肌にまとわりつくような湿気にイライラしつつも、次第に南から「梅雨明け」のニュースも飛び込んでくる今日このごろ、いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた素晴らしいサイトの特徴を、いくつかお話したいと思います。
あくまで"直球で勝負"
ドイツの化粧品メーカーWella(ウエラ)の女性用ヘアスタイリングスプレー「Wella flex」のプロモーションサイト、『Test Wellaflex』です。
『Test Wellaflex』ということで、地下鉄、海辺、町の3か所に5人の女性が登場し、そのうちの一人だけがWella flexを髪に使用します。
ユーザーは画面からの合図に合わせて、マイクから音声を入力します。すると、画面の中に建物も吹き飛ぶような強い風が起こり始めます。
強く吹いていた風が止むと、髪にWella flexを使用した女性だけが、髪型をしっかりキープ。そのほかの女性たちは、髪型が崩れてとんでもないことに…非常に単純ですが、それだけに商品の特長をとてもわかりやすく表現できています。
"余計なもの"をそぎ落とす
この『Test Wellaflex』では、商品の特長の一点(髪型をしっかりキープすること)をユーザーに明確に伝える企画によって、単純明快で誰にでも楽しめるコンテンツを作り上げることに成功しています。
近年、ウェブサイトを使った企業のキャンペーンやプロモーションが一般的になっているということで、最近ではかなり複雑、かつ、ひねりの加えられた企画で特徴を出そうとするウェブサイトも多く見受けられます。
しかし、そのために伝えたい内容が分かりにくくなってしまい、訪れたユーザーに伝えたいことが明確にならないまま、知られることなく静かに終わってしまうキャンペーンやプロモーションのウェブサイトも少なくありません。
"伝えたいことを明確にする"という目的が、逆に"伝えたいことがわかりにくくなる"という企画では本末転倒と言えるでしょう。本当にそこまで複雑にする必要があるのかどうか。今一度、ウェブサイトを制作するにあたって、じっくりと考えて欲しいと思います。
サービス満載のポートフォリオ
約2年半ぶりにリニューアルされた、アートディレクター・ウェブデザイナーの戸田芳裕さんのポートフォリオサイト『unouplus』です。
ウェブサイトでは、戸田さんの自己紹介やこれまで手がけてきた作品の数々が紹介されていますが、特にウェブサイトの訪問日時を利用して楽しめる時間が変化するコンテンツ「ASOBI」がとても素晴らしいです。
画面全体を大きく使用した"からくり仕立てのコンテンツ"とでも言えるこのコンテンツは、さまざまな仕掛けやアニメーションが数多く用意されており、ユーザーがついつい時間を忘れて楽しんでしまう内容となっています。
ポートフォリオの目的とは何か
この『unouplus』では、別のウェブサイトとして公開しても良いほどクオリティの高い、楽しめるコンテンツをあくまで"ASOBI"としてポートフォリオ内に組み込んでいるところに、制作者のサービス精神と高い実力を感じます。
現在、数多く存在する個人のポートフォリオサイトでは、プロフィールやそれまでの実績などが中心に構成されるのが普通となってきましたが、そのために新鮮で大きな驚きを感じることが少なくなってきました。
どんな目的で、どう形にして、何を伝えるのか。個人のポートフォリオの内容について、いま一度考えてみる時期に来ているかもしれません。
なお、ポートフォリオについては、Joshua Davis(ジョシュア・デイビス)がとても面白いことを言っていますので、その言葉を引用して終わりたいと思います。
「私には『Joshuaのようになりたい(好きなことを仕事にするという意味)』という友人がいる。だが、その友人のポートフォリオサイトに行くと、ありふれたものしか置いていない。これではクライアント側から『こういう仕事がやりたいのだ』と思われても仕方がない。」
Joshua Davis
"自由"を手に入れたウェブサイト
アメリカ・ノースカロライナ州の広告代理店BooneOakleyのウェブサイト、『BooneOakley.com - Home Page』です。
動画共有サイトであるYouTubeにアップした動画がウェブサイトの代わりとなっており、タイムライン上にもコンテンツが用意され、再生することでそれらのコンテンツを確認できます。
さらに、YouTubeのアノテーション機能(YouTube内の他の動画やページへのリンクを、動画上に追加できる機能)を利用したボタンを動画に埋め込んでナビゲーションとすることで、YouTube内にある各コンテンツへのリンクを可能にしています。
また、自社のドメインであるbooneoakley.comから自動的にこのYouTubeの動画に移動するなど、細かい所も抜かりないものになっています。
"動画"にすることで生まれるもの
ユーザーのコメントやインサイト機能(アップロードした動画について詳細な統計情報を見ることができる)を利用したアクセス解析などが使えるなど、YouTubeという動画サービスを使うことでさまざまな利点がありますが、それ以上に通常のウェブサイトと違う、大きな可能性を感じる部分があると思います。
まず、"YouTubeの動画"という形にすることで、自社のウェブサイト(コンテンツ)をその場で見てもらうことが可能になります。そして、Blogなどに動画をはって広めることができるため、ウェブサイトへの入り口を爆発的に増やせるのです。
もちろん、何よりも"YouTubeは動画を見る場所"というユーザーのイメージを完全に壊したアイデアとその実現こそが、驚きと大きな可能性を感じさせてくれている部分であることはいうまでもありません。
今後も違った方向から見ることで、固定化しつつある既存のウェブサービスの使い方を変えるような、新しい使い方がまだまだ生まれてくるかもしれません。
というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。