スッキリしない天気が続き、ここを乗り切っても暑い夏が…と少し憂鬱な気分の今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。
固有のデータが生み出すもの
DNA(デオキシリボ核酸)からデザインが生成されている、株式会社TBWA HAKUHODOの「Disruption Lab(ディスラプション・ラボ)」のウェブサイト、『Disruption Lab DNA-ID』です。
オリジナルのプログラムを使って、口内粘膜から採取されたDNAの分析を行い、「Disruption Lab」に所属する各クリエイターを現すテクスチャーを生み出しています。ウェブサイトでは、各クリエーターを現す立体的かつ、動的なテクスチャーとして表示されています。
テクスチャーが生み出す意識
DNAを利用して生成されたテクスチャーは、ウェブサイトだけでなく、名刺のデザインにも活用されており、ウェブカメラを利用して名刺を認識させると、各クリエイターの紹介ページでポートフォリオが見られる仕組みにもなっています。
今後はウェブサイトや名刺だけに止まらず、オリジナルグッズなどにもテクスチャーが利用されていくようです。単なるグラフィックとは異なる、こうしたテクスチャーが付いたアイテムを使用する場面では、各個人がより強く自分を意識し、愛着や責任感など、意味ある感情を生み出す効果も働くのではないでしょうか。
この世の中に一つしかないDNAを利用するというアイデアも秀逸ですが、"無味無臭"な数字や記号などと異なり、各クリエイターが"自分の分身"ともいえるテクスチャーを意識することで、新しい何かが生み出されることを楽しみにしたいと思います。
「その場で見る」というアイデア
アートディレクター/デザイナー/Flashデザイナーの藤原明広さんによるウェブサイトブックマーク、『AKIHIROFUJIWARA WEBSITE BOOKMARK』です。
ウェブサイトでは、インラインフレーム(iFrame)を利用して、ウェブサイトが表示されています。画面の左右に配置された三角形のボタンをクリックすると、次々とブックマークされたウェブサイトが切り替わる仕組みです。
「画像」と「リンク」からの脱却
良質なウェブサイトを紹介する「ウェブデザインギャラリーサイト」は、そのほとんどが、ウェブサイトのキャプチャー画像とリンクの組み合わせで制作されています。このため、ユーザーはキャプチャー画像を見て判断し、リンクをクリックして、実際のウェブサイトを訪れます。
『AKIHIROFUJIWARA WEBSITE BOOKMARK』では、「ウェブデザインギャラリーサイト」必要な「画像の判断」と「クリック」をせずに、その場で実際のウェブサイトを次々と体験できます。多数のウェブサイトを次々と見ていくことの多い「ウェブデザインギャラリーサイト」において、実際のウェブサイトにアクセスするまでのステップを最小限にしたこのアイデアは実に効果的です。
ブックマークされたウェブサイトの一覧にはTumblrを利用するなど、今までにない視点からのアプローチを感じるこのウェブサイト。ここ数年、新鮮味を失いつつある「ウェブデザインギャラリーサイト」も、こうした新しいアイデアを実装したウェブサイトブックマークの登場で、少しずつ変わってくるかもしれません。
映像が生み出す"興味"という熱
デンマークの女性用デニムファッションブランド「ONLY」による「インタラクティブ・フィルム・エクスペリエンス」、『ONLY because we can』です。
"The Liberation(解放)"と題された、インタラクティブな映像では、小さな町の3人の少女たちを主人公とした物語の上で、ONLYの「2012 Spring/Summer Collection」を紹介していきます。
映像はクリックで再生・停止できます。映像を停止した場面では、登場人物が身に着けているアイテムにマークが表示され、それをクリックすることでアイテムに関する情報が確認できます。映像終了後は、ユーザーがクリックした場面や商品がまとめて表示され、商品はそのままオンラインショップで購入できます。
興味を埋没させない仕組みづくり
TwitterやFacebookの普及によって、ユーザーは興味を持った情報に素早く反応し、その情報を手軽に共有できるようになりました。その反面、手軽に投稿された情報は時間とともに埋没し、拡散の機会を維持させることが非常に難しくなっています。
『ONLY because we can』では、インタラクティブな映像によって、動画内の衣料に興味を持ったユーザーの投稿手段として、TwitterとFacebookだけでなく、Pinterestへの投稿を用意することで、さらなる情報の拡散と商品の購入を意識させようとしています。
TwitterやFacebookのようなフロー(流れ)型のSNSでは、情報の投稿や共有だけでその興味が失われてしまうことも多いのですが、ストック(蓄積)型のSNSであるPinterestを利用し、ユーザーが一度持った興味を持続させることで、フロー型のSNSの欠点を補完する仕組みを作っています。
時間がたっても、また興味を思い出させる仕掛けが用意された、このウェブサイト。一度ユーザーに与えた"興味"という熱を、どうやったら保てるのか。こうしたより長く興味を持続させるための仕組みづくりが、今後ますます重要になっていく気がしています。
というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。