本授業のキーワードは「組み合わせ」です。「デザイナーには言葉の理解力と編集力、構成力が必須。その上で、さまざまなアイデアや要素を『組み合わせ』て表現できなければなりません」という林先生。優れた例として「オンラインショップ×行列」でバーチャルとリアルを融合させた「ユニクロ・ラッキーライン」などが挙げられましたが、確かにヒットコンテンツも分解すると身近な要素からできています。
「世の中にゼロから作られるモノはほぼない、アイデアとは既存の要素の組み合わせ。だからこそ大切なのは、面白い素材を取捨選択し再構築する力をつけること」という先生。
組み合わせから生まれるデザイン
毎年誕生する新しい技術やプラットフォームに対応するWebデザイナーに必要な、表現力や思考性について考える授業です。「PAMiっていいとも!~面白法人のデザインアワー~」というタイトルが付けられていたように、「ユーザとクライアント、エンジニアの間に立ち、アイデアをどう翻訳し、適切なPAMi(PC、Android、Mobile、iPhone&iPad)をチョイスして提案し、完成していくべきか。また、この中でニーズはどうすれば反映させられるか」―この問いについて、「YUREX」プロジェクトなどを例に解説が行われました。
素材の集め方を身につける
また、「素材の集め方」では、貧乏揺すりがテーマの商品サイト「YUREX」を例に、コンセプトがどのような思考の変遷を経てユーザに届けられたかが解説されました。スタートは「貧乏ゆすりは悩む時に出るから、実はクリエイティブな行為」という思考。それをベースに ①ネガティブなものをポジティブに変換する、②「貧乏」な印象だが商品は高級、③ムダな動きだが有用性がある、など真逆な要素を組み合わせ、デザインを考えていったそうです。その結果、高級感溢れる雰囲気のデザインに「ブラクラ(ブラウザクラッシュ)」の動きを取り入れ、「ブラウザ×貧乏揺すり」のギミック実現に至ったという林先生。「いかにユーザに体感してもらって商品とのつながりを作るページにするか」を考える上で、コンセプトを重視しながら発想の転換も組み合わせることの重要性が非常によくわかる例でした。
また、素材の取捨選択力を養う方法を、次のように解説しました。
- 「とにかくやってみる」
普段から素材に触れ、①言葉でまとめる、②アプリなどの形にする、など自分なりの消化をして形にしてみると、考え方もより深くなり新たな展開が考えられるそう。
- 「各種プラットフォームを知る」
表現の幅を広げる上では「新しいモノを知り、素早く自分のものにする」ことも重要。自分のアイデアにはどれが適していて何ができるのかや、適正なUIを考えるには「PAMi(PC、Android、Mobile、iPhone&iPad)」の各特性を知っておくべきです。ポイントは①ユーザの活用シーン、②ハードのスペック、③アプリ・サイト運用の期間(一発もの? 長期展開?)の3点。
- 「素通りしない」
ある要素の常識を考え直すことが、型にはまらないアイデアを考える上では重要。コンセプトを表現するために最適な手法は何か? 本当にここにあるのが適正なのか? この形でよいのか? と常に問いかける。
質疑応答での「エンジニアとの意思疎通をうまく行うには?」という質問に、「相手のわかる言語で話すこと」と回答した林先生。同じチームで1つのものに取り組んでいるという気持ちを大事にすること、意識を共有できるよう言語の素地作りに努力すること、などの大切さを語りました。「デバイスが広がる今後は、グラフィック以外にも幅広い表現が提案できるようになるべき。技術の変化に対応し、観察し、考え、組み合わせてものづくりをすることを意識すれば、面白いものが生まれるはず」とのまとめで授業は終了。Webデザイナーのアイデアの考え方に留まらない、未来を見据えた内容となりました。