昼夜の寒暖差がいよいよ大きくなり、毎日の服装にも気を使わねばならなくなってきた今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。
ここだけでわかる、剣道の今
財団法人全日本剣道連盟が活用しているソーシャルメディアをまとめたポータルサイト、『 全日本剣道連盟 | 公式ソーシャルメディアリンク集』です。
図1 全日本剣道連盟のソーシャルメディアが一つにまとめられている
credit:1-10design, Inc.
全日本剣道連盟が運営・管理を行っている6つのソーシャルメディア(写真共有サービスの「Flickr」 、主催大会の情報を伝える「Blog」 、大会映像を配信する「YouTube公式チャンネル」 、最新情報を短い文章で発信する「twitter」 、Twitterと連動して写真を掲載する「twitpic」 、各種大会をインターネット中継する「ustream」 )の情報を一つのページにまとめています。
図2 全日本剣道連盟が活用している6つのソーシャルメディア
今まで拡散していた情報の入り口をまとめ、各ソーシャルメディアの最新情報を閲覧できるようにしたことで、剣道に関する情報が一度に入手できます。またiPadなどの非Flashデバイスにも対応するなど、発信する情報が可能な限り広い範囲へと届くように気配りしている点にも注目したいウェブサイトです。
情報のかたちを変えるソーシャルメディア
全日本剣道連盟は、数年前からインターネットを積極的に活用しています。2008年に「YouTube公式チャンネル」と「全日本剣道選手権大会特設サイト」を開設したのを始まりとして、2009年に全日本剣道選手権大会を実況するために「Twitter」と「Twitpic」を始め、さらに独自コンテンツとして、「 ハイスピードカメラによるスローモーション映像の撮影」( 動画はYouTubeへアップロード)を行っています。
今年は11月3日に行われた第58回全日本剣道選手権大会の全試合がUstreamで中継されましたが、テレビ中継では決して扱われない試合(例:一回戦など)が放送されるなど、マスメディアの扱えない情報や、違う角度からの取材による情報発信が積極的に行われています。
一口に“ 剣道に関する情報” といっても、欲しがる情報のレベルは人それぞれです。ソーシャルメディアを活用して、文字や写真、動画など、情報のかたちを変えることで、今まで情報を受け取れなかった人にも情報を届けられます。また情報の出所が増えることで、ユーザー自身が欲しい情報を選択し、組み合わせながら、さまざまな楽しみ方ができるようにもなります。
「ユーザーが求める、さまざまな情報のレベルに対応できる」という点で、情報発信側がソーシャルメディアをどんどん活用していく事例が増えるでしょう。その先駆者として、情報を求めるユーザーへと自らが近づいている全日本剣道連盟の活動がどんな広がりを見せていくのか、注目していきたいと思います。
あなたはクマを撃ちますか?
フランスの筆記具メーカーBICの修正用品ブランド「Tipp-Ex」のプロモーション、『 YouTube - tippexperience's Channel』です。
図3 YouTubeを利用した修正用品「Tipp-Ex」のプロモーション
credit:BUZZMAN 、grouek 、Elegangz
プロモーションは、ハンターが自分のテントを荒らしているクマを見つけて銃で撃とうとするYouTubeの動画『NSFW. A hunter shoots a bear! 』からスタート。動画の最後には「SHOOT THE BEAR(クマを撃つ) 」 「 DONT DON'T SHOOT THE BEAR(クマを撃たない) 」という2つの選択肢が表示されます。
図4 「 Tipp-Ex」修正テープで動画のタイトルが修正される
選択肢は『YouTube - tippexperience's Channel』へのリンクとなっており、結局、クマを撃てないハンターが動画の横にある「Tipp-Ex」の修正テープを手に取り、動画のタイトルが修正され、ユーザーに単語を入力することを促します。
図5 ユーザーの入力した単語に関連する動画が再生される
ユーザーが単語(例:sings、jumps、dances、eats、drinksなど)を入力すると、単語に関連したクマとハンターの動画が再生されます。50パターン以上の動画が用意されていますので、いろいろな単語を入力して楽しんでみてください。
印象を残す仕組みを作る
過去にもYouTubeの動画を利用したプロモーションはありましたが、ゲームソフト『Wario Land: Shake It! 』や映画『The Expendables 』のように、動画を再生すると画面に変化が起き、ユーザーを驚かせるというものが主流でした。
『tippexperience's Channel』では、動画だけを見せるのではなく、ユーザーに具体的な単語を入力させていますが、この仕組みがプロモーションの肝となっています。
ユーザーは“ 入力した単語に関連した動画の再生を期待している” ため、自然と動画の視聴に集中し、ユーザーの印象に残りやすくなります。さらに「他の単語ではどうなるか」と試し始めるために、再生回数が増え、結果的にコンテンツの評判が広がる効果が高くなります。
ユーザーが強い興味を持ちながら動画を視聴する仕組みをどう作るのか。また、その仕組みがユーザーにどんな体験を提供してくれるのか。YouTubeを使ったプロモーションの今後の進化に期待したいと思います。
写真を使ったコミュニケーションの場
わずか1週間で10万人のユーザーを獲得 した、写真共有サービス「instagr.am」のウェブサイトです。
図6 iPhoneアプリを使った写真共有サービス「instagr.am」
「instagr.am」では、ウェブサイトからダウンロードしたiPhoneアプリ(無料)を使って、撮影した写真を用意されたトイカメラ風のフィルタ(11種類)で加工し、投稿することで写真を共有できます。
図7 「 instagr.am」のiPhoneアプリ画面(左から「Feed」「 Popular」「 Share(フィルタで写真加工中) 」
簡易的なSNS機能も備わっており、「 Feed」では自分がフォローしているユーザーの写真が次々と更新されていきます。気に入った写真があれば、「 like」ボタンを押すことで投稿者に通知できます。またコメントも可能です。多数のユーザーが気に入った写真を集めた「Popular」では、自分の好きな写真を投稿するユーザーも探せます。
図8 投稿した写真をさまざまな形で共有できる(例:送信されたURLを訪れた場合)
さらにメールで写真のURLの送信や、Flickr、tumblr、Twitter、Facebook、foursquareなどの各サービスに同時に写真を投稿することも可能です。
ユーザーを動かす“反応”
有名な写真共有サービス(例:FlickrやPicasaなど)がいくつもあるなかで、なぜ「instagr.am」は急速にユーザーを増やしているのでしょうか。その理由はユーザーが投稿した写真に対しての“ 反応” に隠されています。
実は筆者も写真共有サービスの「Flickr」を使っています。しかし、共有した写真に対する反応の少なさや、誰が自分の写真を見ているのかがよくわからないことから、写真を投稿するモチベーションの維持が非常に難しく、現在では“ 撮影した写真を保存(バックアップ)する場所” となっています。
「instagr.am」には、自分の投稿した写真に対して、フォロワーからの「like」ボタンによる反応やコメントが頻繁に発生するため、自然とモチベーションが上がり、写真を投稿する回数も増えていきます。この機会に、今まで撮りためていた写真を、反応を求めて「instagr.am」に再度アップロードしようと考えている人も多いのではないでしょうか。
Twitterが“ 文字” によるコミュニケーションの場とするならば、「 instagr.am」は“ 写真” によるコミュニケーションの場を提供しています。“ 反応” によってユーザーを動かす仕掛けを、皆さんもぜひ体験してみてください。
というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。