第2回はウエブ効果測定に重要なコンバージョン(直接・間接)、データ取得方法、測定開始前の注意点について解説します。
コンバージョンとは?
コンバージョンは成果ページに到達した数のことです。ウェブサイトにおける成果ページはECサイトであれば、購入完了ページや会員登録があげられます。
また、業種によっては資料請求完了や予約完了ページがコンバージョンとなります。コンバージョンページを成果ページや目標ページと呼ぶ測定ツールもあります。流入に対してコンバージョンする確率をコンバージョン率と呼びます。
コンバージョン率は次の式で求められます。
- コンバージョン率=(コンバージョン数÷流入数)×100(%)
コンバージョンの計測方法
コンバージョンに対する考え方も測定ツールによって異なる場合があります。
次のケースを考えてみましょう。
転職サイトが5/1からYahooにバナー広告を出稿したとします。
- 5/1にあるユーザがYahooのバナー広告から流入してその日はサイト内を閲覧して退出
- 5/3にはGoogleからキーワード「転職」で検索してサイト内へ流入。ブラウザにブックマークして退出
- 5/5にブックマークからサイトへ流入して会員登録を完了
この場合、測定ツールの計測方法によって結果が異なります。
- 同一セッション内でコンバージョンまで到達した場合の流入元だけをコンバージョンの対象として計測する
→コンバージョンの認知媒体は「直接アクセス(ブックマーク)」
- セッションと関係なく、一定期間内にコンバージョンした場合、そのユーザの期間内の最初の流入元を対象とする
→コンバージョンの認知媒体は 「Yahooバナー広告」
- セッションと関係なく、一定期間内にコンバージョンした場合、そのユーザの期間内のすべての流入元を対象とする
→コンバージョンの認知媒体は 「Yahooバナー広告」と「Googleキーワード 転職」
上記のような動きは著者の経験上、どのウェブサイトでも発生しています。
なかにはコンバージョンするユーザのきっかけとなった訪問は当日ではなくて、3日~2週間前が50パーセント以上を占めるサイトもあります。
最近では広告を見た後や広告をクリックした後のユーザの行動を把握するといったポストインプレッション[6]、ポストクリック[7]効果(間接効果)の測定が重要視されてきています。
間接効果の測定はセッション履歴の管理方法の優劣(測定ツールの設計思想)で差があります。
間接効果がどこまで測定できるかは、これからのウェブサイト分析の肝となる部分ですので、よく覚えておきましょう。
ご利用されている(またはこれから利用する)測定ツールやサービスのPV、セッション、コンバージョンの計測仕様はどうでしょうか?わからない場合はベンダーや代理店に確認しておきましょう。
データ取得方法の影響を理解する
データの取得方式には大きく分けて
- タグ方式(Webビーコン)
- ログ方式 ・パケットキャプチャ方式
があります。
データ取得の概要を以下に示します。
一般的にそれぞれ長所と短所があります。
表 データ取得方式
取得方式 | 長所 | 短所 |
タグ(Webビーコン)方式 |
- クッキーをツール側で独自に発行・管理しているので、ユーザ計測が正確。
- リアルタイムにデータが取得できる(表示できるツールとできないツールあり)
- ブラウザのキャッシュや[戻る]ボタンのアクセスも取得できるので、ページ遷移(経路)が正確に把握できる。
- ASP方式が多いので、すぐに利用を開始することができる。
- Flashイベントの追跡が可能(ツールに依存)
|
- タグを貼り付ける必要がある。
- データの取得はタグを貼り付けた後から開始。
- JavaScriptをオフにしているブラウザではデータが取得できない場合がある。
|
ログ方式 |
- 過去のデータも再集計が可能
- 画像など、PVに関係ないファイルのカウントも可能。
- HTTPステータスコード(404,500など)のカウントが可能
|
- ウェブサイト側でクッキーを発行していないとユニークユーザの識別が困難(PCサイトの場合)
- ブラウザでキャッシュされてウェブサーバーにリクエストが発行されない場合はデータは取得できない。
- ウェブサーバーが複数の場合やアクセス数が膨大なサイトの場合、マージ・集計のコストやログを記録するハードウエアが別途必要な場合がある。
- リアルタイム分析は困難。
|
パケットキャプチャ方式 |
- リアルタイムにデータが取得できる
- ミラーポートから一括して複数のWebサーバーのデータが取得できる。
- タグを貼り付ける必要がない
- URLパラメータ以外にHTTPヘッダや、ボディ内の値が取得(できるツールもある)
- 携帯サイトの場合、ユニークユーザの識別ができる。
- HTTPステータスコード(404,500など)のカウントが可能(ツールに依存)
|
- ウェブサイト側でクッキーを発行していないとユニークユーザの識別が困難(PCサイトの場合)
- ミラーポートで取得できるポイント以外のデータは取得できない。
- SSLページを取得するためにはSSLアクセラレータ等を経由して非暗号化した後でデコードされたポイントでデータを取得する必要がある。
- 導入時にネットワークを変更しなければならない場合もある。
- ブラウザでキャッシュされてウェブサーバーにリクエストが発行されない場合はデータは取得できない。
- ハードウエアコストがかかる。
- ネットワーク環境によっては導入が困難な場合がある。
|
上記の他にリダイレクト方式があります。 広告測定専用ツールはリダイレクト方式を採用している場合が多いようです。
測定ツールによってはログ+タグ方式や、タグ+パケット型のハイブリッド型でデータを収集できるものもあります。
本当に長所?短所?
