クラクラするような強烈な日差しと、木陰に入っても容赦のない蒸し暑さに、改めて「日本の夏」を感じている今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。
お好きなもの、画像から探します
独自の技術によって、画像からアイテムを検索できるファッションサイト『AVE23.com』です。
『AVE23.com』では、毎日"Fashion Hunters"と呼ばれるスタッフたちによって、流行を作っている有名人やモデルの最新ファッション、世界の各都市のストリートファッションスナップ、パリやミラノで開催されるファッションショーの画像が、「Celebrity」「Community」「Friends」のカテゴリーに次々と投稿されます。
ユーザーは、投稿された多くの画像から、興味のあるものを選択して、その画像を検索エリアにドラッグ&ドロップします。検索を開始すると、『AVE23.com』の商品データベースの中から、画像に含まれているファッションアイテムと類似した商品が表示されるという仕組みです。もちろん、表示された各商品はオンラインショップへとリンクされているため、そのまま購入が可能です。
新たな価値を産む検索技術
最近では、一般的な「文字」を入力して行う検索とは異なる、新たな検索技術が次々と登場しています。この『AVE23.com』で使用されている検索技術も、「Visual Intelligence Technology」と呼ばれる独自の検索技術です。
こうした中で、インターネット検索エンジンの最大手であるGoogleも、デスクトップでの音声検索や新しい画像検索機能を発表するだけでなく、自身の持つ技術を生かしたファッションサイト『Boutiques.com』を始めています。
『Boutiques.com』では、Googleの持つ画像検索技術とレコメンデーション機能(購入履歴や趣味などから好みに合う商品を勧めてくる機能)を組み合わせることで、ユーザーに最適化されたショッピングが楽しめる仕組みになっています。
2010年にGoogle Japanが行ったアンケートによれば、ユーザーは「音・音楽」「記憶や考え」「動画」からの検索技術を期待しているようです。将来、こうした検索技術が実現することによって、ウェブサイトに新たな価値を生み出す事例が登場してくるかもしれません。
より美しい、日本語の表現
ソフトバンク・テクノロジー株式会社による、日本語ウェブフォントサービス「フォントプラス」のウェブサイトです。
ウェブサイトのURLを申請後、ユーザーがCSSで使用するフォントを指定し、発行されたJavaScriptのタグをHTMLに挿入する(スマートライセンスの場合)ことで、簡単に日本語ウェブフォントをウェブサイトに導入できる仕組みです。主要なブラウザへの対応はもちろん、Movable TypeやWordPressなどCMSにも対応しています。
現在は、フォントワークス株式会社の提供する268書体のフォントが利用できますが、近日中に株式会社イワタ、株式会社モトヤのフォントにも対応するとのことです。
日本語のウェブフォントサービスは普及するか
一年ほど前の記事でも取り上げましたが、海外では多数のウェブフォントサービスが登場しています。しかし、その中で日本語フォントを扱うサービスが少ないのが現状です。この背景には、日本語フォントの「ファイルサイズの大きさ」が関係しています。
アルファベット中心の欧文フォントと異なり、日本語フォントは、ひらがな、カタカナ、漢字など、扱う文字の種類と数が桁違い(例:欧文フォント「Helvetica」の収録字数は約400。日本語フォント「ヒラギノ」の収録字数は約20,000)なため、書体によっては、ファイルサイズが10MBを超えるものも存在します。
こうした日本語フォントをウェブフォントとして利用する場合、特に「動作の重さ」「表示時間の遅さ」が課題となっていました。「フォントプラス」では、この問題を「ページ内の文章を自動で解析し、そのページ内に使われている文字だけを抽出した、軽量化したフォントデータを自動で作成する」ことで、表示の高速・軽量化を実現しています。
もちろん、現段階ではカーニング(文字間の間隔を調整)や禁則処理(行頭や行末に配置してはいけない文字の設定)など、細やかな日本語の表現という部分では、まだまだ多くの課題が残っています。それでもウェブサイトにおける文字表現の可能性を広げてくれるこのサービスが、どのような展開を見せるのか、今後の動きに注目していきたいところです。
誰もが楽しめる"軽快さ"
日産自動車株式会社が、ゼロ・エミッション社会(産業の廃棄物を有効利用し、排出しない資源循環型社会)の実現に向けた取り組みの一環としてオープンした、体験ゲーム型キャンペーンサイト『THE PLANET ZERO』です。
ウェブサイトでは、日産自動車が目指す"ゼロ・エミッションモビリティ"をキャラクター化した「PLUG(プラグ)くん」を操作して、個性的なキャラクターが登場するゲームをクリアしながら、ゼロ・エミッションの仕組みを体験できます。
現在、「地球温暖化」「代替エネルギー」「再生可能エネルギー」「スマートグリッド」をテーマにした4つのステージが用意されていますが、今後、さらにステージが追加される予定です。また「PLUGくん」のパラパラ漫画を投稿・閲覧できる『FLIPBOOK STUDIO』も同時公開されています。
誰もが楽しめるプロモーションサイトとは
『THE PLANET ZERO』を訪れて感じる点の一つが、スムーズな操作感でしょう。マウスの操作に素早く反応するだけでなく、キャラクターや背景の機敏な動き、各ステージの素早い読み込みなど、ウェブサイト全体が軽快に動作するよう、入念に調整されているようです。
現在、こうしたキャンペーンサイトでは、新たな技術を利用した激しい動きや美しい映像、重厚なグラフィック表現が当たり前になっています。もちろん、最新技術を搭載したPCであれば、こうしたウェブサイトもストレスなく、楽しく閲覧できるでしょう。
先日発表された、調査会社のIDC Japanによる「国内PC市場ビジネスユーザー動向調査」によれば、PCの平均利用年数はデスクトップPCの利用年数が4.6年、ポータブルPCが4.1年となっています。家庭で使用されているPCは、これより長い利用年数になると推測できます。
筆者も5年ほど前に購入したPCで『THE PLANET ZERO』を試しましたが、全く問題なく楽しめました。誰もが最新のPCでウェブサイトを閲覧しているとは限りません。そう考えると、『THE PLANET ZERO』の持つ"軽快さ"は、プロモーションの内容をより広く、より効果的に伝えるための強力な武器となるでしょう。この軽快な動作を実現させた技術と、"職人技"とも言える作り込みに、改めて、プロモーションサイトのあり方を考えさせられた事例でした。
というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。