いま、見ておきたいウェブサイト

第52回Google Weddings、Build Robocop in Detroit!、UNIQLOOKS

花粉の大襲来に備えて空気清浄機を購入しようと調べていたら、各メーカーの製品に詳しくなりすぎ、購入せずとも満足し始めている今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。

シンプルな結婚式、お手伝いします

Simplify Wedding Planning with Google for Weddings

Googleが結婚式までのステップを簡素化するために立ち上げた新しいウェブサービス、⁠Simplify Wedding Planning with Google for Weddings』です。

図1 ⁠Simplify Wedding Planning with Google for Weddings』では結婚式をよりシンプルにすることを目指している
図1 『Simplify Wedding Planning with Google for Weddings』では結婚式をよりシンプルにすることを目指している

結婚式の日時や新郎新婦のプロフィールなどを掲載したウェブサイトの作成(Google Sitesを使用⁠⁠、写真の加工や招待状の作成(Picnikを使用⁠⁠、招待客リストや座席表、結婚式の料理や予算の管理(Google Docsを使用⁠⁠、披露宴などの写真の保管と共有(Picasaを使用)など、Googleが無料で提供している各種ウェブサービスで結婚するカップルの時間を節約し、シンプルな結婚式を挙げる手助けしようというものです。

図2 Googleの各種ウェブサービスを使うことで、結婚準備に必要な時間を節約する
図2 Googleの各種ウェブサービスを使うことで、結婚準備に必要な時間を節約する

ウエディングデザイナーであるMichelle Ragoとも協力し、ウェブサイト内にシンプルな結婚式を行うためのアドバイスも用意されたサービスとなっています。

Googleはユーザーの日常に入り込めるか

ブラウザのChromeやMap、CalendarにGmail、そして検索…インターネットを利用する上で、Googleの各種ウェブサービスは、もはや無くてはならないものとなっています。特に"仕事"の場面では、これほど便利で連携のとれた強力なサービスはないと言っても過言ではないでしょう。

ただし、仕事から離れた場合、Googleの提供しているサービスが"誰にとっても最適なもの"とは限りません。インターネット上には多種多様なウェブサービスが存在していますし、場合によっては、インターネットと接続しない従来のアプリケーションだけで用事が済むことも珍しくありません。そう考えると、Googleとユーザーの日常との結びつきは決して強いものとは言えないでしょう。

数年前、GoogleはGoogle Healthというサービスを始めました。自分の健康に関する情報を管理することで健康維持に役立てようとするものですが、今のところ他のサービスのように成功しているとは言えない状態です。

今回は"結婚"をテーマとしたサービスを開始するにあたり、新たにサービスを開発するのではなく、実績ある自社の複数のサービスを"ひとまとめ"にして提供している点から、Googleの堅実さと本気が感じられます。ビジネスとはまた異なる変化を持つ人々の生活に合わせ、どんなサービスを今後提供してくるのか。これからのGoogleの動きに注目したいと思います。

デトロイトにも、観光大使を!

Build Robocop in Detroit!

映画『Robocop』の主人公の像を建てることを目的とした、募金活動への参加を呼びかけるウェブサイト『Build Robocop in Detroit!』です。

図3 デトロイトにRobocopの像を建立しようと呼びかける『Build Robocop in Detroit!』
図3 デトロイトにRobocopの像を建立しようと呼びかける『Build Robocop in Detroit!』
credit:Alan Languirand

ウェブサイトにある「You can help!」ボタンをクリックすると、資金調達プラットフォームのKickstarterに開設されているプロジェクトDetroit Needs A Statue of Robocop!(デトロイトにはロボコップの像が必要だ!)へと移動します。

図4 Kickstarterの「Detroit Needs A Statue of Robocop!」プロジェクト
図4 Kickstarterの「Detroit Needs A Statue of Robocop!」プロジェクト

「Detroit Needs A Statue of Robocop!」では、等身大のRobocopの像をロボット製作の第一人者であるFred Bartonに依頼し、ミシガン中央駅前のRoosevelt Parkに設置することを予定しています。すでに2,000人以上の支持者を獲得し、目標額である5万ドル(約400万円)も達成しています。

ソーシャルメディアがすべてを担う

今年のSuper Bowlでは、自動車メーカーのクライスラーによるEminem(デトロイト出身)を起用したCMImported From Detroitが放送され、話題となりました。近年、デトロイトは自動車産業の不振による人口の減少だけでなく、失業率や犯罪発生率の高い都市として有名になっています。

