いま、見ておきたいウェブサイト

第54回東日本大震災 - 自動車・通行実績情報マップ、SETSUDENER、SAVEJAPAN! PROJECT

2011年3月11日に発生した「東北地方太平洋沖地震」において被災された皆様と、そのご家族の方々に心よりお見舞いを申し上げます。また現在、救援活動に尽力されている皆様に、心より敬意を表するとともに、被災地の一日も早い復興をお祈り申し上げます。

今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。

通れる道、教えます

東日本大震災 - 自動車・通行実績情報マップ

東北地方太平洋沖地震の被災地域内における、通行が可能な道路の情報提供を目的とした『東日本大震災 - 自動車・通行実績情報マップ』です。

図1 被災地内の通行可能な道路を表示する『自動車・通行実績情報マップ』
図1 被災地内の通行可能な道路を表示する『自動車・通行実績情報マップ』

この『自動車・通行実績情報マップ』は、Hondaの「インターナビ・プレミアムクラブ⁠⁠、パイオニア株式会社「スマートループ⁠⁠、トヨタ自動車株式会社の「G-BOOK⁠⁠、日産自動車株式会社の「カーウイングス」から提供された通行実績情報のデータを元に作成されています。

図2 24時間以内に車が通行した道路が青く塗りつぶされる
図2 24時間以内に車が通行した道路が青く塗りつぶされる

前日の0時から24時の間に車が通行したデータを元に、Googleマップ上の道路が青く塗りつぶされます。この塗りつぶされた青い道路が、現在も通行できる可能性の高い道路であることを示しています。

Googleが見せた"懐の広さ"と"底力"

この『東日本大震災 - 自動車・通行実績情報マップ』以外にも、東北地方太平洋沖地震の発生直後から、Googleは被災地に向けた有効なサービスを素早く、次々と提供しています。そのうちの一つがGoogle Person Finderです。

図3 ⁠Google Person Finder』は企業や関係機関からの協力を受けている
図3 『Google Person Finder』は企業や関係機関からの協力を受けている

このサービスは、ユーザーの投稿や携帯電話各社による災害用伝言板との連携、警察庁やマスコミからのデータ提供を受けることで、約45万件もの消息情報が登録されている非常に強力なウェブサービスですが、何よりも"地震発生のわずか2時間後に立ち上がった"というスピード感に驚かされます。

現在も、Google社員は有名な「20%ルール(勤務時間の20%を自分の気に入ったプロジェクトに使って良い⁠⁠」を使って、地震で被災した人々を支援するなど、自らの社風を最大限に活用した社会貢献を行っています。

国内観測史上最大規模の災害の中で、より良いサービスのための素早い連携と、より強力なサービスへと仕上げていくひたむきな姿勢に、改めてGoogleという企業の"懐の広さ"と"底力"を誰もが感じた出来事だったのではないでしょうか。

みなさん、節電の時間ですよ

SETSUDENER

Twitterのアイコンを使って、消費電力のピーク時に節電を思い出させるウェブサービス、⁠SETSUDENER(セツデナー⁠⁠」です。

図4 節電リマインダサービスの「SETSUDENER」
図4 節電リマインダサービスの「SETSUDENER」
credit:清水 幹太

『SETSUDENER』に登録すると、東京電力の事業地域内で電力消費のピークとなる午後5時から8時頃までの間、Twitterのアイコンが節電モード(暗くなる)になります。

図5 ⁠SETSUDENER」を利用しているTwitterユーザーのアイコンが暗くなる
図5 「SETSUDENER」を利用しているTwitterユーザーのアイコンが暗くなる

Twitterのアイコンが暗くなることで、節電する時間帯であることをユーザーに意識させるサービスで、消費電力のピーク時間を過ぎると、アイコンは元に戻る仕組みとなっています。

効果を最大化する"持続性"

「SETSUDENER」はTwitterを利用して節電を意識させていますが、これ以外にも特設サイトYahoo! JAPANマイクロソフトなど)や、節電ポスター⁠ボランティアによる節電ポスターを公開している)など、節電方法を案内する多数のウェブサイトが公開されています。

東京電力の計画停電は長期にわたることが予想されるため、今後も企業や家庭における"持続的な節電"が非常に重要となってきます。とはいえ、最大の懸念は、始めは「節電しなければ」と意気込んだ人たちが、次第に関心をなくし、節電が続かなくなることでしょう。

