インターネット時代の購買行動とマーケティングのモデルと言われています。
詳しい説明は割愛するとして、ここで取り上げたいのは、「消費者はインターネットで共有するという行動が定着しつつあるので、口コミされるような話題性があって本当に効果のあるサービスを作りましょう」という考え方です。
さて、口コミされるような話題性があって、本当に効果のあるサービスを作れば、ユーザは本当にShare(共有)をしてくれるのでしょうか? ここにひとつの落とし穴があるように思えます。
そもそもCGMは投稿者が集まってから発展するもの、最初からShare(共有)をしたくなるようなコンテンツを用意することは、ほとんどの場合難しいのではないかと思います。また、競合も多く、可処分時間も少ないユーザが自発的にShare(共有)してくれるのを待つだけでは、流行する前に廃れるということも現実問題ありうるはずです。
そこで、意図的に Share(共有)してもらえる仕組みを企画してサービス内に準備しておくのが、成功するCGMのカギだと思うのです。
たとえばRettyではお店の口コミを書いたとき、Retty上に口コミを公開するのと同時に、FacebookやTwitterでも公開することができるようにしています。Facebookなどで美味しい料理や気に入ったお店について、投稿している人を見かける事も多いと思いますが、それをRettyへの口コミと同時に投稿できるようにしているわけです。
FacebookにShare(共有)された投稿にはRettyのリンクが設置してあり、それを見た投稿の素質がある人(投稿者の卵)は、「自分も口コミを書いてみたい」と思い、Rettyをインストールしてくれる、という仕組みです。
同じような仕組みを取り入れているCGMはありますが、あまり上手くいっていない例が多いようです。原因はそもそもShare(共有)をしない情報をShareしてもらう仕組みにあるようです。
たとえば500文字もあるような本格的なお店の口コミや特定の業界についての専門知識などは、そもそもFacebookやTwitterに投稿するのがはばかられるので、いくら仕組みを作ってもShareされにくいのです。
つまり、ユーザが自発的にShareしたくなる仕組みにすることが大事なのです。
Rettyの仕組みが上手く行っている理由としては、サービス開始当初からFacebookやTwitterでシェアしてもらうことを念頭において、口コミの内容を自分の私的な感情や感動を伝えやすい雰囲気にしていたのが理由と考えています。
そもそもShare(共有)を狙わずに、GunosyやSmartNewsのようにTV広告を使って一気にユーザを獲得するほうが効率的ではないか? という意見もあると思います。
これに反論すると、TVのようなマス広告で獲得できるユーザは、多種多様雑多な人種でその中で投稿者となる素質のあるユーザは数が限られています。そのため投稿者に使ってみたいと感じてもらうためとしては、TV広告は効率的ではないと思っています。反対に誰でも投稿者になることのできるサービス(メルカリやanswerなど)は、TV広告のような手法で投稿者を集める事が有効かもしれません。
使ってみたくなる内容
投稿者に使ってみたいと感じてもらうためには、Shareして届けてもらう内容も重要です。当然と言えば当然ですが、見た人が自分も使ってみたい(投稿してみたい)と感じる内容でないといけません。
たとえばあるソーシャルゲームで「○○三国志をはじめよう、いまなら300Gプレゼント!」と言ったShareをさせているのですが、これでは「自分も使ってみたい」と感じませんね。もしこれが「○○三国志で遊びつつ、歴史の勉強もできました」なら、「お、遊びだけじゃなくて勉強にもなるんだな。やってみようか。」となるかもしれません。
Rettyの場合には、Shareするコンテンツは口コミであると同時に、口コミのリンクの先には友達が貯めたお店のリストが見られるため「便利そうだから自分も投稿してみたい」と感じてもらえるように工夫をしています。
成功のカギ2:投稿したくなる仕組み(インセンティブ)
投稿したくなる仕組みには、以下のようにいくつかの種類があります。
PC時代から成功しているCGMの場合、いくつもの種類のインセンティブを用意してアピールすることもできましたが、スマートフォンを中心としたCGMでは画面が限られるため、すべてを詰め込むのが難しくなってきます。
そこで、1つか2つのインセンティブを中心にして、主要な画面に配置してその他は優先度を低くすべきだと思います。
Rettyの場合、中心となるインセンティブは「楽しさ」と「便利さ」の2つにしています。
インセンティブ1:楽しさ
「楽しさ」には、コミュニケーションによる楽しさ、承認されることによる楽しさ、競争することによる楽しさ、ログが溜まることによる楽しさなどがあります。
Rettyではタイムライン画面でユーザどうしのコメントや、「いいね」というシンプルなコミュニケーションが交わされる仕組みを取り入れ、「楽しさ」を演出しています。
また、「いいね」よりも1段階レベルの高い「行きたい」というコミュニケーションを用意することで、コミュニケーションと同時に承認される「楽しさ」にもつながります。
「いいね」や「行きたい」をもらった数は、そのままランキングにも使われ、競争による「楽しさ」の演出にもつながります。
このように、ユーザにとってはシンプルな仕組みでも、たくさんの種類の「楽しさ」を感じるように設計することで、小さなスマートフォンの画面でも投稿を続けたくなる強いインセンティブを生み出すことができると考えています。
インセンティブ2:便利さ
CGMは投稿者の善意よるところが大きいため、どうしても投稿を続けないといけない理由もほとんどありません。そこで、投稿疲れや飽き、という問題が起きるのです。インセンティブ1の「楽しさ」は、どうしても一過性だったり、個人差があったりするので、投稿疲れや飽きに勝つのは難しいです。
そこで重要になってくるのがインセンティブ2の「便利さ」だと考えています。
読者の方もご経験があるかと思いますが、長く使っていた携帯電話やEvernoteなどのツールを、別の携帯電話にしたりツールにしたりするのは、非常に面倒くさいと感じるのではないでしょうか。
Rettyでは投稿がログとして残るため、投稿を続けると過去の「行ったお店リスト」が出来上がります。行って良かったお店を貯めておけば、次回のお店選びに便利に使うことができます。
行ったお店リストは、検索したり地図で見たりと、実際に使う時に便利な機能も併せて提供。実際Rettyの投稿者の多くが、「行ったお店リスト」を投稿を続ける理由と考えていることもアンケートなどからわかっています。
こういった複数の投稿したくなる仕組みを用意することが、ユーザのバイオリズムの変化や多様なユーザの思考に影響されることなく、安定的な投稿を集めることにつながってくるのではないでしょうか。
以上、CGMの成功のカギとして最も重要と考えている2つを説明してきました。
他にも多くのポイントがありますが、これら2つが揃っていることはサービス開始当初からスタートダッシュをするための最低条件ではないかと思います。
画面の小さなスマートフォンのサービスでは、この2つの仕組みを無理なく設計することは非常に難しいことです。
CGMに限らず、成功している他のアプリを研究したり、最先端のサービスを運営する人と意見交換をするなど、最大限の情報収集と試行錯誤をすることが必要と言えるでしょう。