まだまだ厳しい残暑が続いていますが、それでも五感を通じて、はっきりとした秋の近づきが感じられる今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。
ついに完成した、未来の靴
2011年9月8日にNikeが発売した未来のスニーカー、「The 2011 NIKE MAG」のプロモーションサイト『Back 4 The Future』です。
「The 2011 NIKE MAG」は、映画『Back to the Future 2』で、主人公のMarty McFlyが履いていた未来のスニーカーをNikeが製品化したものです。バッテリーを内蔵し、LED(発光ダイオード)が発光する仕掛けも備えています。
この「The 2011 NIKE MAG」は、オークションサイトのeBayで販売(9月8日から10日間連続で合計1,500足が販売された)されましたが、非常に高額の落札が相次ぎ、改めて、映画『Back to the Future』シリーズの人気を再確認した出来事となりました。
ファンの夢と社会の夢を実現する
映画の中に登場するアイテムが、実際に制作され、販売されるという、ファンにはたまらない夢のある企画ですが、このプロジェクトの売り上げは、Nikeの収益とはなりません。
オークションを通じて得られた収益は、映画『Back to the Future』にも登場する、俳優のマイケル・J・フォックスによって設立されたパーキンソン病の研究助成財団、「The Michael J. Fox Foundation for Parkinson's Research」へ全額が寄付されます。
最近では、こうした社会的な目的を持ったプロジェクトを多くの企業が行っています。単純に商品を購入させるのではなく、社会貢献にもつながるという購入理由を付加することで、商品に対するより強い愛着と購入意欲を持たせる仕組みを持ったプロジェクトは、今後も増えるのではないでしょうか。
"ファンの夢"と"社会の夢"の実現を同時に満たしたこのプロジェクト。Nikeは「AUTOMATIC LACING SYSTEM(自動靴ひも結びシステム)」の特許を、実際に申請しています。映画のように、2015年には、ファン待望の「The NIKE MAG」が見られるかもしれません。
その製品の、本当の姿
Sonyの手回し充電ラジオ「ICF-B02」のキャンペーンサイト、『そのとき、小さなラジオにできたこと。』です。
東日本大震災時に使用された、「ICF-B02」の持つさまざまな特徴(手回し充電能、LEDライト、携帯電話充電機能など)を、実際のユーザーによる体験談を通じて説明しています。
ラジオのチューニング(周波数を合わせる)を思わせる、ナビゲーションの各項目を選択した時の動きや、体験談を語るユーザーの位置情報を表した流れる光の点など、細かい演出にも注目して欲しいウェブサイトです。
"不安"を"安心"へと変化させる
東日本大震災以降、筆者も災害時の備えとして、さまざまな商品を購入しています。個人のBlogやショップのレビューなどを参考に購入していますが、質のばらつきがあり、多数のレビューを閲覧しながら、買うかどうかの判断を下すのは意外に難しいものです。
特に「災害時に必ず使えるのか」「非常時に本当に頼れる商品なのか」など、単純な商品のスペックや機能ではわからない部分、すなわち"商品に対する不安感"が購入を妨げています。
このキャンペーンサイトでは、「ICF-B02」が震災時にどう使われたのかが次々と語られます。災害時の使用状況が体験談によって判明し、製品に対する深い理解が生まれることで、ユーザーの"商品に対する不安感"を消し、「これなら買ってもいい」という"購買への安心感"を生み出していきます。
商品の購入時に誰もが持つ不安要素を、どう打ち消し、購入へと結びつけるのか。"不安から安心への変化"を生み出す仕組みに、今後も注目したいと思います。
その画像、まだ圧縮できます
オリジナル画像の見た目はそのままに、ファイルサイズを削減できる画像圧縮オンラインサービス「JPEGmini」のウェブサイトです。
トップページでは大きな画像を使って、「JPEGmini」の圧縮効果をアピールしています。画像の上でマウスを左右に動かすことで、圧縮前と圧縮後の画像を比較できます。
ユーザーは手持ちの画像をアップロードすれば、この圧縮技術でファイルサイズの小さくなった画像をダウンロードできます。圧縮された画像を拡大して比較すれば、多少の劣化があることはわかるのですが、一見して"ほとんど画像の劣化がわからない"にもかかわらず、最大80%という大幅なファイルサイズの縮小を実現したこのサービスに誰もが驚くことでしょう。
"地味"な技術が、日常を変える
画像の圧縮については、今までにもさまざまな規格(例:「WebP」「JPEG 2000」「JPEG XR」など)が登場しています。しかし、どの規格も一部のブラウザにしか対応しないことやプラグインが必要なことなど、"標準のJPEGファイル"と比べて、使い勝手や汎用性に欠けるために使用範囲が広がることはありませんでした。
「JPEGmini」では、適用が可能な最大の圧縮量を決定してから画像を圧縮します。その過程で人間の知覚特質をまねた独自の画像の識別技術が使われますが、最終的に生成されるファイルは"標準のJPEGファイル"であるため、非常に使い勝手が良いのも魅力的です。
また、高い画像圧縮率を持つPCのアプリケーションも存在していますが、画像を最適化するには、各種設定項目の操作と試行錯誤が必要となるなど、ユーザー自らが時間をかける必要があります。「JPEGmini」は、こうした手間を必要とせず、画像をアップロードするだけで"画質とファイルサイズの最適化が自動的に終了する"という手軽さを持っています。
現在、デジタルカメラなどの高画素化によって、ユーザーがファイルサイズの大きな画像を扱う機会が増えています。画像の圧縮は地味な技術ですが、誰もが利用できるこうした技術の進歩こそが、私たちの日常を大きく変えていく起点となることを改めて感じました。
というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。