効果測定 虎の巻

第13回携帯サイトのアクセス解析

電通総研の2007年の発表では携帯(モバイル)の広告費は2011年に1,284億円となり、2006年(390億)の3.3倍にになると予想されています。

図1 携帯広告費の予測(電通総研発表の資料より作成)
図1 携帯広告費の予測(電通総研発表の資料より作成)

2006年にキャリアで大手検索エンジンが採用されてから、検索連動型広告がPC同様に広まり、携帯サイトでもSEM/SEO対策が当然となってきています。

携帯サイトでも効果測定の必要性が高まってきています。

しかしながら、これまでの連載で説明してきたPC版の効果測定と携帯サイトでは注意しなければならない点があります。

  • 1. 携帯キャリアでの仕様の違い
  • 2. キャリア毎のユーザの識別に違いがある
  • 3. 検索エンジンの種類
  • 4. JavaScriptが利用できない(一部機種を除く)

携帯サイトの注意点

効果測定という観点から注意しなければならない点は下記のとおりです。

  • 1. ユーザの識別
  • 2. セッションの識別
  • 3. リファラー

携帯主要キャリアでの仕様の違いを表にまとめました。

図2 携帯主要キャリアでの仕様の違い
図2 携帯主要キャリアでの仕様の違い

1.ユーザの識別

PCサイトの場合はCookieを利用してユーザの識別を行う場合が多いのですが、携帯の場合は端末識別番号が利用できます※注⁠。

DoCoMoの場合は、公式サイトの場合にURLに特別なパラメータを指定することにより、パラメータ値にDoCoMoのゲートウエイサーバーが識別番号を埋めてウエブサーバーに渡してくれます(非公式サイトは対象外⁠⁠。

また、2008年3月末からDoCoMoは非公式サイトでもURLにguid=ONを付与するこことにより、iモードIDと呼ばれる識別番号をHTTPヘッダ内に入れて、ウエブサーバーに渡すことが可能になりました。しかし、どちらの方法でもSSLリクエストは対象外です。

効果測定においては流入とコンバージョンを紐付けて測定する必要がありますので、これは重要なポイントです。

したがって、DoCoMoの場合はSSLリクエストと非SSLリクエストでユーザを紐付ける仕組みはウエブサイト側で用意しなければなりません。

KDDI, SoftBankの場合はSSL/非SSLリクエスト共にHTTPヘッダにそれぞれ識別番号が入ってきますので、これを利用することができます。

Cookieを利用する場合も、表のとおりすべてのキャリア・端末でサポートされているわけではありません。端末の発売時期によっても、Cookieサポートが異なるため、PCサイトでCookieを利用して測定しているツールをそのまま利用することができません。

※注
上記の説明は携帯端末で端末識別番号の送信を許可に設定している場合を想定しています。

2.セッションの識別

セッションの識別についても、すべての携帯端末でCookieが利用できるわけではありませんので、別の方法を採用する必要があります。よく利用されているのはURLにセッションIDを埋め込む(またはパラメータ)方法です。

  • 例:http://www.activecore.jp/m/members.jsp;jsessionid=XXXXXX

3.リファラー

DoCoMoの場合、リファラーが送信されてきません。キーワードに関する分析はDoCoMoの場合できません。

検索エンジンの種類

主要な検索エンジンはPCサイトでも携帯サイトでもGoogleとYahoo!なのは変わりませんが、3位以下は異なります。また、業種によって誘導される検索エンジンが異なりますので、対応している測定ツールで計測する必要があります。

データ取得方法

現在の主な測定ツールのデータ取得方法についてまとめました。

図3 携帯測定ツールのデータ取得方法
図3 携帯測定ツールのデータ取得方法
1.サーバーサイドスクリプト型
Webアプリケーションにあわせたスクリプトコードを埋め込んでデータを取得して、ツールベンダーの計測サーバーへリクエストを飛ばす方式です。
2.パケットキャプチャ型
Webサーバーへのパケットを取得して、計測する方式です。
主として導入型で提供されます。
3.ログ型
Webサーバーログを分析する方式です。ログ内にセッションIDやユーザ識別番号を含めて出力するようにしておく必要があります。
導入型とログをASPサーバーへ渡す方式があります。
4.モジュール型
Webサーバー(Apache対応が多い)にモジュールをインストールしてHTMLコンテンツにセッションIDを生成して、データを取得、ツールベンダーの計測サーバーへリクエストを飛ばす方式です。
5.プロキシー型
Webサーバーの手前にプロキシーサーバーを導入して、データを取得してツールベンダーの計測サーバーへリクエストを飛ばす方式です。

どの方式を採用するとしても、効果測定において重要なのはセッション、ユーザ識別ができなければ意味がありません。導入前には自社環境でセッション管理(特にDoCoMoの場合に確認要⁠⁠、ユーザ識別ができることを確認する必要があります。

携帯特有の解析

PCでも携帯でもこれまでの連載で説明してきた効果測定のポイントは変わりません。携帯サイトではこれからSEO/SEMが浸透していくことは間違いありませんので、単なるPV分析ではなくて、広告/SEO/SEM分析機能は必須となるでしょう。

ただし、携帯サイト特有の分析項目がありますので、対応について確認しておいたほうがよいでしょう。

複数キーワードの分析
携帯端末の場合、PCと比べて画面の表示量が少ないため、検索エンジンの順位が上位でなければ効果が見込めません。また、携帯ユーザの特徴として検索ワードを複数入力する傾向がPCユーザよりも多いことがあげられます。
これは利用者が複数ワードで絞り込むことに慣れているということを示しています。半数以上の50パーセントのユーザが上位5位までしか見ないといった調査結果もあります。したがって、携帯サイトのキーワード分析では複数ワードの分析を重要視する必要があります。
QRコードの効果測
携帯サイトへのアクセスはQRコード経由がかなりのウエィトを占めます。QRコードを活用して交通広告、紙媒体などのリアル広告と、モバイルを合わせた、クロスマーケティングの効果測定が可能となります。
機種プロファイル分析機能
携帯サイトのコンテンツ制作やアプリケーション開発にするために自社サイトにアクセスしてくる携帯端末の属性を調査するために必要なデータです。

「効果測定虎の巻」は今回で最終回です。お付き合いいただき、ありがとうございました。

少しでも、この連載がお役に立てれれば幸いです。

次回からは「インターネット広告とテクノロジーの今後」を連載します。お楽しみに。

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