いま、見ておきたいウェブサイト

第56回Dunkin' Donuts、Magnum Pleasure Hunt、「復興の狼煙」ポスタープロジェクト

花粉ともお別れし、青葉とともに清々しい気分で街を歩けるようになった今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。

よりソーシャルに、よりローカルに

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リニューアルされた、世界最大のドーナツのフランチャイズチェーン、Dunkin' Donuts(ダンキンドーナツ)のウェブサイトです。

図1 大幅にリニューアルされた、Dunkin' Donutsのウェブサイト
図1 大幅にリニューアルされた、Dunkin' Donutsのウェブサイト

リニューアルされた新しいウェブサイトのトップページでは、Twitter、Facebook、YouTubeといったソーシャルメディアとの連携を強めています。

図2 リニューアルと同時にスタートしたBlog『Behind the Beans』
図2 リニューアルと同時にスタートしたBlog『Behind the Beans』

また同時に、ユーザーに最新のメニューやニュース、料理のレシピなどを配信する、同社初のBlogBehind the Beansも開始しています。

ユーザーの意見が、ウェブサイトを変える

企業が新しいビジネスやサービスを開始するとき、また今までのウェブサイトにおけるユーザーテストの評価や、アクセス解析からのフィードバックなどなど、ウェブサイトのリニューアルを行うための理由は実にさまざまです。

今回のDunkin' Donutsのリニューアルで注目すべき点は、同社のFacebookページで集められたユーザーの意見をもとに、リニューアルがなされた点です。

図3 店舗検索の「Trip Planner」など、ローカル性の高い情報が充実した
図3 店舗検索の「Trip Planner」など、ローカル性の高い情報が充実した

特に、ユーザーの通る道に沿った店舗検索ができる「Trip Planner」や、各店舗の詳しい情報(Wi-Fiの設置状況やメニューのオプションなど⁠⁠、ユーザーが頻繁に利用するローカルの情報(ユーザーが指定した地域の店舗情報に関するコンテンツ)を充実させています。

日本にも多くのフランチャイズチェーンが展開されていますが、ユーザーが頻繁に求める情報に対して、情報と体験の質をどう充実させていくのか、Dunkin' Donutsのようにユーザーの意見を取り入れて変化するウェブサイトが続々と登場してくるのか、今後に注目したいと思います。

ウェブサイトを飛び越えろ

Magnum Pleasure Hunt

Unileverのアイスクリームブランド「Heartbrand」から、新たに販売されたアイスクリームバー「Magnum Temptation Hazelnut」のプロモーションサイト、⁠Magnum Pleasure Hunt』です。

図4 ⁠Across the Internet」というサブタイトル通りのゲーム『Magnum Pleasure Hunt』
図4 「Across the Internet」というサブタイトル通りのゲーム『Magnum Pleasure Hunt』

credits:Lowe Brindfors B-Reel Plan8

画面に登場する女性を左右の矢印キーとスペースキーで操作しながら、さまざまなステージに散らばっているチョコレート菓子(全100個)を集めることが目的のアクションゲームです。

図5 ウェブサイトを次々と移動しながらゲームが進行していく
図5 ウェブサイトを次々と移動しながらゲームが進行していく

ゲームは別のウェブサイトへと次々に移動しながら展開していきますが、画面の切り替えがなめらかなだけでなく、プレイヤーが楽しめる細かい演出が用意されているため、ついつい最後までプレイしてしまう魅力的なゲームとなっています。

"ウェブサイトの縦断"は増えるか

『Magnum Pleasure Hunt』では、さまざまなウェブサイトがゲームの舞台として登場します。このうち7種類は架空のウェブサイトですが、それ以外は実在する企業の名前(Dove、Saab、SAMSUNGなど)が使用されたウェブサイトです。

図6 実在する企業のウェブサイトがゲーム中に登場する
図6 実在する企業のウェブサイトがゲーム中に登場する

もちろん、これらの実在する企業名を使用したウェブサイトは、各企業のブランドガイドラインの範囲内で制作されています。このため、各企業のイメージを損ねることなく、ゲームの世界を構成する重要なパーツとして、そして、広告としての役割を果たしています。

以前から「ゲーム内に企業の広告を掲出する」という事例はありましたが、⁠ゲームの舞台として企業のウェブサイトが登場する」というのは、なかなか面白い試みだと思います。先頃話題となった、IntelのThe Chase FilmやSOURの映し鏡のように、"ウェブサイトの縦断"をテーマにユーザーを楽しませるという方法が、新たな広告の手法として、これから増えてくるのか注目したいところです。

"本当の復興"の始まり

「復興の狼煙」ポスタープロジェクト

2011年4月15日から、東日本大震災の被災地の人々を撮影した写真を使って制作されたポスターの公開を始めたウェブサイト、⁠復興の狼煙(のろし⁠⁠」ポスタープロジェクト』です。

図7 被災地の人々の写真で制作されたポスターが閲覧できる『⁠⁠復興の狼煙(のろし⁠⁠」ポスタープロジェクト』
図7 被災地の人々の写真で制作されたポスターが閲覧できる『「復興の狼煙(のろし)」ポスタープロジェクト』

シンプルなデザインで構成されたウェブサイトでは、⁠一緒に悲しむよりも、あなたの仕事を一生懸命やって欲しい。 それが沿岸を、岩手を元気にする力になると思うから。」という力強いメッセージを含んだ、被災地の人々による復興への意欲が感じられるポスターが閲覧できます。

図8 ポスターに集中できるシンプルなウェブサイトのデザインも特徴的
図8 ポスターに集中できるシンプルなウェブサイトのデザインも特徴的

現在は、岩手県釜石市で撮影された写真を使用したポスター13枚が公開されています。また、ウェブサイトで閲覧できるポスターは、今後、実際に岩手県内で貼り出される予定とのことです。

クリエイティビティによる復興の手助け

震災以来、テレビや新聞などのマスコミ、そしてウェブサイトでも、被災地へと向けた多様なキャンペーンが行われていますが、その多くは"被災地の外側"から被災者へとメッセージを伝えるものです。ただし、そのメッセージが被災された人たちへと届いているのか、そして、本当に力となっているのかを確認する術はありませんでした。

その中で始まった『⁠⁠復興の狼煙」ポスタープロジェクト』は、被災された人たちが持つ「プライド」⁠たくましさ」⁠力強さ」など、自立への意志を感じさせる強いメッセージを"被災地の内側"から発信しています。この強い思いは、被災地の復興への原動力となり、メッセージを受け取った"被災地の外側"では、支援への熱いエネルギーを生み出します。

東日本大震災の直後、クリエイティブ系の職業に従事する方々の「自分は何もできない」⁠無力感に襲われた」というツイートを数多く見てきましたが、むしろ "持っている能力を最大限発揮するとき"は、これからだと思います。そして今、クリエイティビティによる復興の手助けが必要とされる、そのスタートラインに彼らは立っているのだと思います。

というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。

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