自社にとって本当に長所?短所?
タグ方式ではこれまではページの貼り付け作業がネックと言われてきましたが、今はCMSツール、WebオーサリングツールやPHP,ASP,CGI,Rubyに代表されるスクリプト言語によるサイト開発が当たり前になってきました。
フッターや共通テンプレートにタグを埋め込めば、全ページに自動的に生成することができるため、利用のネックになることは数年前ほどではなくなってきたようです。
また、これまでPOST[8]データの取得はパケットキャプチャ方式でなければ困難とされてきましたが、JavaScript技術の発達、Webプログラミング言語の浸透により、工夫次第でタグ方式でも取得可能になってきています。
タグ型の場合も、ページ毎に異なるタグ(ページIDを振ったタグ)を貼り付けるタイプや、共通のタイプ、コンバージョンページのみ特別なタグを貼るタイプがありますので、仕様を確認しておきましょう。
パケットキャプチャ方式だからリアルタイムだと思い込んでいる人もいるようですが、実際はいったんファイルに出力して定期的にロード・集計するタイプのツールもあります。
この場合はリアルタイム性は失われますので、パケットキャプチャ方式だからリアルタイムとは限りません。
タグ方式のツールでも、リアルタイムをサポートしている場合もあります。
リアルタイムについては本当に自社のウェブサイトの測定において、リアルタイムレポートが必要とされるかを確認しましょう。すべての業種・ウェブサイトでリアルタイムなレポートが求められるわけではありません(設定が有効かどうかの確認がすぐにできて便利という理由が一番だったりします)。
また、リアルタイムが必要なのは、ページレポートや、一部の特定レポートのみであり、すべてのレポートがリアルタイム対応している必要はありません。
事前に確認
ツールを利用する前にライセンス・課金体系(買い取りなのか、月額課金か)、初期費用・オプション費用・保守費用を確認しておく必要があります。
その他に事前に確認しておく必要がある項目として以下が挙げられます。
- ウェブサイト側でクッキーを発行しているか?測定ツールでクッキーを利用してユニークユーザを認識できるか?
- フレームを使っているか?ツールはフレームの除外に対応できるか?
- Flash内のイベント計測をおこなうか?行わないか?ツールは対応しているか?
- 動的ページ[9]があるか?採用するツールは動的ページの計測に対応しているか?
- コンテンツがCDN[10]経由(Akamaiなど)経由で提供されていないか?
データの取得方式と測定ツールの仕様(セッション管理方法とコンバージョン)は合わせて確認しましょう。
重要な指標の作成
何を測定するのか、計測する数値の意味が整理できたら、重要な指標をつくりましょう。
以下はどの業種でも共通で重要な項目です。
- 広告(リスティング含む)のクリック数(流入数)とコンバージョン
- コンバージョン時の流入元(検索エンジン、流入元サイト、キーワード、広告)
- ページアクセスランキングと入退出ページ
- 検索キーワード上位20、検索エンジンのシェア
- 流入元(外部サイト:検索エンジンを除く)の上位20
- 期間内のユニークユーザ数
- 日別・月別のPVとユーザ数、訪問回数の推移
- 再訪問ユーザの割合
- 直帰率[11]・離脱率
PV数だけをチェックすればいい?
従来ではウェブの測定には必ずPVが最重要項目とされてきました。もちろん重要な指標には違いないのですが、PVが増えたからといって、必ずしもウェブサイトの効果があがったかどうかは言い切れない場合があります。
特に検索連動型広告の普及により、出稿・管理が容易になったこともあり、キーワードを大量に出稿する傾向にあります。
最近では数万ものキーワードを一度に出稿する企業も珍しくありません。
こうした大量出稿の結果、PV数は増えたものの、広告のクリック先(ランディングページ)のコンテンツ内容とキーワードが一致していないため、ユーザの意図と異なってしまい、すぐにサイトを離脱する確率が増えてしまった(直帰率が高くなった)ケースも多々あるようです。
直帰率を改善する手段としてLPO(ランディングページ最適化)が有効とされています。LPOについては別の機会で触れたいと思います。
測定の開始
不要なデータの除外が意図どおりできているか確認しましょう。
- 検索エンジンロボットの除外
- 社内からのアクセスの除外
- 拡張子による除外
- 測定に不要な特定のディレクトリ配下やファイルの除外
測定開始後の確認は重要です。
PV数、ユーザ数、流入元、広告からの流入の計測確認を行いましょう。レポートに反映されるタイミングについてもベンダーに確認しておきましょう。
特に最初の一ヶ月のデータは今後の指標にもなりますので、よく確認しておきましょう。
第1回と第2回のまとめ
第1回と第2回では、以下についてに説明しました。
特に用語と利用しているツールの仕様の理解は重要です。その後の測定データの理解に大きく影響しますので、しっかり把握しておきましょう。
次回は「流入元(集客)の測定」について説明します。