そんな中、インターネット上では、節電に関する情報をまとめたWikiや、リアルタイムで停電の状況が確認できるツールなどが用意された、被災地への電力関係支援を行うためのプロジェクト、ヤシマ作戦 - 特務機関NERVが注目を集めています。

図6 節電運動を呼びかけている『ヤシマ作戦 - 特務機関NERV』
図6 節電運動を呼びかけている『ヤシマ作戦 - 特務機関NERV』

節電することを「ヤシマ作戦(アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」で兵器を稼働させる電力を集めるため日本中が停電状態となる作戦の名前⁠⁠」と名付けて、無理なく楽しみながら節電を行おうとするこの動きは、非常に面白いと思います。各個人が"我慢する"のではなく、楽しみながら"社会に貢献できる"と考えられる工夫をすることで、"継続性"を生み出す仕組みは、今後もさまざまなウェブサイトで応用されそうな気がします。

正確な情報が、被災地を救う

SAVEJAPAN! PROJECT

東北地方太平洋沖地震によって被害を受けた被災地の人々を支援するために設立されたプロジェクト、⁠SAVEJAPAN! PROJECT」のウェブサイトです。

図7 被災地の情報を整理・集約して発信する『SAVEJAPAN! PROJECT』
図7 被災地の情報を整理・集約して発信する『SAVEJAPAN! PROJECT』
credit:SIMONE INC.

「SAVEJAPAN! PROJECT」は、Twitter上で発信されている震災に関する情報を、都道府県別に設定されたハッシュタグ(例:#save_miyagiなど)を使って集め、正確な情報をやり取りできることを目的としています。

ウェブサイトでは、整理された都道府県ごとの情報が表示されるほか、災害に関する情報(災害掲示板サービス、災害地の避難所情報や電気・ガス・水道などのライフラインや電車・バスの運行状況など)へのリンクや、Blogなどで使用可能なバナーが用意されています。

被災地で求められる情報とは

死者・行方不明者の数や、被災地域での救助の様子など、現在、多くの人々が目にするマスメディアの報道のほとんどが、被災していない地域に向けて発信された、被災地の状況を伝えるための情報です。被災した地域や避難所で生活している人たちにとって、これらの情報の優先順位は非常に低いでしょう。

では、今、被災者が求めている情報とは何でしょう。その答えは、被災地で生活していくことに直結するものだと思います。マスメディアがこうした被災地域の細かい情報の提供に時間を割くのは、非常に難しいため『SAVEJAPAN! PROJECT』以外にも、被災地にとって重要な情報を提供するウェブサービスが次々と始まっています。

図8 被災地の確実な情報だけを提供する『sinsai.info』
図8 被災地の確実な情報だけを提供する『sinsai.info』

その一つであるsinsai.infoでは、商業施設の営業情報や給水場所など、被災地で誰もが必要としている情報を収集するだけでなく、信憑性を確認したのち、確実な情報だけを整理・提供しているのが特徴です。また、Twitter上に流れている被災地の情報を、携帯電話などで市町区村ごとに閲覧できるnegau.orgというサービスも登場しています。

このようなウェブサービスは、避難所からの物資の要望など、現地からの意見をくみ上げる役割も果たしており、一方的な情報の提供でなく、情報を使ったコミュニケーションで、現地の人々をつなぎ、支える役割を果たしているのも大きな特徴です。これからは、必要な情報を伝えてくれるメディアこそが、被災者にとって安心をもたらし、生活の支えとなるでしょう。今後より重要度を増していく、こうした地域密着型のウェブサービスが、被災地の復興への足掛かりとなることを期待したいと思います。

現在、マスメディアなどを通じて頻繁に伝えられる被災地の状況ですが、次第に私たちが目にする機会は減少していくでしょう。過去の大災害を振り返ってみれば、被災地が本当に復興するには、10年単位の気が遠くなるような時間が必要です。従って、災害が発生した直後はもちろんのこと、"被災地が復興されるまで、忘れずに支援を継続すること"が本当の支援となるはずです。そのために今後も微力ながら、継続した支援をしようと思っています。

おすすめ記事

記事・ニュース一覧