熱狂したオリンピックも終了し、いよいよ本格的な春の気配が感じられる今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。
想像力から生まれる世界
フランス・プロヴァンス地方のブーシュ=デュ=ローヌ県の旅を、各地で撮影された映像と写真でまとめたウェブトラベルノート、『Snapshots of Provence』です。
『Snapshots of Provence』は、プロヴァンス、マルセイユ、カマルク各地の写真と映像を「EYE-CATCHY」、「PLAY IT BY EAR」という2つの異なった視点から紹介しています。
「EYE-CATCHY」では、写真家たちによって撮影された写真や映像に付けられたテーマを選択しながら、“目で見て楽しむ”という内容となっています。画面に表示された地図を使って、地名から写真を選択することも可能です。
音による想像力が世界を広げる
「PLAY IT BY EAR」では、写真家のThomas Duvalが撮影した写真や映像に、サウンドデザイナーのTacteelによる環境音を加えることで、見るだけでなく“耳でも楽しむ”コンテンツに仕上がっています。
特に写真に関しては、音という要素を加える工夫によって、見る者の想像力を刺激し、まるでその場にいるかのような臨場感を生み出すことに成功しています。
“音”という素材の使い方ひとつで、ユーザーにコンテンツの印象を深く刻めることが実感できるこのウェブサイト。Flash Player 10では音に関する機能が強化されましたが、機能を使うだけでなく、音をより上手に利用したコンテンツにも注目していきたいところです。
“縦”への強いこだわり
株式会社ジュンの女性用ファッションブランド、「Rope Picnic (ロペピクニック)」「Rope Picnic Passage(ロペピクニック パサージュ)」のウェブサイトです。
ウェブサイトのトップを飾るイメージ写真を切り替えるマスクの方向、画像を切り替えるボタンの配置、流れるメッセージなど、縦方向へのこだわりが感じられるウェブサイトです。
スタッフのおすすめアイテムを紹介する画面でも、サイトのトップと同じように縦方向への流れが生かされています。さらに所々で、日本語の縦書きによる紹介文も使われています。
ウェブサイトにおける日本語の縦書き
画像などを利用して、日本語の縦組みを実現したウェブサイトはこれまでにもいくつか登場しています。Flash Player 10では、ブラウザ上で日本語の縦書き表示を可能とするFlash Text Engineが追加されましたが、それらを生かしたコンテンツはまだまだ少ないのが現状です。
そんな中、積極的に日本語の縦組みに取り組むウェブサイトも登場してきました。佐賀一郎さんによる『macromarionette(マクロマリオネット)』では、Text Layout Framework(Flash Player 10から導入されたFlash Text Engineのフレームワーク)を使って、日本語の縦組みを実現しています。さらに、ウェブサイトにおける縦書きの問題点でもあったスクロール操作についても工夫が見られます。
また、ネット上で本が作れるオンラインサービス『BCCKS(ブックス)』では、縦組み文庫本フォーマットのデモブックが公開されるなど、ウェブサイト上での日本語の縦組み表現も、少しずつ環境の変化が見えてきています。
まだ「ルビが振れない」「ブラウザ上で文字を検索できない」などの問題点もありますが、ウェブサイト上で実現される、縦書きに対するさまざまな試みに今後も注目していきたいと思います。
チャンネル数、時間枠、自由自在
2010年の冬季オリンピックバンクーバー大会の競技の模様を、日本時間の2月14日から28日まで、ウェブサイト上でライブ放送していた『NHKバンクーバーオリンピック ライブストリーミング』です。
NHKバンクーバーオリンピックの情報サイトに用意されたこのコンテンツでは、日本国内でライブ放送されない競技(アイスホッケー、アルペンスキーなど)を中心に、音声による実況・解説などを付け加えない国際放送の映像を3つのチャンネルで放送していました。
今までのオリンピック放送では、日本選手が出場しないなどの理由で、まったく放送されることのない競技もあったのですが、今回はウェブサイトを利用することで、従来のチャンネル数や時間枠の制限を解消し、同時に今まで競技の放送機会がなかったファンたちの不満も解消しています。
効果的な放送への変化
今回のバンクーバーオリンピックの放送では、前回のオリンピックでは考えられなかった、数多くのコミュニケーション・チャネル(顧客にメッセージを送ったり、逆にメッセージを受け取ったりするための媒体)が誕生し、さまざまな場面で使用されています。
今年に入ってからは、日本の大手民放ラジオ13局によるネット配信の解禁や、PCやスマートフォンによるライブ動画を配信・視聴できるUstreamへのソフトバンクの出資、BBC(英国放送協会)による2010年サッカーワールドカップ南アフリカ大会のライブ放送アプリの開発など、放送を取り巻く環境が大きく変化してきていることが伺えるニュースも次々と飛び込んでくるようになりました。
すでに家庭にあるテレビやラジオだけに番組を配信するだけではなく、Twitterなどに代表される新しいコミュニケーション・チャネルをどう組み合わせて効果的な放送を行っていくのかを、マスコミも真剣に考えて素早く“実行する”時代に入ったと思います。インターネットを利用した多くのコミュニケーション・チャネルが用意される中、これからマスコミがどのような動きを見せてくるのか、本当に目が離せません。
というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。