「今年のゴールデンウィークは、どう過ごそうかな」と、さまざまな妄想が頭の中に渦巻きつつある今日このごろ、いかがお過ごしでしょうか。
今回も個人的に感じた素晴らしいサイトの特徴を、いくつかお話したいと思います。
奥へと無限に続く、現代の絵巻物
ユニクロの2009年UT春夏コレクションのキャンペーンサイト、『UT ZOOM !』です。
「ZOOM」では、ユニクロのTシャツを着たモデルの画像や映像が、画面の奥から手前へと拡大されながら再生されていきます。マウスホイールや画面右側のスクロールバーを利用すると、再生の向きやスピードを操作することもできます。
小さな工夫の積み重ね
マンデルブロ集合のフラクタル動画(例:Fractal Zoom Mandelbrot Corner)を思わせるような、画面手前への拡大再生が印象的なこのサイトですが、やはりキャンペーンサイトということで、UTのTシャツをユーザーにできるだけ多く見てもらおうとする工夫が見えてきます。
商品を着用したモデルの体のすき間から、次の商品をちらりちらりと見せることで、次の画像をのぞいてみたくなる演出を行っていること、拡大再生時にAUTOを選択していた場合でも、マウスホイールを触るとすぐにマニュアル操作へと切り替わること、マウスホイールやスクロールバーで再生スピードを意識的に操作できることで、ユーザーがウェブサイトに滞在する時間を延ばしていることなど、さりげないながらも多くの工夫を積み重ねています。
派手で革新的な技術ではなく、小さな工夫を丁寧に組み合わせて最大の効果を生み出すことで、ウェブサイトの目的を実現しているウェブサイトの良い見本だと思います。
プロモーションにおけるAR技術
2009年のデトロイトモーターショーで発表された、BMWの乗用車Z4 Roadsterのプロモーションサイト、『BMW UK : The new Z4 Roadster』です。
プロモーションの流れは、まずアーティストのRobin RhodeによるZ4 Roadsterを使ったペイントパフォーマンスをフィーチャーしたCMから、Z4 Roadsterのプロモーションサイトへとユーザーを誘導することから始まります。
プロモーションサイトにアクセスしたユーザーが、ダウンロードしたアプリケーション(現在Windows版のみ。Macintosh版は近日追加とのこと)上で、ウェブカメラを使ってマーカーを認識させると、画面上にZ4 Roadsterの3Dモデルが出現します。
画面上で3Dモデルをカーソルキーで操作すると、車輪の軌跡がペイントされていくという仕組みになっており、制作した作品はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のFacebookに投稿することも可能です。
幅を広げたAR技術の使い方
今年になって、さまざまな企業が本格的にプロモーションに採用しつつあるAR(Augmented Reality/拡張現実)技術ですが、今回のBMWのプロモーションでは、CMなどのメディアと連動して、非常に効果的に使用されています。
さらに、今まで多くのウェブサイトで見られた"3Dモデルを表示する"という段階から、"3Dモデルを表示し、それが操作できる"段階へと、AR技術の使い方の幅を広げています。
今後、ますます増えると思われるAR技術を使った企業のプロモーションの中で、どのようにAR技術が組み込まれていくか、そしてどんな使い方がされていくのか、興味を持って見ていきたいところです。
伝えたいことをしっかり伝える
SD14、DP1に続き、株式会社シグマが発売した1,400万画素ダイレクトイメージセンサー「FOVEON
X3」搭載のデジタルカメラ、SIGMA DP2のスペシャルサイトです。
エリック・サティの代表曲「ジムノペディ」と美しい写真、そして、写真を撮る人の内面に問い掛けるメッセージを含んだオープニングが、とても良い雰囲気を演出しています。
サイト内のコンテンツも、開発コンセプトや搭載される標準域単焦点レンズなど、SIGMA DP2の持つさまざまな特長をじっくりと読ませる、非常に内容の濃いものとなっています。
"ストレスがない"ということ
大掛かりなモーションやトランジション(画面の切り替え効果)、回転する3Dモデルなどの派手なFlashの演出などは、このウェブサイトにはありません。にもかかわらず、コンテンツの内容を読んでいくうちに、写真を撮るという行為への欲求と製品に対する興味をじわじわと増幅させてくれます。
このウェブサイトでは、ユーザーに製品を「欲しい」と思ってもらうため、まず伝えたい情報をきちんと伝えることを考え、そして、その実現のために使う技術は何かをしっかりと吟味した上で、過不足のない技術を使ってウェブサイト全体が構築されています。そのため、"不必要なものに気を使う"というストレスが無くなり、自然にユーザーがコンテンツの内容に引き込まれていく仕組みになっています。
さりげなく伝えたい情報にユーザーを集中させることで、興味を抱かせて購入ヘとつなげる。まさに"スペシャル"と言うべきこのウェブサイトの仕組みから、学ぶものは非常に大きく、そして重要だと思います。
というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。