そろそろ年末年始の楽しい予定を考えようかと準備している今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。
必要な要素、教えます
Swedish Armed Forces(スウェーデン軍)で働くために必要な要素を持っているか、簡単なテストをすることで評価してくれるウェブサイトの最新バージョン、『Swedish Armed Forces Recruit.』です(英語版も用意されています)。
今回の『Swedish Armed Forces Recruit.』では、ウェブカメラを利用したテストを行います。ユーザーは体を動かして、画面に表示されるアイテムに触れながら、簡単なテストを進めていきます。
テストを終了すると、4つの能力(論理性、調整力、マルチタスク能力、機動性)についての結果が表示されます。Facebookとも連動しており、友人たちをこのテストに誘ったり、自分の結果を公開したりできます。
問われるウェブサイト公開後の管理
プロモーションサイトやキャンペーンサイトといえば、その時々の流行や話題を巧みに題材に取り入れ、公開時に最大の効果を上げられるように制作されることが多いと思います。そして、公開期間が終了すると、インターネットの世界から消えていくものがほとんどです。
その結果、以前のキャンペーンサイトなどで使われたドメイン名を、まったく関係のない他者が取得・使用している問題(『放棄ドメイン名によるブランド棄損問題』や『あのキャンペーンサイトは今?』を参照)が出てきており、ドメイン名の管理について、改めて考え直す時期にきています。
今回で5度目となるSwedish Armed Forcesのキャンペーンサイトは、2008年の開始当初から今回まで、表現方法の違いこそあれ、「簡単なテスト(ゲーム)で軍人に必要な能力を判断する」というコンセプトが貫かれているだけでなく、現在でも、過去に公開されたすべてのウェブサイト(1、2、3、4)が楽しめます。
さまざまな理由があるにせよ、今後は公開されるウェブサイトの管理を、期間を含めて、誰がどう行うのかが課題となるでしょう。その動きのなかでプロモーションサイトやキャンペーンサイトがどう変わっていくのか、じっくり見ていきたいと思います。
「見えるもの」へと変化したツイート
2010年11月1日にスタートした、世界中で発信されたTwitterのツイートを視覚化した『a world of tweets』です。
Twitter Streaming APIとYahoo! Placemakerを利用して、位置情報付きツイートを世界地図上に表示しています(frog designのBlogでは、制作に関する技術や詳しい経緯が掲載されていますので、興味のある方は読んでみてください)。
地図上では、ツイートが雨のしずくのようなアニメーションで表現されています。画面の左側には、表示を変更する項目があり、ツイートの回数が多い地域が「Heatmap」では赤く、「Smoky Clouds」では黒く表示されます。また3Dメガネ用の「3D stereo view」も用意されています。
多様化するTwitterの使われ方
『a world of tweets』と同じく、2010年11月1日から始まったエスセス製薬による『カゼミル』では、ツイートから「カゼ」などのキーワードを収集し、日本全国の風邪の流行状況を視覚化しています。
「ジオタグ」を利用して、ツイートの回数と位置を地図上に表現した『a world of tweets』。そして「キーワード」を利用して、今の風邪の流行状況を表現した『カゼミル』。どちらの事例も、Twitterのツイートに含まれる「直接見えないもの」を「見えるもの」へと変化させています。
ユーザーの拡大とともに、“コミュニケーションツール”、“情報収集ツール”、そして今回のように“今を表現するデータ元”として、Twitterの使われかたも多種多様化してきました。さらなるユーザー数の拡大によって、Twitterがどう使われ、そこからどんなウェブサイトが誕生してくるのか、今後を楽しみにしたいと思います。
よみがえる絶版マンガ
11月26日、漫画家の赤松健さんが代表を務める株式会社Jコミによって公開された、『Jコミ』のウェブサイトです。
「Jコミ」は、絶版となった漫画の作者から許諾を得て作成した「広告入り漫画ファイル」を無料配信し、インターネット上で共有しながら、広告から得た収益を作者に還元するという仕組みです。現在、赤松健さんの「ラブひな」(全14巻)が無料でダウンロードできます。
ウェブサイトから配信される作品は、2種類(「高解像度版」と「低解像度版」)のPDFファイルとしてダウンロードが可能です。またダウンロードすることなく、直接ブラウザから作品の閲覧が可能な「コミックビューワー」も用意されています。
公開初日には、作品のダウンロードが約30万件、コミックビューワーの閲覧数が約25,000件を記録し、ました。『Jコミ』は現在ベータテストの段階ですが、作品のダウンロード数や広告のクリック率などを調べ、2011年の正式公開を目指して準備しているとのことです。
電子書籍のコンテンツを増やすには
「Amazon Kindle」や「Sony Reader」など、日本語に対応したリーダーがそろい始めたことで活気を呈する電子書籍市場ですが、ユーザーの立場から見れば、それらを生かせる電子書籍サービスの質が最も重要なポイントではないでしょうか。このため最近では、電子書籍サービスにおける使いやすさやユーザーの利便性、提供されるコンテンツに注目が集まっています。
そんな中で「作家」という立場からは、作品を電子書籍化することで、作者にメリットが得られる仕組み作りが試行錯誤されています。この『Jコミ』も、読者に無料で絶版作品を楽しんでもらいながら、漫画の「作者」には、挿入された広告の利益が支払われるという新しいシステムの構築を目指しています。
また作家の村上龍さんが電子書籍の企画制作・出版を行う新会社「G2010」を設立したり、漫画家の佐藤秀峰さんが『漫画 on Web』で自身の作品を期間限定で無料公開したりするなど、ジャンルを問わず、新たな試みが次々と誕生しています。
電子書籍サービスを展開する側にとって、「優良なコンテンツをどうやって獲得するのか」は、今後のサービスの生死を決める課題の一つとなるでしょう。電子書籍が充実していくうえで必要不可欠な“コンテンツを生み出す側が満足できる新たな仕組み作り”で、今後どのような動きが出てくるのか目が離せません。
というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。