WEB DESIGN WORKSHOP「正しいウェブデザイン」

第10回User Exit Care「ユーザー離脱のケア」

これまでWEB DESIGN WORKSHOPでは主にユーザーの「到達」に重点を置いて説明をしてきた。今回はユーザーの到達後に必ず発生する「離脱」とそのケアの重要性について説明する。

ユーザーがウェブサイトを離脱する理由は様々あり、ユーザーにとってはとても簡単な行為である。各ステップでありうる「離脱」のケアを行うには、ユーザーの到達から目的のアクションまでの行動を詳細に理解することが必要だ。

ユーザー行動を理解する

ユーザー行動のフローチャート

今回は到達から目的のアクションまでの間(確認、比較、協議)に注目する。

ユーザー行動のフローチャート
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ユーザーのランディングに対する対策を十分に行っていれば、ユーザーは問題無くウェブサイトへ到達する。到達後、ユーザーは確認、比較、協議といったアクションのためにサイトを離脱する可能性がある。さらに目的を達成した後も必ず離脱が行われる。

確認

最も基本的なユーザー離脱は「確認」アクションである。⁠自分が求めている情報はページ内に含まれていない」と認識したとき、ユーザーはウェブサイトを離脱する。様々な事前情報や複数の入口をもつユーザーに対し、いかに「確認」を行わせ、次のアクションへと誘導するかは、その後のすべてのコンバージョン率に影響を及ぼす、大変重要な対策である。

ランディングページの構成

検索エンジンから特定のキーワードでランディングを行ったユーザーのニーズは明確である。これらのユーザーにはランディングした先で検索したニーズに対する答えを明確に表示する必要がある。効果的な施策としてはキーワードからユーザーが抱えている「問題」を予測し「見出し」として表記する。そしてその見出しに対する答えを「小見出し」として表示することで、ユーザーに対して短時間で求める情報があることを認識させ、不要な離脱を防止する。

例えば「効果的 WEB プロモーション」と検索するユーザーには「効果的なWebプロモーションとは?」と題したページで「効果的なウェブプロモーションとは、ターゲットに合ったメディアプランニングとインセンティブ提供を通じ、多くの有効ユーザーを効率的に獲得する事」とでも表示すべきだろう。

トップページの構成

トップページはもっともパッシブな導線であり、ユーザーの到達目的が不明であるため、ニーズの高い順から誘導していく事が好ましい。サイト内で誘導したい順に加え、ニーズ(検索ボリューム)の大きい順でヒエラルキーを構成する。

比較

ランディングから具体的な情報へと誘導されたユーザーはその情報の比較を行う。その製品・サービスが最も優れている、またはニーズにマッチしているものかという事はユーザーに購買意識を持たせる際に不可欠な情報である。この「比較」を行うためにユーザーはウェブサイトを離脱する。しかし、比較を行うための情報を提供する事でユーザーの離脱を防ぎ、離脱したユーザーが再度ウェブサイトへアクセスする事を促すことができる。

比較データの表記
多くの場合「他の製品・サービスより優れている」という謳い文句はユーザーに響かない。優れているかどうかは主観であり、ユーザーにとって何故優れているかという情報(比較データ)の方が遙かに価値のある検討材料である。もし提供する製品やサービスが数値的に他製品と大きく違う点があれば、積極的に表記するべきであろう。
USP(Unique Selling Proposition)の明記
製品やサービスの購買に対する判断材料として「コスト」の次に大きいのが「特性」である。製品やサービスが持つ「独自性」を明確にし、他製品・サービスとの差別化を行う事でユーザーに付加価値を大きくアピールする事が出来る。⁠優れている点」だけでなく「違う点」を明記しなければ、比較を行うユーザーに対し利点を伝える事は出来ない。

