CMSのポテンシャルを引き出す─MODxで作る商用サイト

第26回一年を振り返って ~MODx Revolution~

はじめに

長いようで短かった本連載も今回で最終回を迎えることとなりました。これまでの総括として、改めてMODxの紹介と今後について触れていきたいと思います。

MODxの魅力

ブログ、ニュースサイトを構築するためのCMSはWordPressを筆頭として世の中に数多く存在しますが、なかみつ園のような商用サイトを構築することになった場合、筆者の個人的な前提条件としては次のようなものがありました。

  1. HTMLをガリガリ記述するような時代錯誤のサイトは作りたくなかった。→当然CMSは必須
  2. その中でも、見た目が明らかにニュースサイト、ブログ的になるものは避けたかった(毎日頻繁に更新するサイトではないため⁠⁠。
  3. 初心者にもGUIで直感的な操作が可能。たとえばメニューの並び順をドラッグ&ドロップで入れ替えたり、右クリックから公開、非公開を設定できるなど。

これらの要件に見事にマッチしたのがMODx Revolutionでした[1]⁠。

MODx Evolutionの頃はメニューの並び順をドラッグ&ドロップで変更できない、パッケージの追加が大変面倒、など欠点も多かったのですが、Revolutionではその辺りの使い勝手が劇的に向上しています。

MODxの導入は簡単

……といっても、これは近年の全てのCMSに当てはまるフレーズですね。一昔前のCMSであれば、

  1. PHPやそれ自体の依存ライブラリをビルド、インストール
  2. MySQLデータベースやユーザを作成
  3. コマンドラインからSQLを流しこむ
  4. コマンドラインからCMSの設定ファイルを編集

といった流れを経て、やっとブラウザからCMSへの接続が可能となっていましたが、近年のCMSのほとんどはブラウザ経由でのインストールをサポートしているため、MySQLデータベースとユーザさえ作成しておけば、ブラウザから簡単に初期設定を行うことができます。

ただし、初期設定の容易さは必ずしも商用サイトの作りやすさとは比例しておらず、たとえば初心者がXOOPSを運用するのは大変です。そういう意味では、直感的な操作がしやすいMODx Revolutionは構築時にも運用時にも敷居の低いCMSといっても良いのではないでしょうか。

あらためてMODx Revolutionを試す

本連載の第1回目では、MODxを手軽に体験していただくためのKickstartファイルを用意していましたが、東日本大震災後、配布先のサーバが不定期で停止していたり、連載開始から1年でMODxやCentOSの構成もずいぶんと変わりましたので、今回あらためて、Kickstart(ks)ファイルを用意しました。

MODX Japanのデモサイトではもの足りない方は、VMwareやVirtualBoxなどで仮想マシンをCentOS-6.2-x86_64-netinstall.isoftp://ftp.kddlabs.co.jp/010/Linux/packages/CentOS/6.2/isos/などよりダウンロード)からブートし、コマンドラインパラメータで以下のようにksファイルを指定します。

ks=http://bluecoara.net/modx22_c6.ks
図1 ブート時にksファイルを指定
図1 ブート時にksファイルを指定

回線速度にも依存しますが、フレッツ光のような高速回線であれば約10分ほどでVMが構成され、すぐに

  • http://VMのIPアドレス/setup/

よりMODx Revolutionを試すことができます[2]⁠。

参考までに、執筆時点でのksファイルの中身は次のようになっています。

リスト1 modx22_c6.ksの中身
install 
url --url http://ftp-srv2.kddilabs.jp/Linux/packages/CentOS/6/os/x86_64/ 
lang en_US 
keyboard us 
network --device eth0 --bootproto dhcp 
rootpw Pass1234 
firewall --enabled --port=22:tcp,80:tcp 
authconfig --enableshadow --enablemd5 
selinux --disabled 
timezone --utc Asia/Tokyo 
services --enabled=httpd,mysqld 
reboot 

bootloader --location=mbr --driveorder=sda 
clearpart --initlabel --all --drives=sda 
autopart 

