効果測定 虎の巻

第11回効果測定と他サービスの連携(前編)

ここまでの連載ではウエブサイトの集客・サイト内の測定について説明してきました。

今回は測定したデータと他サービスとの連携という観点で考察していきたいと思います。

ウエブサイトの測定では購入前の行動がわかる

ウエブサイトの効果測定データには、⁠見込み客がどこから来たか⁠⁠、⁠再訪問しているが、購入に至らなかった客」や、⁠購入客」の行動が把握できるという利点があります。

POSデータ等の売上データからは購入した顧客のデータはわかりますが、購入前の行動はわかりません。しかし、ウエブサイトではどこから流入したか、どのキーワードでサイトにたどり着いたか等の購入前の行動が測定できます。

図1 ウエブサイトの測定データの特長
図1 ウエブサイトの測定データの特長

基幹システムとウエブサイトの行動履歴を紐付ける

一般的には顧客管理データや、売上データは顧客がアクション(購入)を起こして初めてデータを収集することができます。

ウエブサイトでは訪問履歴をとることによって購入に至らない訪問者や、購入に至った顧客のデータを収集することができるのです。しかしながら、一般的にはウエブサイトの測定データだけでは顧客個人を特定できることはあまりありません。

この連載でウエブサイトの測定でクッキーでユーザを識別する方法が一般的だと説明してきましたが、測定ツールが発行するクッキーには通常は個人の属性情報は入っていません。 あくまで、同一ユーザ(ブラウザ)からの訪問かどうかを識別するために発行している場合がほとんどです。

したがって、ウエブサイトの訪問データと購入や資料請求、会員申し込みといったイベントを紐づけるための仕組みが必要です。 顧客管理データ等の基幹システムとウエブサイトの行動履歴を紐付けることによって、購入前の行動と購入データが結びつきさらに価値のあるデータになるのです。

図2 基幹システムとウエブサイトの行動履歴を紐付ける
図2 基幹システムとウエブサイトの行動履歴を紐付ける

他システムとの連携の主な例を以下に挙げてみましょう。

  • コンバージョンデータの基幹系システムとの連携
  • メールシステムとの連携
  • 顧客システムとの連携
  • アンケートシステムとの連携

以降では他システムとの連携例を説明します。

他サービスとの連携例

他サービスとの連携で最も要求されるのはコンバージョンデータと基幹データの連携でしょう。 コンバージョンに至ったユーザの流入情報(どこから来たか)を資料請求番号や申し込み番号と紐づけてデータを分析することにより、有益なマーケティングデータを得ることができます。

例えば、不動産系の場合であれば資料請求や、会員登録したユーザの流入経路データを基幹システムに格納することにより、来場予約、イベントデータと結びつけることができます。例えば、ある物件の来場予約につながった有効は集客媒体はなんだったか、リスティングの場合は有効なキーワードは何かを分析することによって、次回の施策(広告出稿、リスティング、アフィリエィト)や、SEO対策、会員獲得のマーケティング戦略を練り直すことが可能になります。

そのためには以下の事が必要になります。

  1. 流入情報とコンバージョン情報を測定できる仕組み
  2. コンバージョン時の流入情報と資料請求番号(注文番号)と顧客・売上データベースと紐づける仕組み

以下にデータを連係する際の例を示します。

図3 コンバージョンデータとウエブサイトの流入情報を紐付ける
図3 コンバージョンデータとウエブサイトの流入情報を紐付ける

測定システムからは次のデータを流入情報として渡します。

  • 自然キーワード
  • 検索エンジン
  • 流入元URL(ホスト、パス)
  • 広告媒体(バナー広告、リスティング)
  • 資料請求番号(注文番号)

連携方法は3つあります。

1)バッチで測定システムと基幹システムを連携する
測定システムまたは基幹サーバー側に連携データをファイルに出力してバッチプログラムで基幹系システムに取り込む。
2)リアルタイム
API等でリアルタイムで連携する。
3)ファイルダウンロード
CSV形式などで測定システムからダウンロードして、基幹系システムに格納する。

上記のデータと資料請求したユーザのデータを紐づけてデータベースに格納します。

顧客分析にウエブサイトの流入情報を加えることによって、分析の軸を増やすことができます。

つまり、

  • 翌日までにレポートでよければ 1)
  • リアルタイム性を重視するならば 2)

を検討することになります。

月1回や、コンバージョン数が多くない場合はファイルでダウンロードして、PC内で加工・集計してもいいでしょう。

ポイントはできるだけ、資料請求番号、注文番号などのコンバージョンイベントを識別できる項目で連携する仕組みを構築しておくことです。カテゴリなどの集計に近い項目で連携してしまうと、個人に紐づかないばかりか、分析するときにデータを再集約できなくなります。

また、最近では「ペルソナマーケティング」という手法がマーケティング活動で浸透してきています。ペルソナマーケティングとは「定量・定性的な両方のデータに基づいて架空のターゲット顧客の嗜好を想定して、製品開発・マーケティング活動をおこなうこと」です。

例えば、不動産の場合、想定される自社のターゲット層のイメージを想定してウエブマーケティング活動に取り入れます。事前のアンケートデータや見込み顧客のインタビューでターゲット層の価値観やライフスタイルを検証します。それから物件サイトのコンテンツをターゲット層に合わせたキャッチコピーでコンセプトを訴求します。

実際に来場予約・購入につながった顧客が事前にターゲット層に一致しているかどうかを検証する場合にウエブサイトの流入情報やキーワードは非常に有益なデータになるでしょう。

第12回も引き続き「効果測定と他サービスの連携」について説明します。

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