いよいよ佳境に入ったサッカーのワールドカップに、蒸し暑さも忘れ、連日連夜熱狂している今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。
戦うのは、自分のアイコン
自分のTwitterのアイコンが、最大4608体の兵士となって戦うTwitterゲーム『DotWar』です。
図1 Twitterのアイコンを利用した対戦ゲーム
credit:sipo.jp
自分と相手のTwitter IDを入力すると、Twitterのアイコンが小さな兵士に変化して戦闘が始まります。特にアイコンが兵士へと変化して戦闘する様子は、見ているだけでも面白く、ついつい時間を忘れて対戦を続けてしまいます。勝利条件は“ 相手の陣地にある3つのクリスタルを破壊すること” で、勝敗の結果をTwitterですぐつぶやくこともできます。
図2 アイコンが兵士へと変化した後に始まる戦闘シーン
兵士の性格も色によって8種類、ゲームモードも3種類(用意されたステージをクリアしていく「Single」 、オートで対戦が可能な「VS」 、マウスによる操作が可能な「Manual」 )が用意されており、手軽に楽しむことも、じっくりと取り組むこともできる、奥深さを持っています。
図3 DotWarで勝つために、アイコンをカスタマイズすることも可能
また「Edit Icon(自分のアイコンを編集できるモード) 」も用意されており、勝利のために“ Twitterのアイコンを次々と変えている” ユーザーも出現するなど、中毒性の高いゲームとなっています。
参加への“壁”を取り除く
最近、話題となるウェブサイトやウェブサービスで多く用いられているのが、Twitter IDを利用してユーザーの参加を促す仕組みです。
これまでユーザーは、各種ウェブサービスごとに「サインイン」「 ログイン」といった手続きを行わなければなりませんでした。Twitter IDを利用したウェブサイトやウェブサービスでは、この手間が省けるため、ユーザーはTwitterのアカウントさえ持っていれば、簡単かつ気軽に参加できるという大きなメリットがあります。
また制作側にとっては、ユーザーが気軽に参加してくれる点はもちろん、Twitterのつぶやきを利用して、コンテンツを素早く拡散できるという点が非常に使いやすく、コンテンツに取り入れやすいところだと思います。
今後もTwitter IDを利用するコンテンツが、次々と登場してくるでしょう。とはいえ、まずは“ ユーザーの心を動かすこと” が大事です。ただ単にTwitter IDを利用するだけでなく、その仕組みを活かした、新しい体験を提供してくれるコンテンツに期待したいと思います。
伝説的名選手たちの共演
サッカー界の伝説的プレイヤー3人をフィーチャーした、ルイ・ヴィトンのキャンペーンサイト『An Encounter With Greatness(偉大な巡り合わせ) 』です。
図4 2010年のワールドカップ開催を記念したルイ・ヴィトンのキャンペーンサイト
“旅” をテーマにルイ・ヴィトンが続けている「コア・ヴァリュー」広告キャンペーンのウェブサイトですが、今回は2010年のワールドカップ開催を記念して、元ブラジル代表のペレ、元アルゼンチン代表のディエゴ・マラドーナ、元フランス代表のジネディーヌ・ジダンをフィーチャーしています。
図5 「 The Three Greats」では伝説的プレイヤーにインタビューできる
ウェブサイトでは、ペレとジダンがテーブルフットボールで対戦するという動画「An Epic Game(叙事詩的なゲーム) 」 、ユーザーが3人にインタビューできる「The Three Greats(3人のサッカーの神様) 」 、Facebookのプロフィール写真にペレかマラドーナのサインがもらえる「Get an Autograph(サインをもらう) 」の3つのコンテンツを中心に構成されています。
世界的イベントとウェブサイトの関係
2010年6月11日に始まった世界的なスポーツイベントであるサッカーのワールドカップに合わせて始まった、大会の公式スポンサー(adidas, Coca-Cola, Emirates, Hyundai, Sony, Visa, Budweiser, Castrol, Continental Airlines, McDonald's, MTN, Satyam)によるプロモーション活動を目にする機会が最近増えてきました。
しかし、「 この機会を逃すものか!」と言わんばかりの非公式スポンサーのプロモーション活動や、キャンペーンサイトも負けていません。今回紹介したルイ・ヴィトンも、2010年のワールドカップ公式スポンサーではありません。また、契約しているスター選手が多数登場する動画『WRITE THE FUTURE 』が話題となったNikeのように、公式スポンサーと同等以上の大規模なキャンペーンを展開している企業もあります。
4年に一度開催されるワールドカップという世界的な“ お祭り” は、企業にとっても非常に重要なイベントとなっているようです。そんな企業のさまざまな活動を、サッカーに興味のある人もない人も、一緒に楽しんでみてはいかがでしょうか。
より深く伝えるための“変体”
京都・東京を拠点とするウェブプロダクション、株式会社ワン・トゥー・テン・デザインの『CREATIVE IS ENDLESS BATTLE』です。
図6 株式会社のコーポレートサイトとは思えないタイトル画面
credit:1-10design
一見、3Dの格闘ゲームかと思わせるウェブサイトですが、実は正式なコーポレートサイトであるという表現にまず驚かされます。
図7 3Dでありながら、キャラクターなどの動きは実にスムーズ
さらに、マウスのドラッグとクリックを使用した簡単な操作方法と、3D表現でありながら軽快な動作を実現しているゲームの内容も実に見事です。また、モーションキャプチャ(人物の動きをデジタルデータとして記録する技術)と呼ばれる技術が使用されていることで、キャラクターの動作が違和感のないものとなっています。
図8 各ステージのクリア後は、会社の創作理念が表示される
各ステージに登場する敵を倒した後は、会社の創作理念が画面に表示されます。細部までこだわりの感じられるこのウェブサイトの制作過程は、会社のポートフォリオ で詳しく紹介されていますので、ぜひ確認してみてください。
ユーザーに伝わる形とは
コーポレートサイトでは、企業情報の一つとして、さまざまな情報が公開されています。CSR(社会に対する責任)やビジョン、企業理念や経営方針、コンプライアンス(法規や倫理の順守)やリスクマネジメント……。ただし、そのコンテンツが実際にウェブサイトを訪れたユーザーに見てもらえているかは別の問題です。
今回、有名企業のウェブサイトをいくつか訪れてみましたが、ウェブサイト内のコンテンツの一つとして、あるいはスペシャルサイトという形で、多くの企業情報が用意されています。しかし、その用意されたコンテンツが、味気なく、ユーザーを引きつけにくい形になっているところが多いのも事実です。
もちろん、『 CREATIVE IS ENDLESS BATTLE』のように、どの企業もこのような形で表現することは難しいと思います。とはいえ、ユーザーがその企業に強い興味を持っている場合を除けば、企業が用意したコンテンツが、ユーザーへと伝わる形となって存在しているのか、もう一度考え直さなければならない時代が来ているのではないでしょうか。
企業が発信するさまざまなコンテンツが、よりユーザーに伝わりやすくなるように、どのような形へと変化していくのか、今後も注目していきたいと思います。
というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。