%packages 
@base 
httpd 
mysql-server 
php* 

%post 
echo 'date.timezone = Asia/Tokyo' >> /etc/php.ini 
cd /tmp 
wget https://modx-revo-ja.googlecode.com/files/2.2.0-pl2-ja-p1.zip 
unzip 2.2.0-pl2-ja-p1.zip 
mv 2.2.0-pl2-ja-p1/* /var/www/html/ 
mkdir -p /var/www/html/assets 
mkdir -p /var/www/html/core/components 
chown apache:apache /var/www/html/assets 
chown apache:apache /var/www/html/core/components 
chown apache:apache /var/www/html/core/cache 
chown apache:apache /var/www/html/core/export 
chown -R apache:apache /var/www/html/core/packages 
touch /var/www/html/core/config/config.inc.php 
chown apache:apache /var/www/html/core/config/config.inc.php 

cat > /etc/rc3.d/S99post 

もしこれまで機会のなかった方は、これを機にぜひMODxに触れてみてください。

MODx Revolutionの今後

本原稿執筆時点でのMODxの最新バージョンは2.2.0-pl2ですが、現在Revolution-2.2.1-plの開発が着々と進められており、その開発の様子はMODX Project Trackerなどで伺い知ることができます。現状計画されているロードマップとしては、次表のようなものがあります。

Revolution 2.3パッケージ管理の大幅な改良
パッケージの依存性考慮
Revolution 2.4ユーザごとのパーミッションやACLサポート
ユーザグループの設定(ユーザ設定と似ているが、グループレベルで設定)
管理画面からのMODxの自動アップデート
Revolution 3.0リソース、テンプレート変数、エレメントなどへのバージョンサポート
より柔軟な項目をサポートするコンテントエレメントのサポート
ワークフローのサポート(CMSに必要なのか?)
階層的なエレメントのサポート
ExtJS4マイグレーション

これだけを見ると物足りなさを感じるかもしれませんが、MODxはこれまで細かいバージョンが上がるたびでも大きな進化を遂げてきました。実際に、2.2.1-plがリリースされる頃には、これまでにはサポートされていなかった

  • プロキシ経由でのパッケージダウンロード
  • ログイン時の言語変更
  • 右クリックでプラグインを有効化、無効化

など一般的にはメジャーな変更とも考えられる機能追加が行われる予定です。良い意味では開発が活発、逆の意味では変更が多すぎてバージョンアップ時の運用が大変なのでは?と思えなくもありませんが、とにかく今後のさらなる発展に期待です!

開発やバグフィクスなどにも興味がある方は、ぜひLOGIN to MODXでMODxのアカウントを取得してみてください。これにより、MODX Project Trackerのトラッキングシステムに直接ポストできるようになります。

MODxの情報元

今さらあえて紹介するまでもありませんが、MODxを使っていく上で必須とも言えるサイトを紹介しておきます。

MODX日本公式サイト

URL:http://modx.jp/

MODx Revolution/Evolutionのローカライズ版のダウンロードや日本語フォーラム、セミナーのお知らせなど役に立つ情報が満載です。

MODX Commnity Forums

URL:http://forums.modx.com/

英語&ユーザ登録が必要なので少し敷居が高いかもしれませんが、迅速かつ確実なレスポンスを希望する場合は本家のフォーラムが一番です。

MODx Documentation

URL:http://rtfm.modx.com/display/ADDON/Home

本連載でも幾度となく紹介しているスニペットなど各アドオンのドキュメントです。動作例や開発ロードマップなど含め、いつもお世話になっています。本連載で紹介しきれなかったアドオンも沢山あるので、ざっとページを眺めてみてください。eコマースなど、⁠こんなものまで?」というものが見つかるかもしれません。

さいごに

元々MODxを使って情報を発信していた筆者のサイトも、長い間休止状態のままで、そろそろ復活させなければなあと思いつつも、思うようには時間が取れない今日この頃ですが、長いようで短かった本連載もこれで最後となりました。本連載が少しでもMODxの開発や活動、ユーザの皆さんへの参考になれば幸いです。それでは、次回また別のネタでお会いしましょう。

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