ウェブサイトの成功はいかにユーザーを誘導できるかにかかっている。様々な集客方法からユーザーが求めるコンテンツ、コンバージョンへと誘導することが確実な成果へと繋がる。プロモーション、ブランディング、コーポレート、どのようなサイトを作る際も、ユーザーがどのような理由(目的)でサイトを訪れ、コンテンツを閲覧し、目的のアクションを起こすのかを理解する必要がある。しっかりとした導線を引くためにはユーザーのナビゲーションフローを作成し、正しいサイトの設計を検証する必要がある。
効率的なナビゲーションフロー設計メソッド
より効率的に構築を行い、サイトで必要なナビゲーションフローを見失わないためにも、今回はメソッドに沿ったかたちでの設計方法を紹介する。このメソッドに合わせて設計を行うことでこれまで紹介してきたサイトのプロセスを踏まえた正しいサイトの設計が可能なのだ。
1:エントランス(訪問方法)のリストアップ
ユーザーがサイトを訪れる方法は様々だ。ユーザーが何をクリックしてサイトへ来たか、何を見てURLを入力したか、訪問方法をリストアップすることでユーザーをサイトへ誘導するための全ての入り口を網羅することができる。
訪問方法は大きく分けて二種類あり、「 積極的に情報を求めるアクティブなもの」と、「 能動的にサイトを訪れるパッシヴなもの」に分けることができ、それぞれの訪問方法に合わせたアプローチを行う必要がある。
ウェブサイトへの集客プランで立案した内容を踏まえ、サイトで想定される全ての訪問方法をリストアップし、「 アクティブ」と「パッシヴ」に大別する。
なお今回は、新製品のプロモーションサイトを例題とし、ユーザーナビゲーションフローを組み立てる 。
2:エグジット(達成目的)のリストアップ
エントランス(訪問方法)のリストアップを行い、スタート地点を定めたら、ゴールであるサイトの目的や具体的なコンバージョン目標までの導線を引くために想定できるエグジットを全てリストアップする。
サイトの目的はウェブ上で完結しない可能性もあるため(店舗誘導など) 、目的達成に必要なコンバージョン方法をあらかじめ想定しておく必要がある(店舗誘導の場合はケータイクーポンの配布など) 。
3:ユーザーニーズ、イントレストのリストアップ
アクティブユーザーがサイトを訪れる際は具体的な問題解決を求めている。サイトコンテンツがユーザーに対して納得や満足感を与えるためには訪れたページ上でそれらのニーズ(問題)に対するソリューション(解決方法)を提供する必要がある。
また、能動的にウェブサイトへ訪れたパッシヴユーザーは明確な問題点や目的を抱えていないため、訪問後に何らかの興味を刺激するコンテンツが必要である。
すべてのユーザーをエントランスからコンテンツへと誘導するために、ユーザーが持つニーズ、ユーザーが持てるイントレストを全てリストアップする[1] 。
4:サイトコンテンツのリストアップ
サイトの"エントランス"、"エグジット"、"ユーザーニーズとイントレスト"が定まれば、ウェブサイトに必要な流れが見えてくるはずだ。ユーザーのニーズに応えるコンテンツや、パッシブユーザーに興味を持たせ、コンバージョンへと誘導できるコンテンツを企画し、リストアップすることでユーザーを誘導できるサイト設計が見えてくる。
5:ニーズによるコンテンツフローの作成
コンテンツのリストアップができたら、エントランス(訪問方法)ごとに想定されるニーズを設定し、それを満たすコンテンツとの間をつなぐ事でサイト上に必要なユーザーナビゲーションフローの全体図を作成することができる。
6:個別のニーズ、イントレストを分別
全体像が作成できたら、そこから各ユーザーニーズとイントレストを分けた図に直す。例として製品情報を知りたいユーザーにフォーカスすると下記のような図となる。
このチャートに表示されているユーザーの流れは5×4。製品情報を求めるユーザーには20の導線が存在することがわかる。それらの導線を一つずつ個別のチャートにする。
このように「製品情報」というひとつのコンテンツをとってみても、想定されるユーザーフローは20存在することが想定される。そのため制作を行う際にこれらのユーザーフローをしっかりと意識しなければならない。
7:コンテンツ間の誘導:導線の強化(インセンティブ) 弱化(ハードル)
効果的なユーザーナビゲーションフローは、ただ想定されるすべてのフローを確立するだけでは実現することはできない。
そこで目標とするエグジットは「量」なのか、「 質」なのかを明確にしなければならない。
例えば、出来るだけ多くの会員登録を取得したい場合はその導線上にプレゼントキャンペーンなどのインセンティブを配置する。また、モティベーションの高いユーザーだけに絞り込みたい場合はインセンティブを低くし、個人情報取得や、アンケートなどのハードルを用意する。
個別のユーザーナビゲーションフローをチャート化した後、その流れを確立するために必要な対策やコンテンツをリストアップし、チャートへ書き込む。また、ユーザーを増やしたい導線、絞りたい導線を明確化する。例として、資料請求や問合せに対しては購買意欲の強いユーザーを絞り込むためにインセンティブの用意はせず、アンケートに答えることを義務付ける。ブログ記事の作成や店舗、ECサイトへの誘導は出来るだけ総数を増やしたいため、プレゼントや割引キャンペーンなどのインセンティブを提示する。
この分析を行う事により、ユーザーがコンテンツに辿り着きやすくなり、コンバージョンへと効果的に誘導されることとなる。例となっている製品情報を求めるユーザーナビゲーションフローを確立するためには以下の対策が必要だという事がわかる。
この作業を全てのユーザーニーズ、イントレストに対し行い、効果的なサイト設計に必要な対策やコンテンツ、コンテンツの連動を洗い出す。これらの分析を行う事により正しいユーザー導線を確立するために必要なコンテンツや対策の情報が整う。ユーザーを正しいエグジットへ誘導するだけでなく、ユーザー個別の状況に応えることにより、サイトを訪れたユーザーへサティスファクション(満足感)を与えることができる。ユーザー視点から価値あるサイトを作ることができるのだ。
次回はこれらの情報を基にしたサイトマップの作成方法について考えてみる。
サイクルとリピート
後に詳しく説明するが、設計に入る前に一点考えておきたいのがサイクルとリピート。ブログやTell Your Friendを活用することによりユーザーが新たなユーザーを呼び込むサイクルを生み出す事が可能となる。ユーザーにブログ記事やメールメッセージを生成させ、他のユーザーをサイトへ呼び込む。また、当たり前の事だが、ユーザーの個人情報を取得する際に必ずリピートプロモーションをかけられるようにしておく。更に、これらの導線にインセンティブを配置することによりそのサイクル率やリピート率を大きく引き上げることができる。