お花見シーズンのウキウキした気分が終了したにもかかわらず、今度はゴールデンウィークの休日数が気になって仕方がない今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。
つぶやきから生まれる“気づき”
Twitterを利用して「いま、みんなが気づいたこと」を共有するプロジェクト、『voice of awareness #kizuku』のウェブサイトです。
ウェブサイトでは、Twitterで使われるハッシュタグ(#で始まる話題やイベントについてのタグ)「#kizuku」を利用して、ユーザーの“気づき”がまとめられた「日刊気づき新聞」が毎日発行されます。Twitterの公式アカウントをフォローしておけば、新聞の発行が1日1回通知されます。
「日刊気づき新聞」の見出しは、Twitter上のリプライやリツイート、ユーザーの共感(ウェブサイト上での「たしかに」ボタンの押された回数)によって決定される仕組みになっています。また、Twitterのアカウントを使ってサインインすると使える、便利な機能(“気づき”の投稿や共感した“気づき”の一覧など)も用意されています。
ハッシュタグとリアルタイム検索が変えるもの
最近ではハッシュタグを使い、短歌や俳句を集めた『ついっ短歌』、Twitterで本の名言を共有する『Inbook.jp』、検索と分析に便利な『hashtagsjp』など、Twitterのつぶやきをより楽しめる多彩なウェブサービスが登場しています。
気になった言葉・テーマ・モノに関する情報を探したり、テレビで今どんな内容の番組を放送しているのか確認したり、各種イベントに関連するつぶやきをまとめて見たり…私自身にとって、すでに時系列に沿ってまとめられた情報が入手できるハッシュタグの利用は欠かせません。
2010年2月にはGoogleの「リアルタイム検索」が日本語に対応したこともあり、Twitterなどのソーシャル・メディアへの投稿がリアルタイムに検索結果に反映され、今行われていること、誰かが今感じていることを、すぐ知ることができるようになりました。
Twitterの特徴といえる“ユーザーの現実との同期”によって、コミュニケーション速度が加速し、人々の思考や情報発信、行動や生活をどう変えていくのか。それを積極的に利用している自分自身がどう変化するのか、今から楽しみです。
つながり、広がるソーシャルアプリ
SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のmixiで、Hondaが提供しているソーシャルアプリケーション「mixiアプリ」のひとつとして、『Ole! Ole! CR-Z』というキャンペーンが行われました。
2010年2月26日に発売された、Hondaの新型ハイブリッドカー「CR-Z」のプロモーションとして始まった『Ole! Ole! CR-Z』は、mixiのユーザーがニックネームを変更する(自分のニックネームの中に“CR-Z”というキーワードを入れる)と、「CR-Z」をはじめとする豪華賞品が当たるというアプリケーションです。
アプリケーションでは自分に「CR-Z」が当たる確率が表示されるのですが、毎日アプリケーションにログインしたり、マイミクと協力する(マイミクがニックネームに“CR-Z”を追加したり、マイミクをアプリケーションに招待するなど)ことで当選確率を上げることができるため、3月末の終了までに“mixiのユーザー80万人以上が参加する”という、爆発的な広がりを見せたプロモーションとなりました。
SNSへと移動するユーザー
調査会社のNielsenによる調査で、2010年1月のFacebookにおけるユーザー1人当たり滞在時間が7時間へと増加(Google、Yahoo!の3倍以上)していることや、Facebook
がGoogleを抜いて最もアクセス数の多いウェブサイトになったことが調査会社Hitwiseによって発表されるなど、アメリカではウェブサイトを利用するユーザーが、検索中心のポータルサイトからSNSへと利用の中心を移し始めているデータが挙がってきています。
こうしたユーザーの動きの変化に、PepsiがFacebookなどのソーシャル・メディアへの広告に2000万ドルを投入することを決定したり、Coca-ColaとUnileverもFacebookやYouTubeといったコミュニティへと
マーケティング活動の重点を移すことを表明したりと、アメリカでは企業側も敏感に反応しています。
日本でもmixiが2009年8月から「mixiアプリ」を導入後、ユーザーの利用時間を伸ばしている例もあり、今後、企業が積極的にSNSでのプロモーション活動を行うのは間違いありません。従来のキャンペーンサイトなどでは実現できない企画が、ソーシャルアプリを利用することで次々と生まれる可能性もあり、しばらく目が離せない状況が続きそうです。
良質な情報は、無料ではない
2010年3月23日に既存の『NIKKEI NET』をリニューアルして創刊された、『日本経済新聞 電子版』(愛称:Web刊)です。
一部の記事は無料で提供されますが、有料会員になることで、“紙”の「日本経済新聞」に掲載される全記事のほか、Web刊独自の記事などが読めます。また、設定したキーワードに関する記事を自動で選び出したり、読んだ記事の履歴を記録したり、気に入った記事の保存が可能な「My日経」と名付けられたパーソナライズ機能が提供されます(提供される詳しい機能は、別サイトである『日経電子版 広報部』で紹介されています)。
有料会員の料金は、“紙”の「日本経済新聞」を購読していれば月額1,000円、Web刊のみの購読であれば月額4,000円となっています。
少しずつ変わる、新聞社のウェブサイト
日本の大手新聞各社は、記事の無料購読とウェブサイト上の広告料収入を組み合わせた“広告モデル”を中心とした運営を行っていましたが、提供するコンテンツそのものに料金を払ってもらおうとする、“課金モデル”へと移行する新聞社がやっと出てきました。
海外では、すでにこの“課金モデル”で成功している新聞社もあります。2001年から“課金モデル”を開始している、イギリスの経済紙「The Financial Times(ファイナンシャル・タイムズ)」では、メーター制と呼ばれる課金方法(決められた期間内で一定本数の記事が無料で読めるが、それ以上の記事を読む場合は課金される)の採用や、購読者へとターゲットを絞った広告配信による高い広告料収入の確保で、収益増加(前年度比43%)と有料購読者数の増加(15%)を実現しています。
日本でも2009年12月に「WSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)日本版」が正式にオープンし、2010年1月には北日本新聞社によるウェブ新聞「webun(ウェブン)」が新たに創刊されたことから考えれば、
今回の日本経済新聞社のように、今後は“課金モデル”を最優先する新聞社も増えてくるでしょう。
海外では、“地域ニュースのみ有料”(ドイツ「Hamburger Abendblatt(ハンブルガー・アベンドブラット)」紙)、“ウェブサイトで提供する便利な機能のみに課金”(フランス「Le Figaro(フィガロ)」紙)、
“1日・1週単位の少額有料制を採用”(イギリス「The Times」紙、「Sunday Times」紙)、
“記事は無料だがiPhoneで記事を読むためのiPhoneアプリ(年間使用料1.99ドル)を販売”(アメリカ「Washington Post」紙)といった、新聞社による課金に対しての試行錯誤が今も続いています。
個人的には「他の新聞との違いが出せるか」「ほかでは手に入らない情報が提供できるか」「スマートフォンやiPadなどの新しいプラットフォームにどんな形でコンテンツを提供するのか」など、今後の新聞社の対応に興味は尽きません。
ただし“コンテンツの価値を決めるのはユーザーである”とするならば、「お金を払っても良いと思う情報・機能を提供できるか」が、この“課金モデル”の成功を左右すると言っても過言ではないでしょう。成功に導くような価値あるコンテンツが、これから次々と新聞社から生まれてくることを期待したいと思います。
というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。