いよいよ本格的な桜のシーズン、いや、お花見シーズンの到来でウキウキしている今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。
公共サービスをより楽しく、使いやすく
日本全国にある4300以上の図書館/図書室から、本の貸出し状況が検索できるサービス『カーリル』です。
蔵書の検索対象となる図書館を選択した後、読みたい本を検索すると、Amazonのデータベースを利用した本の表紙やレビューとともに、本の貸出し状況が表示されます。またキーワードによる検索だけでなく、「今話題の本」「作家から探す」のタブからも自分の興味のある本を探すことが可能です。検索で発見した読みたい本はリストとして保存することも可能で、印刷して図書館へ持って行くこともできます。
カーリルでは、全国のOPAC(Online Public Access Catalog)対応図書館のリアルタイム蔵書検索機能を提供する「カーリル図書館API」を使用しており、このAPI(Application Programming Interface)を用いたアプリケーションコンテストの実施も発表されています。
まだまだ満足度の低い公共サービス
インターネットで予約が可能なため、私も読みたい本があれば、地元の図書館をよく利用しています。しかしながら、図書館の検索システムが「誰もが使いやすいインターフェースで便利な機能が備わっているか」と問われれば、少し考えてしまいます。
そんな図書館のシステムよりも、便利に蔵書を検索するサービスも存在しています。例えば、Firefoxと拡張機能のGreasemonkeyを使った、Libron(リブロン)というサービスがあります。Amazon.co.jp経由で図書館の本を予約できる非常に便利なサービスなのですが、対応している地区がまだまだ少ないのが現状です。
カーリルも“公共のサービス”という意味では、蔵書の横断検索(複数の図書館を同時に検索する)の指定範囲が狭いこと、ISBN(International Standard Book Number:国際標準図書番号)のない資料(古書・郷土資料など)へのアクセスができないことなど、改善が求められる部分がまだまだ多くあります。
とはいえ、興味を持った本のリスト管理が可能だったり、図書館にない場合はそのままAmazon.co.jpで本が購入できたりと、いままで図書館が提供していた“本を探して予約するだけ”というサービスの満足度をぐっと引き上げる事に成功しています。これまで以上に便利に、そしてより身近に図書館を利用することを可能にしていくさまざまなサービスに、今後も期待していきたいと思います。
毎日が“楽しい”週末
グラフィックデザイナー、映像作家、VJ、現代美術家、文筆家など、多分野で活躍する宇川直宏さんによって、2010年3月1日から始められたプロジェクト『DOMMUNE(ドミューン)』です。
「共同体を意味するCOMMUNE(コミューン)の先を目指す」という意味が込められた「DOMMUNE」では、Ustreamを使用して毎週日曜から木曜の夜7時からゲストによるトークショー、夜9時から豪華なDJ陣によるDJストリーミング番組「BROADJ」が配信されます。放送される番組は、渋谷にあるスタジオで実際に観覧もできます。
盛り上がるための巧みな仕掛け
DOMMUNEの放送時間は、いわゆるテレビ業界の“プライムタイム(夜の看板番組が並ぶ時間帯のことで、日本では毎日19:00から23:00の時間帯)”にかぶっているのですが、連日数千人を超える視聴者を獲得しています。ということはUstreamで良質のコンテンツを提供できれば、テレビにも負けない、しっかりとしたファン層を獲得できるメディアに成長する可能性があるのではないでしょうか。
いろいろな番組がUstreamで生放送されることが多くなってきましたが、この「DOMMUNE」では、それまで考えられなかった高音質や複数台のカメラを使用したカメラワークなどによって、クオリティの高い放送を実現しています。
また番組のアーカイブが存在しないため、視聴者は毎日の生放送に集中しなければならない状況が作られている点や、金・土曜日は放送を行わず、実際のスタジオ(クラブ)へと繰り出すように仕掛けられている点もよく考えられています。
「しっかりと作り込まれた良質のコンテンツは、多くの人々を巻き込む力を持つ」ということを、改めて教えてくれたこのプロジェクト。これからどんな展開を見せてくれるのか、毎日深夜まで、目の離せない状況が続きそうです。
いつでも、どこでも、ラジオ
都市部を中心に増加しているラジオの難聴取地域を解消するために開始された、地上波ラジオをパソコンで聴けるサービス「radiko(ラジコ)」のウェブサイトです。
「地上波ラジオ放送を、放送エリアに準じた地域に同時にインターネットストリーミング配信する」というこのサービスでは、在京民放ラジオ7局、在阪民放ラジオ6局の地上波ラジオ放送が地域限定で聴けます。
ウェブサイトに表示されたラジオ局を選択すると、別ウィンドウでプレイヤー(再生・中断、音量調節が可能)が立ち上がり、ノイズの少ない放送が聴けます。インターネットで放送される番組内容は、多少の遅延がありますが、地上波ラジオ放送と同じです。
この「radiko」は2010年8月末までの試験配信ですが、9月以降の実用化配信を目指しているそうです。また、東京・大阪以外の地域への放送拡大や、iPhoneなどの携帯端末への対応も検討中ということで、今後はどこにいてもラジオ放送を聞ける環境が広がっていきそうです。
新たなチャネルが広げるラジオの世界
まだ放送開始から日も浅いですが、ブラウザを立ち上げずに「radiko」が聴ける「CoRadiko」や「radikoプレイヤー」、各ラジオ番組に関するTwitterのつぶやきを放送局別に表示する「らじったー」など、「radiko」の使い勝手を向上させるアプリケーションやより楽しむためのサービスなども続々と登場するなど、「radiko」の周辺環境も盛り上がりを見せています。
文化放送.comの記事によれば、「radiko」の放送初日の延べ聴取人数は105万人、ユニークユーザーは30万人と発表されています。私事ですが、今回「radiko」のサービスによって、十数年ぶりにAMラジオの放送を聴きました。またFMラジオを聴く環境はあったのですが、今まで受信できなかったFM放送局の曲の番組を聴くことが可能になったことで、生活の中でラジオというメディアとふれあう機会が大幅に増加しました。
インターネットを通じた放送によって、放送局側にとってはリスナー数が明確になるだけでなく、これまで以上にユーザーの反応に関する貴重な情報を得られる機会が増えるでしょう。「radiko」のサービス開始後にウェブサイトへのアクセスが増えたInterFMの例などもあり、今後は通常の放送のリスナーだけでなく、「radiko」を利用しているリスナーを上手に使ったキャンペーンも次々と登場してくるのではないでしょうか。
すでにソーシャル・メディアを中心にして、リスナーからは放送地域を飛び越えた番組の聴収や地方局の参加、放送中の楽曲情報表示など、「radiko」への要望が次々とあがってきています。広告費の大幅な減少(電通による「日本の広告費」によれば、2009年は前年比88.4%の1,370億円とピーク時の約57%)によって、厳しい状況が続くラジオというメディアが、新たなリスナーを獲得するチャネルを得たことでどんな変化を見せてくれるのか。試験放送終了後の動きが今から楽しみです。
というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。