そんな状況の中で生まれたこのプロジェクトは、あるTwitterのユーザーが、デトロイト市長にRobocopの像があれば、強力な観光大使になるのではと提案したことから始まっています。

市長は『Robocop』の像を建てる予定はないと即答しますが、流れは途切れず、Build a Statue of Robocop in DetroitというFacebookページが開設され、さらに上記の『Build Robocop in Detroit!⁠⁠、Kickstarterのプロジェクトへと広がっていきました。

一人が発したTwitterの意見から、議論が始まり、Kickstarterの活動が成功するまで、すべてがソーシャルメディアによって実現したこの事例は、個人の情報発信による影響力の広がりと新しい可能性を見せてくれたと思います。自動車産業で隆盛を極めた都市、デトロイトが、再び復興への歩みをどのような形で進めていくのか。小さなこのプロジェクトの経緯を見守っていきたいと思います。

ファッションは、世界をつなぐ

UNIQLOOKS

UNIQLOの各種アイテムを着こなす世界中の人々様子を、リアルタイムで閲覧できるファッションコミュニティ『UNIQLOOKS』です。

図5 UNIQLOが開始したファッションコミュニティ『UNIQLOOKS』
図5 UNIQLOが開始したファッションコミュニティ『UNIQLOOKS』
credit:Projector inc.tha ltd.FREERISES2 Factory Inc.

一見すると、ストリートスナップサイト(街頭の若者たちの服装や着こなしを撮影して紹介するウェブサイト)かと思わせる内容ですが、ウェブサイトに登場する写真は、UNIQLOの各種アイテムを着こなしている、ユーザー自身が投稿した写真で構成されています。⁠UNIQLOOKS』では、UNIQLOのアイテムをひとつでも着用していれば、誰でも写真を投稿できます。

図6 UNIQLOのアイテムを着こなしている写真で構成されている
図6 UNIQLOのアイテムを着こなしている写真で構成されている

SNSのFacebook(中国の場合は人人網)とも連動しており、ウェブサイト上で行った「Like」やコメントがFacebookに反映される仕組みとなっています。アカウントを作成すれば、⁠MY LOOKS」に気に入った写真を保存したり、コメントを記入したりできます。投稿された写真はユーザーの「Like」の数などで順位が付けられ、順位の高い写真はトップページに大きく表示される仕組みです。写真の中で紹介されているUNIQLOの各種アイテムは、UNIQLOのオンラインストアですぐに購入できます。

図7 アカウントを作成すれば、気に入った写真も保存できる
図7 アカウントを作成すれば、気に入った写真も保存できる

より手軽に写真の投稿・閲覧をできるようiPhone用アプリを公開(3月中旬)するほか、⁠UNIQLOOKS AWARD」と呼ばれるアワードの開催など、これからもさまざまな企画が進行しているとのことで、今後の展開が非常に楽しみなウェブサイトです。

"数"よりも"深さ"が重要

アメリカ・ハーバード大学の学生専用サービスとして誕生したFacebookは、"実名での登録が基本"となっているSNSです。このため日本でも、2月初旬に実名で登録していないユーザーのアカウントが大量に停止されるという出来事が起きています。

『UNIQLOOKS』では、この実名制を採用しているFacebookを利用しています。⁠UNIQLOOKS』の記者説明会の中で、UNIQLOの柳井正会長兼社長は匿名性というものは信用できない。個人が責任を持つことによって情報は信用できるものになると語っており、本当に親しい人間どうしの、信頼できるコミュニケーションの力を重要視しているのがわかります。

Facebookを利用するメリットは、UNIQLOという企業にとっても大きいでしょう。世界で最もユーザー数の多いSNSということもありますが、アカウントを作成すれば、Facebook内にあるユーザーの基本データ(名前や生年月日、プロフィールや友達のリストなど)へ自由にアクセスが可能です。ユーザーの情報収集や行動データなどを分析することで、より有効かつ効果的なマーケティング活動が可能となります。

今回、日本国内で圧倒的なユーザー数を誇るmixiではなく、実名制を採用したFacebookを選択してウェブサイトへと組み込んできたことは、企業側がユーザーとつながる"数"よりも、ユーザーとの関係の"深さ"により重みをおく方向へとかじを切ったといえるでしょう。UNIQLOが始めたこのプロジェクトが、国内企業のプロモーション活動にどう影響していくのか、Facebookを使った今年の各種プロモーションに注目していきたいところです。

というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。

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