朝晩の冷え込みの厳しさに震えながらも、っ色づく紅葉の美しさに寒さを忘れそうになった今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。
もっとユーザーの近くへ
無印良品がリリースした3つのiPad/iPhoneアプリを紹介したウェブサイト、『 無印良品iPad/iPhoneアプリ』です。
図1 無印良品がリリースしたiPad/iPhoneアプリを紹介している
今回リリースされたアプリは、「 MUJI to GO(「 世界時計」「 天気」などの移動やビジネスに役立つ情報ツール) 」 、「 MUJI NOTEBOOK(手書きによるメモやスケッチが可能なノート) 」 、「 MUJI CALENDAR(Googleカレンダーと同期できるスケジュール帳) 」の3種類です。
一見して「無印良品」のアプリとわかるデザインの統一感が見事です。また、詳しい使い方や機能を紹介した動画も用意されています。
移動やビジネスに役立つ情報を提供する「MUJI to GO」
メモやスケッチが可能なノート「MUJI NOTEBOOK」
スケジュール帳の「MUJI CALENDAR」
なぜアプリを提供するのか
提供された3つのアプリは、情報ツール、ノート、スケジュール帳という、基本的に個人的な使用が前提となっています。そのため、ユーザーとの距離をアプリで縮め、そのアプリの中でユーザーと向かい合える機会を作ることで、無意識のうちにユーザーの中に企業イメージを構築できるでしょう。
もちろん、そのためにはデザインやインターフェース、使いやすさなどの“ アプリの質” が、大きく影響してきます。今回の無印良品の事例は、「 企業がアプリをリリースした」というイメージの向上や話題だけでなく、App Storeのランキング1位を獲得するなど、ユーザーからの評価も高いようです。
扱っている商品と同じように、さりげなくユーザーの生活の中になじむようなアプリを提供することで、より近い位置でユーザーとのコミュニケーションを図ろうとするこの「無印良品」の試み。今後アプリを使った企業のプロモーションが増えてくるのか、注目していきたいと思います。
検索も見た目が大事
2010年の「TechCrunch Disrupt」で優勝 した、ビジュアル情報検索サービス「Qwiki」のウェブサイトです。
図2 ビジュアル中心の検索結果を作成する「Qwiki」
Qwikiは、キーワードを検索すると、Wikipediaの内容を中心に関連する画像や動画、テキストやソーシャルメディアなど、情報を自動的にまとめて音声付きの解説動画を作成してくれるというサービスです。
図3 Qwikiの検索結果は、1本の動画としてまとめられる
作成された動画に登場するさまざまなコンテンツは、クリックすることでより詳しい内容を確認できます。画面下には検索したキーワードと関係する項目が並び、つながりのある情報を次々と閲覧できます。
図4 検索結果の再生後は、関連項目へのリンクが並ぶ
今までの検索結果といえば文字中心のものがほとんどでしたが、動画と音声を上手に利用したQwikiの仕組みは、非常に新鮮な感じがします。現在はまだアルファ版(招待制)ですが、今から本格的な運用が待ち遠しい検索サービスです。
情報の増加にどう対応するか
ソーシャルメディアの利用が一般的になるに従い、ユーザーが受け取る情報量は爆発的に増加しています。そのため、日常生活の中で「欲しい情報を吸収し、消化すること」が非常に難しくなってきています。
そんな“ 情報の過多” ともいえる状態の中では、ユーザー自身も「本当に必要な情報だけが欲しい」と思うのが自然ではないでしょうか。このQwikiの仕組みも、そうしたユーザーに対する、検索サイトとしての一つの回答だと思います。
もちろん“ 人力によるフィルター” を使い、情報をわかりやすく整理・編集したウェブサイトなどから、有用な情報を得る方法もまだまだ続いていくでしょう。
日常の中で多量の情報を浴びているユーザーに向けて、満足する情報をどのような形で提示していくのか。これからソーシャルメディアやウェブサイトなどで、どんな試みが生まれてくるのか興味深いところです。
今、そこにいるような生中継
以前からインターネットを使った実験的な試みに積極的な音楽家、坂本龍一さんの2010年北米コンサートツアー「Ryuichi Sakamoto - Playing the Piano North America Tour 2010」のの模様を生中継したUstreamチャンネル『skmt09 on USTREAM』です。
図5 坂本龍一さんの北米ツアーの様子がUstreamで生中継された
北米10か所で開催された公演のうち、4会場(シアトル、バンクーバー、サンフランシスコ、ロサンゼルス)の様子が、動画共有サービスのUstreamを使って、コンサート会場から生中継されました。
図6 最終公演の視聴者は10,000人を超えた
生中継は主に日本時間でお昼という時間帯でしたが、11月6日の最終公演の中継では、土曜日の昼間ということもあり、10,000人以上の視聴者を獲得し、Twitterのタイムライン上でもハッシュタグ「#skmtUST」を含んだ多くのツイートが並びました。
“課金”は動画サービスの未来か
無料で行われた生中継とはいえ、公演の映像と音声は最後まで途切れることもなく、特に音質の良さが際立っていたため、Twitterでは「実際にコンサートの会場にいるかのような臨場感」だと評価するツイートが多く見受けられました。
中には、お金の代わりに坂本さんが出演しているCMの商品や、公演後にiTunes Music Storeで配信される音源の購入を宣言するなど、「 お金を払ってもよい」という評価をするユーザーも登場しました。事実、この生中継は「ウェブサイト上に課金システムがあれば、このままビジネスとして成り立つのでは」と感じさせる内容でした。
残念ながら、現時点でUstreamには放送中の動画に課金する仕組みが備わっていません。しかし、正式な課金システムが整備されれば、動画を放送する側と視聴する側、双方にとって非常に魅力的な放送プラットフォームとなるでしょう。
Ustreamは先日、Open Pay Per View(放送する側が視聴料金を設定し、それを見た視聴者がPayPalを通じて料金を支払うという有料視聴課金機能)を始めることを発表 しました。早ければ年内にも日本で利用できる可能性 もあり、動画配信が課金によって本格的なビジネスとして成立していくのかどうか、今後の動向に注目していきたいところです。
というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。