スッキリしない天気と湿度の高さに、暑いのも好きではないけれど、それでも早く梅雨明けしないかなと現実逃避している今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。
勝ち抜いて、伝説の国王となれ
日清食品のカップヌードル発売40周年を記念した、バトルロワイアル型プレゼントキャンペーンサイト『ヌードル食えスト』です。
図1 バトルロワイアル型プレゼントキャンペーンサイト『ヌードル食えスト』
プレイヤーはTwitterのアカウントを利用して、幻の大陸「ヌードリア」にある73の王国の国王を目指します。国王への挑戦は、3段階の単純な項目の選択で行われます。ユーザーには「ライフポイント」が設定されており、このポイントがゼロになると国王に挑戦できません。
図2 ユーザーは3つの試練を乗り越えて、国王を目指す
国王となった後は、国王の証である「伝説の王杯」を挑戦者から防衛します。王杯の隠し場所を変更することも可能で、挑戦者から15回王座を守ることができれば、見事「レジェンド国王」となり、カップヌードル1ケース(20食入り)がプレゼントされるというルールです。
図3 国王の座を15回守れば、「 レジェンド国王」となりプレゼントが受け取れる
「ソーシャルゲーム」から学ぶこと
ウェブサイトにおけるユーザーの滞在時間を延ばすのは、ユーザーの興味が多様化する中、なかなか厳しい時代になっています。そうした中、ユーザーの持っている細切れの時間を積み重ねることで、滞在時間を補おうとする動きが増えています。
『ヌードル食えスト』で遊ぶためには「ライフポイント」が必要です。結果をツイートすることで「ライフポイント」を多少回復できますが、完全に「ライフポイント」が回復するまでには一定の時間がかかります。「 ライフポイント」を回復させて挑戦を繰り返せば、必然的にユーザーのウェブサイトへの訪問回数が増え、滞在時間の合計も長くなります。
図4 結果をツイートすることで「ライフポイント」が回復できる
こうした時間の経過やアクションで、参加権利や体力などを回復させるシステムは、SNSと連動した「ソーシャルゲーム」でよく利用されています。そのうえ、有名な「ソーシャルゲーム」の多くは、時間のかかる回復を一瞬で行う"課金アイテム"を用意して、さらにユーザーをゲームにひきつけています。
こうした仕組みを取り入れたキャンペーンサイトは、今後も題材を変えながら、多数登場してくるのではないでしょうか。ユーザーの持つ貴重な時間を、どうしたらウェブサイトに向けてもらえるのか。まだまだ見たことのない、工夫をこらしたウェブサイトが登場してくることを期待しています。
振り返る、自分の姿
世界的な半導体メーカーのIntelが製造する「インテル® CoreTM i5 プロセッサー」のプロモーションサイト、『 Intel® The Museum of Me』です。
図5 Facebookのネットワークを可視化した『Intel® The Museum of Me』
credits:Projector inc. 、Rhizomatiks 、太陽企画株式会社 、DELTRO 、株式会社マウントポジション 、株式会社愛印 、株式会社スクリュー 、株式会社ゼネラルアサヒ
"Create and explore a visual archive of your social life."ということで、美術館の展覧会を世界観として、高木正勝さんの音楽に合わせながら、ユーザーがFacebook上で行ったアクティビティ(動画や写真をアップロードしたり、「 Like」ボタンを押したり、チェックインするなどの活動)によって生まれた各種データを参照して、自動的に動画を生成してくれるコンテンツです。
図6 美術館で開催される展覧会を体験しているような動画が生成される
ユーザーのデータごとに変化する約3分の映像が終了すると、プレゼントとして、生成された動画を元にして制作されたブックレットがFacebookにアップロードされる仕組みです。
変化するライフログをいつ見るか
近年、ユーザーの行動から生まれるデータを記録する、ライフログサービスが注目されています。この連載でもいくつかのサービスを紹介してきましたが、ただデータを記録していくだけでは意味がありません。では、記録されたデータを生かすには、どのような方法があるのでしょうか。
『Intel The Museum of Me』のプロモーション映像
『Intel® The Museum of Me』では、集めたデータを「展覧会」という形にまとめて表現しています。ユーザーがFacebookを頻繁に利用していれば、アクティビティのおかげで多様なデータを集めやすく、時間とともに内容も変わるため、データから日々変化していく自分の姿を確認できるところもよく考えられています。
こうしたライフログの見せ方、楽しませ方は、工夫次第でまだまだ面白いものが出てきそうです。この『Intel® The Museum of Me』がいつまで公開されるかは不明ですが、誕生日や記念日、年末年始など、自分のこれまでの行動を振り返る機会に、これから何度も利用してみたいと思わせるウェブサイトです。
子守歌で、よい睡眠を
IKEAによる寝具製品のプロモーションサイト『BÄTTRE SÖMN ÅT ALLA』( 直訳『みんなのための、よりよい睡眠』 )です。
図7 IKEAの寝具製品のプロモーション『 BÄTTRE SÖMN ÅT ALLA』
credits:Forsman & Bodenfors 、Social Club 、RBG6 、Carl Nilsson 、Music Super Circus 、Kokokaka
ウェブサイトでは、6人のアーティスト(Tove Styrke 、Albin Gromer 、Siw Malmkvist、Tingsek 、Maia Hirasawa 、Musette )によって演奏されるララバイ(子守歌)のミュージックビデオが、スクロールとともに、次々と再生されていきます。
図8 個性的なアーティストの映像が次々と再生されていく
縦にスクロールさせることで、各アーティストの映像を切り替える事も可能です。また、動画の左右にあるボタンをクリックすると、映像内に登場しているアーティストやIKEAの製品に関する情報を得られます。
意識された"タッチインターフェース"
スクロールによって各映像が次々と切り替わっていく『 BÄTTRE SÖMN ÅT ALLA』ですが、iPadなどのタッチインターフェースを備えたデバイスでアクセスすると、個性的なウェブサイトの構造が見えてきます。
図9 ウェブサイト全体の構造が、タッチインターフェースを意識しているのがわかる
ウェブサイト全体を見ると、映像を中心として、左にアーティストの情報、右にIKEAの製品情報を表示しています。PCでアクセスした場合には、マウスによるクリックで左右のページへと移動していたのですが、iPadなどでは、上下左右にスワイプするだけで、ウェブサイトのコンテンツを自由自在に移動できる構造となっています。
図10 デバイスの向きを、コンテンツに合わせて、変えるように指示される
また、アクセス時にデバイスの向きが縦だった場合は、コンテンツを表示せずに、デバイスの向きの変更を促す表示がされるなど、用意されたコンテンツをどのような状態でユーザーに見て欲しいのかを明確にしているのも面白いです。
今後、ユーザーが"タッチインターフェース"を備えたデバイスを使って、インターネットを利用する時間がさらに増えるだろうと筆者は予想しています。現在、キャンペーンサイトなどの大半が"マウスとキーボード"を利用したPCからのアクセスを基準として制作されていますが、その基準が"タッチインターフェース"を備えた情報端末からのアクセスへと変わる日も、そう遠くないような気がしています。
というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。