ウェブサイトやWEBプロモーションの大きな利点は獲得した顧客情報のセグメンテーションにある。消費者との関係を築き、マーケティング戦略を立案する上で、個別の消費者の特徴を知ることは不可欠だ。さまざまなエントランスからサイトを訪れる不特定多数のユーザーをダイレクトなマーケティング活動につなげるために、ユーザーのセグメンテーションを意識したプランニングが必要だ。
セグメンテーションを行い、マーケティング活動に有効なユーザーを抽出するためにはインセンティブを通じた登録を行う。登録の際に取得する情報によりユーザーを分類・抽出するだけでなく、集客の段階で欲しいユーザー層のターゲティングを行っておくべきだ。
プロフィール、個人情報によるセグメンテーション
まず、基準となるのがそのユーザーのアイデンティティである。年齢、性別、居住地、職業、家族構成などの情報をベースにそのユーザーがターゲットの購買層にマッチするかを知ることができる。また、どういったユーザーが提供するサービスや製品に対して積極性を持っているかということもわかる。しかしこのようなプロフィールデータはアクティブなインターネットユーザーに偏っている事をあらかじめ想定しておくべきである。取得する項目は必ず何らかの調査やコンタクトのアクションにつながるものを選ぼう。無駄なデータの取得はユーザーの参加に対するハードルや不正確なデータ取得につながりかねない。
個人情報の取得に際しても必要最低限のものを取得しよう。後にユーザーにコンタクトを取る際に必要がある項目のみ取得するべきだ。また、後に特定のフォーマットにデータを合わせる事を想定し、名前や住所などは分けた形で取得しよう。
例:プロフィール・個人情報
項目 | 項目形式 | 文字制限 | 内容 | 必須項目 |
お名前 | テキストフォールド×2 | 全角 | 姓/名 | ○ |
ふりがな | テキストフォールド×2 | カタカナ/ひらがな | 姓/名 | ○ |
年齢 | プルダウン | - | 5年インターバル | ○ |
性別 | ラジオボタン | - | ・女 ・男 | ○ |
郵便番号 | テキストフォールド×2 | 半角数字 | 郵便番号 | ○ |
都道府県 | プルダウン | - | 各都道府県名 | ○ |
市区町村・町名 | テキストフォールド | 全角 | 市区町村・町名 | ○ |
丁目・番地 | テキストフォールド | 全角 | 丁目・番地 | ○ |
建物名および部屋番号 | テキストフォールド | 全角 | 建物名および部屋番号 | - |
お届け先電話番号 | テキストフォールド×3 | 半角数字 | お届け先電話番号 | ○ |
同居家族について | チェックボックス(複数回答可) | - | 一人暮らし(単身赴任も含む)/配偶者/子供/親(義父母も含む) | ○ |
お子様の年齢 | テキストフィールド×5 | 半角数字 | お子様の年齢 | - |
自己申告によるロイヤルティ測定や意識調査の不正確さ
ユーザーを購入に関するロイヤルティや製品・サービスに対する意識によってセグメントする場合、購入履歴を参照するか、自己申告をしてもらう必要がある。(後に述べるターゲティングとフィルタリングという方法もある)自己申告のアンケートから情報を取得する際はその「不正確さ」を考慮するべきだ。
アンケートに対し、ユーザーは正しい答えを提供する義務はなく、多くの場合そのモティベーションすら無い。答える面倒臭さに加え、インセンティブを提供して行うアンケートに対しては当選に対する意識も回答内容を左右させかねない。回答の不正確さはこういったアンケートだけでなく、プロフィール等にも発生する。生まれ年や居住地が長いプルダウンからの選択である場合、ユーザーが正しい答えを選択してくれる可能性は落ちる。データの取得項目の設定はもちろんだが、その回答方法も可能な限りユーザーが答えやすいように設定するべきだ。
意識調査のアンケートに対しもうひとつ気をつけるべき点は競合他社の存在である。ウェブ上で特定の製品特長などへの関心をユーザーに問うことで販売戦略上重視されているポイントを明らかにしないよう注意しよう。
取得項目例:
- 製品、競合製品の購入・消費頻度
- 製品カテゴリー購入理由
- 製品、競合製品選択理由・基準
- 関心・意識の高い関連トピック、度合い
