ユーザーニーズとコンテンツネーミング
これまでのウェブサイトの構築プロセスは製品やサービスの情報を求めるユーザーに対するソリューション提供を行う事を目的として紹介してきた。これらのニーズを持ったターゲットユーザーを検索やトップページなどから的確に導くために必要となるのがニーズに応えるコンテンツのプランニングとネーミングである。
通常、コンテンツ制作はコピーライティングの技術や、扱う製品、サービスの専門知識が必要となるため、ウェブ制作業務としては敬遠されがちだが、細かいコンテンツ内容のディレクションはウェブサイトの成功には大変重要な要素である。
- "コンテンツタイトルがユーザーニーズに応えるキーワードを含まなければ、すべてのユーザーをコンテンツへ導くことは難しい。"
- "コンテンツタイトルが製品、サービスが持つ独自性を伝えていなければ、ユーザーへのアピールができない。"
ウェブ制作においてディレクション業務の大半はサイト全体のプラットフォームやトップページ、スペシャルコンテンツなどに費やされるが、サイト内のコンテンツ内容とそのネーミングこそ、最もディレクションを必要とする部分である。
コンテンツのマッピング
ユーザーは特定の情報を求めてウェブサイトを訪れるため、コンテンツの構成はユーザーの目的別に用意しなければならない。まず、コンテンツの制作段階においてユーザーニーズからコンテンツをディレクションすることで、コンテンツとニーズのマッチングを最適化することができる。
例として某コスメブランドのマスカララインアップは「カール、ボリューム、ロング、下地、リムーバー」というカテゴリーで紹介されている。
しかしユーザーが検索しているキーワードからニーズを見ると以下の内容と順番になる。
ニーズを見ることで既存のカテゴリーには「人気」と「落ちない・ウォータープルーフ」のカテゴリーが必要である事がわかる。また、検索数が少ない「ロング」などのキーワードに応えるコンテンツに対しては、トップページからの紹介など、よりパッシブな導線が必要であり、このブランドのマスカラ製品情報は以下の詳細コンテンツをページ別に作成する必要があることがわかる。
ランディングを達成させるコンテンツネーミング
コンテンツのマッピングだけでなく、ニーズを持ったターゲットユーザーをページへとランディング(※検索を通じたページへの到達)させるために必要となるのが検索ニーズに応えるコンテンツネーミングである。
上記の「マスカラ製品情報」を例に取ると、「人気マスカラ」というキーワードと共に「マスカラランキング」という検索のボリュームが多いため、このコンテンツ名称、タイトルを「人気マスカラランキング」とする事でより多くのランディングを達成することができる。
- 最新!人気マスカラランキング | マスカラマガジン | メイベリン ニューヨーク
- http://www.mascaramagazine.com/vol_02/ranking/
さらにタグ・ホイヤーの場合、様々なアフターケアを行うサービスは「アフターセールスサービス」という総称であるが、検索されるニーズは「修理」と「メンテナンス」のみであり、「時計」というキーワードも「修理」と共に検索されている。
以上のことから、「アフターセールスサービス」だけでは検索にヒットせず、具体的なサービス内容も伝わらないため、ユーザーのランディングを達成させるためにはユーザーが求めるキーワードを含めたタイトルが必要となる。
- タグ・ホイヤー 時計の修理・メンテナンスについて | アフターセールスサービス | タグ・ホイヤー Webマガジン
- http://www.tagheuer.co.jp/after_service/
検索されたキーワードに対し、検索結果として表示されるタイトルでコンテンツ内にユーザーが求めている情報が含まれている事を伝えることが重要であり、検索結果で上位に表示されるだけでなく求められる情報の存在が伝わらなければユーザーはページへたどり着かない。
製品・サービスのユニークネス(独自性)を伝えるコンテンツネーミング
どのような製品・サービスも何らかの特徴を持っている。その特徴を強調し、伝えることでユーザーにユニークネス(独自性)をアピールすることができる。ユニークではない製品やサービスはユーザーの興味を引くことができない。製品やサービスの情報コンテンツをユーザーに見てもらうためには「何に特化した」ものであるかを明確に伝えるができるかがポイントとなる。「製品情報」や「サービス内容」といったコンテンツのネーミングを行う際はできるだけ製品やサービスのユニークネスを明確に表記したタイトルを採用しよう。
コンテンツの訴求
ウェブサイトのコンテンツは主にユーザーに向けた企業からのメッセージである(通常これらはユーザーのニーズとは何の関係も無い)。そのメッセージとユーザーが求める情報をライティングやコンテンツ構成を通じていかにマッチングできるかがコンテンツディレクションのポイントである。
コンテンツネーミングを通じてユーザーをページにランディングさせ、コンテンツを閲覧させる際、最も重要な事はユーザーに求める情報の存在を提示する事である。
ページ内に目的のコンテンツが存在しないと認識したユーザーがページを離脱する時間はせいぜい3秒程度だ。それ以上ユーザーを滞在させるためには、この最初の3秒の間にページ内に求めている情報が存在するということを理解させる必要がある。最も効果的な方法がコンテンツの最初にユーザーのニーズを復唱することである。ユーザーは自分が抱えている問題(ニーズ)がページ上に表記されている事で、即座にその答えがコンテンツ内に含まれると認識する。
ユーザーのニーズを表記した後、コンテンツ内にニーズに対する解決方法を製品やサービスの直接的な紹介でなく、製品特徴の説明を通じて行う。抱えている問題を解決するためにはどのような特徴を持った製品やサービスが最も適しているかをユーザーに認識させることが必要である。
最後に解決を行う事ができる「ソリューション」として製品やサービスを紹介することにより、企業が伝えるべきメッセージがユーザーの求めていた情報となる。
マスカラを例とすると、「落ちないマスカラ」という検索ボリュームの多いニーズが存在する。この検索からユーザーがランディングしたページは最初に「落ちないマスカラはどれ?」というような質問が表記されていて、その後に「ウォータープルーフのマスカラは落ちない」という製品特徴を伝えるコンテンツを表記し、最後に具体的な製品を紹介することで、ユーザーニーズにマッチした特長を持つ製品であることをアピールする。
また、「落ちないマスカラ」というニーズにおいてナンバーワンの製品であるという事を表記することでユーザーにより優れた製品であるということをアピールできる。可能な場合、比較対象を用意することも重要である。
このように、"ものを伝える上で文章は非常に重要な要素"であり、ユーザーを的確にコンテンツへと導くためには、コンテンツのプランニング、ネーミング、コンテンツの訴求方法など、しっかりとディレクションを行う必要がある。