いま、見ておきたいウェブサイト

第33回指名手配 jp、冷蔵庫 ブログで見る(Panasonic)、Fonts.com Web Fonts

さわやかな風と目にしみる青葉のおかげで、ゴールデンウイーク後の脱力感が回復してきた今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。

指名手配犯、逃がしません

ネットで懸賞金ゲット!!指名手配犯の懸賞金サイト「指名手配 jp」

警察庁が2007年4月1日から導入した捜査特別報奨金制度(事件の解決に結び付く情報を提供すると懸賞金が支払われる)の対象となっている、事件の情報を集めたウェブサービス『指名手配 jp』です。

図1 捜査特別報奨金制度に設定されている事件が一覧表示されている
図1 捜査特別報奨金制度に設定されている事件が一覧表示されている

ウェブサイトでは、懸賞金(最高額は600万円)の設定されている事件が一覧表示されており、各事件の簡単な説明と、警視庁・警察署が提供するより詳しい情報へのリンクが用意されています。

図2 フォームやTwitterを使って、事件の情報を提供できる
図2 フォームやTwitterを使って、事件の情報を提供できる

ウェブサイトに用意されたフォームから事件に関する情報提供が可能なほか、Twitterを使って事件へのつぶやきを投稿することもできます。このほかにも、最新の主要指名手配情報などが配信されるブログパーツも用意されています。

行政に求められる、広げる情報発信

凶悪な事件が発生した直後は、マスメディアを通じた報道などによって、人々が事件の情報を耳にすることも多いでしょう。しかし、時間が経過するごとにその回数は減り、やがて人々が事件に関する情報に接触する機会すらなくなってしまいます。

『指名手配 jp』では、捜査特別報奨金制度の対象となる事件を一つにまとめ、事件の情報との接触回数を増加させることで、人々に事件を意識させています。さらに事件に関する情報提供をうながし、その情報を拡散することで、事件の風化を防ぐという仕組みを作り上げています。

もちろん警視庁のホームページには、「事件ファイル」というコンテンツが用意され、捜査特別報奨金制度の対象となる事件の情報が提供されていますが、普段このウェブサイトを目にする機会はほとんどないでしょう。

アメリカでは警察署がTwitterなどを利用して、担当地域への積極的な情報提供を行い、そこから発生する地域住民とのコミュニケーションを、防犯に生かそうとする動きが出てきています。持っている情報をわかりやすく効率的に拡散し、発生する住民からのフィードバックを生かす仕組みを日本の行政機関がこれからどう作るのか注目していきたいと思います。

無視できない、ユーザーの意見

冷蔵庫 ブログで見る | Panasonic

実際に商品を使っているユーザーが書いたBlogへのリンクをまとめた、パナソニックの製品紹介ページ『冷蔵庫 ブログで見る』です。

図3 製品を使っているユーザーの書いた記事へのリンクが並ぶ
図3 製品を使っているユーザーの書いた記事へのリンクが並ぶ

株式会社ホットリンクが開発したBUZZsticker(バズステッカー)を採用して、一般のブログに書かれたパナソニックの冷蔵庫に関する記事を収集し、ウェブサイトに表示しています。ブログの記載内容を特に制限せず、良い情報・悪い情報を含め、消費者の製品購入時に役立つ情報を掲載しているのが特徴です。

図4 商品ページのトップにリンクが用意されている
図4 商品ページのトップにリンクが用意されている

現在「ブログで見る」は、パナソニックの冷蔵庫以外に、ホームベーカリーレンジスチーマーの3つの商品ページのトップからリンクが用意されています。

消費者の購入スタイルにどう対応するか

パナソニックのウェブサイト内には、実際にパナソニックの家電製品を使用しているユーザーの意見をまとめたみんなのレビューが存在します。ここでは製品の購入理由や使い勝手、購入後の生活の変化など、製品を購入しようとする消費者にとって、非常に役立つ情報が用意されています。

図5 家電製品のユーザーによる製品紹介コンテンツ『みんなのレビュー』
図5 家電製品のユーザーによる製品紹介コンテンツ『みんなのレビュー』

にもかかわらず、パナソニックがこのような仕組みを導入した理由の一つには、購入前に製品に関する情報をインターネットで積極的に収集し、総合的に購入判断を行う消費者が増えてきているという背景があるのではないでしょうか。

今やほとんどの家電製品が、実際の店舗で確認することなく、インターネット経由で購入できます。その場合、商品比較サイトの評判やBlogの書き込みなど、インターネット上のさまざまな情報が、消費者の購入意欲に与える影響は決して少なくないでしょう。

消費者にとって、メーカー側が提供する製品の情報が、購入への決定的な判断材料ではなくなりつつあるいま、パナソニックが開始したこの取り組みが、他の家電メーカーにどのような影響を与えていくのか注目していきたいと思います。

広がる“テキスト”の表現

Fonts.com Web Fonts

2010年5月4日にアメリカのMonotype Imagingが開始したウェブフォントサービス、⁠Fonts.com Web Fonts』のウェブサイトです。

図6 有名な書体も使用できるウェブフォントサービス『Fonts.com Web Fonts』
図6 有名な書体も使用できるウェブフォントサービス『Fonts.com Web Fonts』

ユーザー登録終了後、CSSのセレクタと使用するフォントを設定すると、JavaScriptのタグが発行されます。これをウェブサイトのHTMLに挿入することで、ウェブフォントを実現できるという仕組みです。現在はパブリックベータ版となっていますが、すでに2000以上の書体が用意されており、この中にはHelvetica(ヘルベチカ⁠⁠、Frutiger(フルティガー⁠⁠、Univers(ユニバース)といった人気の高い書体も含まれています。

図7 英語の書体中心のサービスだが、日本語も3書体が用意されている
図7 英語の書体中心のサービスだが、日本語も3書体が用意されている

さらに40以上の言語にも対応しており、日本語や中国語など、主なアジアの書体が用意されているのも特長のひとつです。2010年の後半には7000書体を用意した正式なサービスが開始されるとのことで、今から非常に楽しみです。

画像でないというメリット

すでに海外では、フォントの提供形式や料金体系などが異なる、個性的なウェブフォントサービスが開始されています(海外の事例については、山田晃輔さんによるフォントブログのエントリー海外のウェブフォントサービスまとめに詳しくまとめられているので、そちらを一読することをおすすめします⁠⁠。

私も試してみましたが、ユーザー登録からBlogへ導入するまでの手順がとても簡単なので驚きました。ただし、文書量の多い部分(本文など)に日本語のウェブフォントを適用すると、データの読み込みと表示に時間がかかることから、現時点では日本語の使用は見出しなどのワンポイントに限られるかもしれません。

とはいえ、今まで行われていた「見た目優先でのテキストから画像への変換」がなくなることで、ウェブサイトに用意された情報が、さまざまな形で活用できる存在へと生まれ変わるところに大きな可能性を感じています。

この『Fonts.com Web Fonts』のサービス発表直後に、同じウェブフォントサービスであるTypekitがiPhone/iPadへの対応を正式に発表するなど、各ウェブフォントサービスの間では激しい競争が行われています。そうした競争と努力によって生まれる新たな表現方法と、それらを上手に利用したウェブサイトの登場をこれから期待したいと思います。

というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。

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