いま、見ておきたいウェブサイト

第18回Jordan : History of Flight、UNIQLO SHOES、JINSMAN - ここはJINSの宣伝担当、JINSMANの部屋。

「外出後は、うがいと手洗いを徹底しなければ」と新型インフルエンザへの対策を練りつつ、朝晩の冷え込みからいよいよ秋本番だなとしみじみしている今日このごろ、いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた素晴らしいサイトの特徴を、いくつかお話したいと思います。

"餅は餅屋"という考え方

『Jordan : History of Flight』

"バスケットボールの神様"Michael Jordan(マイケル・ジョーダン)とのコラボレーションによるNikeのバスケットシューズ、Air Jordan Seriesの25年の歴史をまとめたウェブサイト『Jordan : History of Flight』です。

図1 3Dのパーツとアニメーションが印象的
図1 3Dのパーツとアニメーションが印象的
credit: BLAST RADIUS

ウェブサイトの下部に並んだ数字をクリックすることで、2010年にリリースされる予定のバスケットシューズ「Air Jordan 25th Anniversary White Collection」を中心に組み立てられたジオラマが変化し、1985年から2009年までのAir Jordanのデザインの変遷が確認できます。

図2 パーツをクリックするとエピソードが表示される
図2 パーツをクリックするとエピソードが表示される

バスケットシューズの周りは、さまざまな形のパーツによって囲まれています。パーツにマウスカーソルを合わせてクリックすると、パーツの形の元となっているエピソードが表示され、Michael Jordanという偉大な選手の歴史を振り返れます。

同じ仲間と手をつなぐ

エピソードに関連して紹介されるMichael Jordanの現役時代の映像は、このウェブサイト上で再生されることはありません。同時期にローンチされた、スポーツ専門チャンネルESPNによるMichael Jordanの特設サイトESPN Michael Jordan's TOP23へのリンクが紹介されているだけです。

図3 映像は外部のウェブサイトにリンクされているだけ
図3 映像は外部のウェブサイトにリンクされているだけ

"Air JordanとMichael Jordanの歴史"を中心に構成された『Jordan : History of Flight』とは異なり、"現役時代の映像"を中心に構成された『ESPN Michael Jordan's TOP23』の特長を生かした形で連携を行うことで、お互いのウェブサイトの特徴をうまく引き出し、相乗効果を高めるという形を取っています。

『Jordan : History of Flight』『ESPN Michael Jordan's TOP23』は、どちらも2009年9月のMichael Jordanがバスケットボール殿堂入りを記念して作られています。世界的な不況の影響でウェブサイトの制作予算が縮小しつつある現在、⁠同じ目的を持って制作されたウェブサイト同士が連携する」という方法が増えてくるかもしれません。

そぎ落とされた美しさ

『UNIQLO SHOES』

ファーストリテイリンググループによるカジュアルシューズの新ブランド、⁠ユニクロシューズ」のプロモーションサイト『UNIQLO SHOES』です。

図4 販売される靴が次々に紹介されていく
図4 販売される靴が次々に紹介されていく

2009年9月16日より販売されたスニーカーやブーツなど、メンズ、ウイメンズの計8商品が次々と画面に登場して、音楽に合わせてリズミカルに動いていきます。

図5 音楽に合わせて靴がリズミカルに動く
図5 音楽に合わせて靴がリズミカルに動く

商品である靴を行進させたり、回転させてディテールを見せたりと、靴をモデルのように扱っている演出もとても面白いです。

"欲しいものだけ"を提供する

この『UNIQLO SHOES』には、商品を紹介するタレントは登場しません。⁠これはいい商品ですよ」というセールストークも、キャッチコピーもありません。

新しく靴が発売されたことを知ったユーザーが、何を求めてやってくるのかをしっかりと考えた上で、本当に必要な情報だけをウェブサイト上に用意し、それをさりげない演出によって見事に表現しています。