USPを見出すためには以下の点を考えてみよう。

  1. 提供する製品・サービスが競合と違う点、製造工程、フロー
  2. 提供する製品・サービスには可能で競合には提供できないもの
  3. 提供する製品・サービスが高価/安価である理由
  4. ユーザー(クライアント・顧客)のメリットになること
  5. ユーザー(クライアント・顧客)に褒められる点
  6. ユーザー(クライアント・顧客)が他者に製品・サービスを勧める理由

協議

コンバージョンのアクションに対する経済的なリスクが大きい(製品が高額である)ほど、ユーザーが自分の判断だけで購買アクション(購入、問い合わせ)を行わなくなる。法人サービスであれば上司の決済・承認が必要となり、ラグジュアリー製品であれば配偶者の許可などが必要となる。また許可、承認が必要で無い場合もアクションを行う際に他人に意見を求める事は多い。この「協議」を行うためにユーザーはウェブサイトを離脱する。

例としてFICCのサイトのユーザー行動履歴を見てみよう。多くの場合、コンタクトを行うユーザーは事前にコンテンツを見ることなく、コンタクトフォームへ直接アクセスする傾向がある。これはコンテンツを見ていないのではなく、コンタクトの前に「協議」を行うための「離脱」を行っているのだ。

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この協議が行われなければ購買アクションへの誘導はできない。ユーザーが離脱している間に決済者と協議を行いやすくするためのツール提供も重要な「ユーザー離脱のケア」である。

協議を行わせるためのツール
比較を行うための情報コンテンツを決済者に見せるためのツールを提供することで、ユーザーが離脱中の協議を行いやすくすることができる。
(例⁠
  • ページのメール送信
  • ページのプリントアウト
  • PDF版のダウンロード

上記のツールをサイト内でボタンとして提供することにより、決裁権の無いユーザーに、より安易に「協議」を行わせることができる。

リアルとの連動

目的のアクションがウェブ上ではなく店頭などのリアルな現場で行われる場合は、その場所への誘導を促すモバイル転送やプリントアウト等のツールの提供が必要となる。パソコンから離れた場所への誘導・コンバージョンは最も難しいため、ある程度のインセンティブの提供も必要だ。割引や、プレゼント等のクーポンを提供することにより、ユーザーの誘導を行う。

モバイルに情報を送信する事は情報を「携帯」するということだけではなく、リマインダーとしても機能する。QRコードやモバイル用URLを用意する際は必ずURLをメールで送信するフォームも用意するべきだ。

更なるユーザーの誘導

パッシブなユーザーを誘導するためにはサイト到達時にインセンティブを提示する必要がある。ユーザーにとって「何かが貰える」など、明確なメリットが確認できればパッシブなユーザーの離脱すら防げるのだ。また、キャンペーン等に応募した後、通常は確認ページからトップに戻るなどという措置が取られるが、これはあまりにももったいない。インセンティブに食いついたパッシブユーザーこそ、次へ誘導するべきである。

インセンティブの提示
もしサイト内にインセンティブとなるようなコンテンツがあれば、ユーザーが見やすい場所に配置するべきだろう。全ページ共通のナビゲーション内に注意を引くようなバナーを設置するなどして、パッシブなユーザーの注意を引きつけて誘導する。
応募、登録後ユーザーの誘導
インセンティブに対して個人情報を提供したユーザーは大体の場合「応募完了ページ」のような場所からトップに戻される。しかし、個人情報入力というハードルを越え、歩み寄ってくれたユーザーを再度パッシブな導線に戻すことはない。比較的低いインセンティブとなる「インタラクティブ・コンテンツ」「ダウンロード・コンテンツ」へと誘導し、製品やサービスとの接触回数を増やすのだ。また、それらのコンテンツからインセンティブの無い「製品・サービス情報コンテンツ」へと誘導する事は言うまでもない。

ユーザーの到達から離脱のケアまでを行えば、ウェブサイトは目的のアクションを達成する事ができる。次回は達成率の検証と効果測定について説明する。

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