテムもあり、先の、怪盗ロワイヤルでもイベント企画をクリアすると特別アイテムをもらえるので、イベントのゴールがアバターの着せ替えアイテムになるほど、着せ替えアイテムの価値が高いことが伺えます。この着せ替えアイテムについては、3月あたりにAPIの開放が予定されており、カヤックとしても何かしら取り組んでいこうと考えています。
③サポート体制
モバゲーオープンプラットフォームにこれから参加するデベロッパーにとって有益な特徴は、サポート体制が整備されている点です。サービスがブレイクすれば、それだけサポート業務が忙しくなります。人手が足りなくてカバーできない状況となることは懸念事項となります。そこで現在、モバゲーオープンプラットフォームでは以下のサービスが用意されています。
レンタルサーバサービス
デベロッパー向けにレンタルサーバサービスがあります。もちろん、自前で用意することもできます。
ゲームテストサービス
開発したアプリのテストの代行サービスです。料金に応じてテスト項目を選択できます。
カスタマーサポートサービス
問い合わせへの対応代行です。対応内容も料金に応じてコースがあります。
公式サークル
デベロッパー向け、かつユーザ向けでもありますが、公式サークルというフォーラム機能がつきます。ここでユーザの声を拾うことや、ユーザと交流を交わすことができます。
④課金サービス
課金サービスが実装されているので、デベロッパーはリリース時から課金ビジネスを行えます。モバゲーでは、モバコインという課金サービスがユーザに浸透しているので、ユーザにとっても、またデベロッパーにとっても扱いやすく課金サービスのハードルが低くなっています。
本日リリース!面白法人のモバゲーオープンプラットフォーム
本日、面白法人カヤックのモバゲーオープンプラットフォーム第1弾をリリースいたしました。
カヤックのモバゲーオープンプラットフォームのターゲットは、10代~30代と年齢層を幅広く捉えています。子どもも大人も楽しめるアプリを開発していきたいと思います。
ゲームの種類としては、RPGゲームもあれば、シンプルなアクションゲームもリリースしていきます。
企画にオリジナリティがあり、ユーザが参加したくなり、気付いたらまた訪れてしまうような仕掛けを埋め込んだものを開発していく予定です。また、それぞれのアプリ間の連携が生まれるよう運営していきたいと考えています。
本日リリースしたのは「モバイルアームズ」「 携帯錬金術師」「 スーパーdeまり子」 の3つ。
詳しくは次回より、1つずつを取り上げて、そのアイデア~企画に落とし込み~開発 までを紹介していきますが、ここで少しだけ紹介。
モバイルアームズ
RPGゲームのシステムに、モバイルの特性を活かして実際の位置と連動して他のユーザと対戦できる機能を付与しました。パラレルワールドになっているバーチャル空間にプレイヤーが入り、モンスターや他ユーザとの対戦を通じて平和を取り戻すことをテーマとした、ストーリー性の強いゲームです。
携帯錬金術師
さまざまな素材を集め、組み合わせて錬金を繰り返し、特別なアイテムを錬金させることで商品をGETできる、これまでなかった形の新感覚錬金ゲームです。運だけではなく錬金の組み合わせも重要な要因となっています。また、運の良いプレイヤーは景品が当たります。第一弾はPS3やWii等を用意しています。
スーパーdeまり子
アクション・シューティングです。横スクロールのシンプルアクションゲームです。特徴的なおばちゃんキャラクターまり子の愉快な冒険アクションをお楽しみいただけます。
その他にも、3月ぐらいまでに3本程度のリリースを予定しています。
サバゲータウン(2月予定)
英雄になりたい(2月予定)
あぁ養殖(3月予定)
詳しくはURL:http://www.kayac.com/service/sp/mbga にて、順次公開していきます。
それでは次回からは、モバゲーオープンプラットフォームの開発の模様をご紹介していきたいと思います。