図6 情報を伝えるための考えられた演出が見事
図6 情報を伝えるための考えられた演出が見事

ウェブサイトのトップでは、今回発売される8つの商品を次々と紹介していきます。こうすることで「どんな種類の靴が販売されるのか」をユーザーは自然に理解できます。また個別の商品紹介ページでは靴を回転させて見せることで、マウスを動かす必要もなく、ユーザーがディテールを確認できます。どちらの演出も、ユーザーがその場面で求める欲求にシンプルに応えています。

"余計な装飾"によって、必要なものや伝えたいことがぼやけてしまったウェブサイトを見ることも少なくありません。ユーザーが本当に求めているものをどう伝えるかをしっかりと考え、そこから生まれてくる新しい演出に今後も期待していきたいと思います。

"twitter"も使うプロモーション

『JINSMAN - ここはJINSの宣伝担当、JINSMANの部屋。』

株式会社ジェイアイエヌによるメガネ専門店JINS(ジンズ)のプロモーションサイト、⁠JINSMAN - ここはJINSの宣伝担当、JINSMANの部屋。』です。

図7 JINSMANによって「air frame」の解説が行われる
図7 JINSMANによって「air frame」の解説が行われる
credit: DENTSU Inc., ADBRAIN Inc.

新製品の超軽量メガネ「air frame」について、英国紳士風のJINSMANが登場して、詳しく説明していきます。説明ビデオの途中で早送りができるなど、細かい部分もよくできています。ウェブサイト内ではクイズも行われており、毎週成績優秀者には無料でメガネがプレゼントされるとのことです。

図8 クイズの成績が良ければメガネが無料となる
図8 クイズの成績が良ければメガネが無料となる

またネット以外にも、店舗の原宿店のリニューアルオープンを記念した各種イベント(JINSMANから風船をもらった1000人は「Air frame」が無料になるなど)を行うなど、さまざまな媒体(新聞、雑誌、TVCMなど)を組み合わせたプロモーションを展開しています。

図9 JINSMANのtwitterアカウントも用意
図9 JINSMANのtwitterアカウントも用意

さらにJINSMANのtwitterアカウントも用意されており、ユーザーとのコミュニケーションだけでなく、キャンペーンサイトで行われるクイズのヒントや「air frame」の最新情報などが発信されています。⁠3か月間でTwitter上のリンクのクリック数12万⁠⁠、⁠JINの認知率を瞬発的に30%にする」といったキャンペーンにおける目標が明確なこともあり、この後でどのような結果が出てくるのか非常に楽しみです。

ビジネスへと向かうtwitter

今年に入り利用者が急増しているtwitterですが、全世界の利用者の約半分を占めるアメリカでは、すでにいくつかの企業が積極的に利用しています。

パソコンメーカーのDell(動作確認を行った整備品を売るアウトレットで300万ドル以上を売り上げる⁠⁠、格安航空会社のJetBlue Airways(Twitterの管理人が常に顧客を監視して困っている場合はすぐに手助けする⁠⁠、地元密着型のビザハウスNAKEDpizza(顧客にとって有益な情報を流すことでtwitter経由の売上が全体の15%に)など、事業の規模に関係なくtwitterによって大きな成功を収めています。

日本でも、All About スタイルストアのつぶやき川柳大賞 in Twitter⁠取り扱う商品をテーマに川柳を投稿し、上位3名に商品をプレゼント⁠⁠、毎日ユーザビリティに関する勉強ができる株式会社ビービットの例(毎日3問の問題を出題し、30分以内に回答を返信するとダイレクトメッセージで通算成績が通知される)など、ここにきて個性的なtwitterの事例を目にすることが多くなってきています。

twitterは無料でアカウントが取得できるため、顧客のサポートや情報発信などに利用する企業がますます増えています。このためtwitterの活用法やケーススタディをまとめたTwitter 101が開設されるなど、今後ビジネスにおけるtwitterの活用がさらに拡大していくでしょう。

ネットレイティングス株式会社によれば、日本でのtwitter利用者は約78万人とまだまだ少ないのですが、これから日本独自のtwitterの使い方やサービスが次々と生まれることを期待したいと思います。

というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。

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