WEBアクティビティ、CGMアクティブユーザーのセグメンテーション
WEB上でのマーケティング活動で最も重要なセグメンテーションはユーザーのアクティビティである。プロモーションの費用対効果を向上させ、ユーザーとの接触回数を高めるためにはWEB上での活動が活発なユーザーに対し、マーケティング活動を集中する必要がある。現代の日本の消費者の多くはアクティブにCGMを活用し、情報収集だけでなく、発信も行っている。WEBプロモーションの成功はCGMアクティブユーザーの確保にかかっていると言っても過言ではない。まだ一般的ではないが、ユーザーのセグメンテーションの際に「ブログURL」を取得する企業が増えている。すでに多くの登録者を抱えているデータベースは一度CGMの利用に対するアンケートを実施して、アクティブユーザーをフィルタリングするべきだ。提供するサービスや製品にも左右されるが、ユーザーからは以下の項目は取得しておきたい。
取得項目例:
- SNSの利用について
- 参加しているSNS
- SNSの利用頻度
- コミュニティー参加
- コスメについての言及率
- ケータイ、PCでの利用の割合
- ブログの利用について
- ブログを読む頻度
- ブログを公開しているか
- ブログの執筆頻度
- コスメについての言及率
- 利用しているブログサービス
- 参加しているブログ広告、アフィリエイトネットワーク
- ケータイ、PCでの利用の割合
- 口コミサイト(ソーシャルメディア)について
- 訪問頻度
- 書き込み頻度
- 購買動機としての有効性
- ケータイ、PCでの利用の割合
加えて、プレゼントキャンペーン等のWEBプロモーションへの参加頻度、メルマガの利用、ECの利用、リアルな口コミの体験なども状況に合わせて取得しても良い。
インセンティブ活用によるセグメンテーション
セグメンテーションを行うためにはユーザーに情報を提供してもらわなければいけない。そのためにはなんらかのインセンティブ提供が必要であり、そのインセンティブの内容によっても効果は変わってくる。高額で多くの人に魅力的な賞品や大量当選を提供すれば強い集客力を発揮する。しかし、同時に懸賞目的のユーザーの流入が多く発生し、有効ユーザーの獲得率は落ちる。
特定のユーザー層にしかメリットの無い賞品を提供することによりターゲティングが行えるのだ。
また、製品やサービスに関連する低いインセンティブの賞品を提供すればある程度購買が見込めるユーザーに限定した流入が期待できる。
最終的に獲得したいユーザー層に合わせてインセンティブを設定しよう
インセンティブの設定によるセグメンテーション
獲得したいユーザー層のターゲティングは「流入経路である検索結果」や「広告媒体の選択」、そして、「インセンティブの設定」などで行うことができる。購買に対するモティベーションが高いユーザーだけを集めるためには登録までの導線上でフィルタリングを行う。例えば、インセンティブの提供をサイトのトップページで行えばサイトに訪れたユーザー全員にアピールすることができるが、情報コンテンツの最下部に設置すればそのコンテンツを閲覧したユーザーだけを集めることになる。また登録プロセスにおける長いアンケートやフリーワードの入力、コンテンツ閲覧を必須とするアンケート内容などのハードルを加えることでモティベーションの低いユーザーを除外することができる。
ダイレクトアプローチのためのパーミッション取得
ユーザーをセグメントすることにより、さまざまなダイレクトマーケティングが可能となる。ダイレクトメールはもちろん、特定のユーザーに対するアンケート、CGMアクティブユーザーに対するサンプリング、イベント招待、ブロガーに対する記事ネタの提供等、可能なアプローチの方法は様々だ。これらのアプローチを行う前に必ずユーザーからのパーミッションは取っておきたい。企業側のマーケティングに参加してもらい、広告を迷惑と思わせないためには登録時にあらかじめ許可を取っておく必要がある。
ユーザーのセグメンテーションによりプロモーションの可能性は広がり、マーケティング活動の費用対効果は向上する。製品やサービスの販売目的のウェブサイトの制作や運用を行う場合は早い段階で対応するべきである。
次回はキャンペーンプランニングとWEB広告媒体の活用を説明する。