近所の夏祭りがすべて終了し、夏の終わりを感じつつも、今年も厳しい残暑なのではと疑心暗鬼の今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。
みんなの"感情と思い"を共有する
ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンによる、PlayStation3専用ソフトウェア『ICO』『ワンダと巨像』の発売を記念したキャンペーンサイト、『Great Scene Sharing』です。
『Great Scene Sharing』では、『ICO』『ワンダと巨像』の2作品から選び出された名シーンが表示されます。ユーザーがシーンを選択すると、映像が再生された後に、事前に選択したソーシャルメディア(Twitter、Facebook、mixi)への投稿画面が表示されます。
ユーザーの投稿によって、ソーシャルメディアで共有されたシーンは、別のユーザーに見られることでポイントが増えます。このポイント数に応じて、プレミアムイベントや、オリジナルグッズの当選確率が高まる仕組みとなっています。
楽しみを生む"感情"や"思い"
ゲームなどを楽しんだ後は、誰もがその内容について、さまざまなことを感じることでしょう。そうした感情や思いを友人や知人などと分かち合うことで、さらに内容への興味を深め、奥行きのある楽しみ方ができたという経験が、誰にでもあると思います。
『Great Scene Sharing』では、インターネット上でもこうした経験が体験できるよう、名シーンを使って同じ感情を抱くユーザーを集め、さらにシーンへの投稿に対して、広く共感が得られるようにソーシャルメディアを上手に利用しています。
誰もが楽しんでいる本や映画、音楽や漫画などが、個人の持つ"感情"や"思い"と一緒になって、インターネット上でどう表現されていくのか。今後も、コンテンツをより深く楽しませてくれる、新しい仕掛けが生まれることを期待したいと思います。
広がりを見せる「Tumblr」
2011年7月28日にリニューアルされた、女優の水野美紀さんの公式サイト『水野美紀 Miki Mizuno Official Website』です。
独自ドメインやテーマの使用、プロフィールなどのページの追加やGoogleドキュメントを使用した問い合わせフォームなど、全面的にカスタマイズされたマイクロブログサービスTumblrが使用されています。
テキスト、画像、音声、動画など、Tumblrの特徴を生かした多彩なコンテンツによって構成されています。また、公式サイトのリニューアルに合わせて、Facebookページも公開されています。
情報を広げる「リブログ」
2011年から正式に日本語のサービスも始まったTumblrは、自分で書いた文章や画像など投稿ができるだけでなく、インターネット上の各種コンテンツ(文章や画像、動画など)を簡単に引用できる、「リブログ(reblog)」という機能によって人気を集めています。
公式サイトなどで情報を発信する場合は、効果的に情報を広げていく仕組みが求められます。その中でTumblrの「リブログ」は、ファンにとって自分のTumblrに情報を引用できる満足感を得られるだけでなく、公式サイト側が伝えたい情報を広く知らせる手助けにもなるという、独特の情報拡散機能を持っています。
公式ブログやFacebookが利用されることが多い有名人の情報発信ですが、最近ではLADY GAGAによる『AMEN†FASHION』が話題になるなど、Tumblrは非常に面白い存在となってきました。ファンとのより良い関係を作るツールとして、これからTumblrがどう広がるのか、また企業などでも利用される事例が増えるのか、注目していきたいと思います。
コードを書かないウェブサイト制作
HTMLやJavaScriptなどのコードを書くことなく、ウェブサイトが制作できるAdobeのAIRアプリケーション、「Muse」(Public Beta版)のウェブサイトです。
「Muse」は、「Plan」(サイトマップの制作)→「Design」(ウェブサイトのデザイン)→「Preview」(制作したウェブサイトの確認)→「Publish」(HTMLファイルの出力、またはサーバへファイルをアップロード)という流れで、ウェブサイトの制作が行われます。ウェブサイトでは「Muse」を使って制作されたサンプルも用意されていますが、この「Muse」のウェブサイト自体が「Muse」で制作されたものです。
Adobeによれば、「Muse」の正式版は、2012年の前半にサブスクリプションプラン(20USドル/月、180USドル/年)で提供され、ブラウザやデバイスの変化に素早く対応できるよう、四半期ごとのアップデートが予定されています。
改めて問われる"裏側"の価値
「Muse」は、タイトルに"Create unique websites without writing code(直訳:コードを書くことなく、独自のウェブサイトを作ってください)"と表示されていることや、PHPなどのサーバサイドプログラムに対応していないことなど、従来のウェブサイト制作アプリケーションと大きく異なる設計思想が感じられます。
また、自社のDTPソフトウェア「Adobe InDesign」に似た、「マスターページ」やレイアウトを基準とした制作フローが採用されていることから、「Muse」は「印刷物のデザイン」を行うデザイナーを対象としたアプリケーションであることがわかります。
「印刷物のデザイン」と「ウェブサイトのデザイン」には、異なる点が多数あります。ですが、こうしたアプリケーションが使えるレベルにまで成熟すれば、いずれ「印刷物のデザイン」をしているデザイナーによるウェブサイトの制作も大幅に増えるでしょう。
もちろん、最表層のビジュアルやレイアウトだけで、ウェブサイトの善し悪しを判断することはできません。今後、ウェブサイトの裏側にあたる「ソース」の意味や、ウェブデザイナーが制作するウェブサイトの価値とは何かを、もう一度見つめ直す機会となるのか、注目したいと思います。
というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。