初めまして。「kulerで気軽にカラーコーディネイト」の連載を書かせていただきます、ブロッコ・デリ・アーキテクツ有限会社の吉田コマキと申します。普段はWebデザインやグラフィックデザインでお仕事をさせていただいて、それ以外ではアクリル画やFlashアニメーションを休日にちまちま作っていたりします。実は沖縄在住でして、そろそろ夏が手に届く季節です。ここ日本の南西から皆様に「kuler」をもとに「色」にまつわる様々なお話をご紹介していきます。どうぞよろしくお願いいたします。
kulerって何?
kuler(クーラーと読みます)は、Adobe Labsから発表されたWebアプリケーションです。現在、無償公開中でWebデザインのみならず、様々な「色」と関係した職業にしている方、生活をしている方にとっても素敵なツールです。
kulerを活用している世界中のユーザーが作ったカラーテーマも拝借でき、自分でつくったカラーテーマを提供することもできます。なんといっても一番の魅力は、色理論を知らなくともバランスのとれた素敵な配色を得られることでしょうか。
カラーテーマの作成には、RGB、CMYK、LABといったカラースペースが利用でき、もちろん、それらをWeb用の16進数値で表現することも可能です。各色それぞれ個別に選べるだけはなく、補色配色、三色配色、五色配色などから選べます。
今回の第1回目はkulerの使い方ではなく、まずは「色」について一緒に考えてみましょう。
私たちの生活の中には様々な色がある
私たちは、生活の中に様々な色の組み合わせを取り入れています。
服の色などはまさに毎日のことで、無意識に、礼儀のために、気分的に、その日の状態や状況によって変えています。
皆さんの今日の服装の色は?
例えば「今日は、(つきあったばかりの)彼氏とデートなの」と思えば、つま先から頭のてっぺんまであれこれ悩み、服の色が決まれば靴の色はどうするなどと、気を抜かないでしょう(私は抜きますが、苦笑)。「今日は、午後から面接がある」ならば、リクルートスーツなり、普段とは違う、かしこまった落ち着いた色の服装を。「今日はまる一日学校だ」という予定であれば、気軽な格好になり、色に気を使うことはないかも。
そして、お葬式であれば喪に服した「黒」を選択し、悲しく沈んでいる気持ちを表します。結婚式であれば花嫁の「白以外の色」を選ぶことで花嫁を引き立たせ、主役を譲る気持ちとお祝いの気持ちを込めます。
部屋の色、照明の色はどうしていますか?
夏の暑い日は、涼しげに白い軽めのレースカーテンに、ブルーのカーテン。冬になれば、少し厚手の布に暖かみのある色。ゆっくり過ごしたい部屋には、間接照明だけをともして落ち着いた雰囲気に。中には、過ごす部屋ごとに明るさを変えている方もいらっしゃるでしょう。
部屋の色や明るさは、心理や身体にも少なからず影響をするということで、意識的に取り入れている方も多いようです。そういえば、東京タワーも春夏と秋冬で照明の色が違うのをご存知でしたか?
色は、ものすごく生活に密着し、様々なシーンで私たちは「色」を変化させつつ暮らしています。私たちは様々な感情や状態までをも演出することができ、そこから理論や一定のセオリーも生まれています。
配色で生まれる単色にはない複雑なイメージ
前述の例のように、色ひとつで様々な心理や状態を表現できるわけですが、さらにそれらを組み合わせることによって、より複雑な表現も可能です。
これはみなさんも日常的に感じていることだと思いますが、色は互いに影響しあっています。2色以上の色の組み合わせは単色のときに比べてより大きく印象を変化させます。マッチする色のセオリーを知っておくことは、素敵なカラーコーディネイトの一歩になります。
例えば、高明度のパステルカラーだけで組み合わせると、隣同士の色はお互いに主張をしません。つまり、柔らかい印象を与えます。ベビー用品など、赤ちゃんのイメージを想定さませんか?
逆に力強さや、パワーを与えたければ、赤や黒などの組み合わせといった強い印象の色同士を使います。激辛の食品パッケージにはよく使われていますね。見るだけで「辛い」印象を持ちます。パンチもあって、頭にもガツーんと来そうです。
このようなカラーコーディネイトのパターンは、たくさんあります。2色、3色と使う色を増やすことで、さらに新しいイメージを生み出します。
印象強い配色(ブランドイメージ)
生活の中に「色」が多くあるお話をさせていただきましたが、より強い印象を与える「配色」があるのをご存知でしょうか。
たとえば、国旗。日本の日の丸は赤と白で構成されています。赤丸がなくとも、赤と白だけでもなんとなく「日本」をイメージさせませんか。その他の国でもそうです。ジャマイカやフランス、イタリアといった多くの国旗の配色は、私たちにその国を連想させます。さらに、その国の伝統的な配色というのも多く存在します。
そして、国旗だけではなく街中にあるコンビニエンスストアや、銀行、航空会社などの企業ブランドも配色だけでその企業を連想させるものを多くみかけます。
もちろん、ブランディングの成功は配色だけではありませんが、このように、色だけで人々に印象を与えられることができるようになると、成功のひとつとも言えるのではないでしょうか。
自然界の配色
インテリアやアパレル、企業イメージといった人工的な配色のお話をしていましたが、今度は自然界に目を向けてみましょう。
草花をじっくり観察したことはありますでしょうか。この配色をひとつひとつ拾って行くと、非常に上品な配色であることに気づきます。足元を探すと、地面にはシックな印象をもつ配色が多くあります。そして、ほ乳類は暖かみがあり、魚介類は艶かしい印象があります。
こうした配色には、落ち着く雑貨やインテリアコーディネイトに多く採用されています。少し意識して観察してみてください。
次回は、kulerを用いての色理論をお話します。「理論を知らなくても使える」と前段でお話しましたが、少しだけ理論を知っているとkulerのすばらしさにも気づけるはずです。