ムシムシとした梅雨も明け始め、いよいよ夏本番となりビールのおいしい今日このごろ、いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた素晴らしいサイトの特徴を、いくつかお話したいと思います。
"ムーンウォーク"は終わらない
2009年6月25日に亡くなった世界的なスーパースター、Michael Jacksonをトリビュートしたウェブサイト、『 Eternal moonwalk』です。
図1 Michael Jacksonのムーンウォーク動画からスタート
credit: group94 , Mortierbrigade
"Eternal moonwalk(永遠のムーンウォーク)" というタイトルの通り、Michael Jackson の代名詞とも言えるムーンウォークの映像が、次々とリレー形式でつながりながら再生され続けるという内容です。
図2 いろいろなムーンウォークの動画がある
また、ユーザーが撮影した動画も投稿できるようになっており、アニメーションや人間以外のムーンウォーク(!)なども楽しめるウェブサイトとなっています。
"Viral(バイラル)"と呼ばれる速さ
『Eternal moonwalk』が公開されたのは、Michael Jacksonが亡くなってから、わずか一週間後のことです。シンプルなアイデアとはいえ、こうした考えがすぐにウェブサイトという形になることに、まず驚きます。
それ以上に驚いたのは、インターネット上での広がりの速さです。『 Eternal moonwalk』を制作したgroup94のクリエイティブディレクターであるPascal Leroyが、ウェブサイトの公開をTwitterで発表したのが7月3日。それからTwitterやBlogなどを通じて、世界中にウェブサイトの情報が爆発的に広がっていきました。
図3 AlexaによるEternal moonwalkのトラフィックランキングの推移
Alexaのトラフィックランキングのピークだった7月8日には、Pascal LeroyのTwitterに、「 Currently setting up server nr5 for www.eternalmoonwalk.com. ( 現在、eternalmoonwalk.comのための5番目のサーバを準備している。) 」と書かれており、アクセス数のすごさが伺えます。
Michael Jacksonが世界的なスーパースターということを差し引いても、このような世界的レベルで行われる人的な情報の広がりと共有のされるスピードの速さ、そしてウェブサイトの力を改めて感じる出来事でもありました。
企業がTwitterを使う理由
2009年7月13日、新型Audi A5 Cabriolet(カブリオレ)の報道発表会の生中継を行ったウェブサイト、『 Audi A5 Cabriolet - Live』です。
図4 ウェブサイト上で行われた報道発表会の生中継
credit: UltraSuperNew
アウディ ジャパンにとって初の試みとなるこのライブ中継では、まずAudi A5 Cabrioletのプレゼンテーションが行われ、その様子が映像としてウェブサイト上に流されただけでなく、Twitterを使っての実況中継も行われました。
図5 Twitterを利用した実況中継
さらにプレゼンテーション終了後には、ユーザーからの質問を製品担当者がチャット形式で回答するという「Live Q&A」が行われました。
※なお、この発表会の模様は現在も視聴が可能です。
ユーザーとの関係をどう作るか
アウディ ジャパンのニュースリリースでは、今回の試みについて以下のように説明しています。
お客様とのコミュニケーションを図る貴重な機会と捉え、 "Vorsprung durch Technik(技術による先進)"を掲げるアウディにとっての「Vorsprung(先進) 」のひとつの体現と考えております。
今や、新製品などの発表会をウェブサイト上で生中継することは、決して珍しいことではありません。しかし、今回アウディ ジャパンが行った、Twitterを使った報道発表会の実況中継は今までなかったものです。
ユーザーに発表会の中継をウェブサイトまで見に来てもらうという従来の方法ではなく、事前にアウディ ジャパンのTwitterをフォローしている(興味を持っている)ユーザーに対して、リアルタイムで情報を送信し、さらに質問を受け付けることで、より良い印象を確実に与えることができたと思います。
図6 Twitterでフォローも受け付けた
"ユーザーがコンタクトしてくるのを待つ"という受け身の姿勢ではなく、"積極的にユーザーとの関係と信頼を深めていく"という企業の新しい姿勢が、今後ユーザーとの新たなコミュニケーションの基準となることを期待したいと思います。
新たな機会を与える
オリジナルデザインの家具やインテリア雑貨を取り扱うインテリア通販サイト、IDEE SHOP Onlineによる、『 WORST SELLER - 売れない商品ランキング』です。
図7 "売れない商品"という言葉に驚く
credit: IDEE SHOP Online(production) , full size image(design)
IDEE SHOP Onlineには、ナビゲーションから売れ筋商品として「TOP SELLER - 最新の売れ筋ランキング 」というコンテンツが用意されているのですが、この『WORST SELLER - 売れない商品ランキング』は、そのページの上部からリンクされています。
図8 画面上部にある、さりげないリンク
一見して"売れない商品"という名前にびっくりするコンテンツですが、サイトでは以下のように説明されています。
イデーではひとつひとつのオリジナル製品を丁寧にお作りし、国内外から良い品を厳選し、自信を持ってご紹介しているつもりなのですが、中には残念ながらほとんどお買い求めいただく機会のないアイテムもございます。沢山の商品ラインナップの中で、皆さまこれらのアイテムをお見逃しになってはいませんでしょうか。
このままお買い上げいただけませんと、近い将来廃番やお取り扱い中止とさせていただく可能性もございます。どうか今一度これらのアイテムを見直し、その魅力を発見してくださる方がいらっしゃいますよう、スタッフ一同、心より願っております。
"売れない商品"であることをマイナスとしてとらえず、むしろ"新たに商品を購入者に紹介する機会"と考える売り方が、とても見事で感心してしまいます。
本当に"売れない商品"なのか
「売れている商品や人気商品をページの見やすい位置に配置することで、購入者が必ず気づくようにアピールし、さらに売上を伸ばす」という方法が当たり前となっているオンラインショップのページ構成ですが、そのせいで商品数が多くなればなるほど、必ず埋もれてくる商品が出てくると思われます。
図9 ページの構成は、売れ筋ランキングと変わらない
そのために"特価"、"お買い得"、"今だけ"などと銘打ちながら、埋もれた商品を売れるようにする方法をよく見ますが、個人的には、そのうたい文句のために購入への警戒を強めることがよくあります。
そんな中で"売れる"、"売れない"に関係なく、ショップのどの商品にも同じように愛情を感じさせるこの売り方は、非常に面白い試みだと思います。オンラインショップの商品の売り方の一つとして、今後考えられるようになるかどうか。ランキングの更新を注意深く見守りつつ、注目していきたいと思います。
というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。