じっとりとした空気とはっきりしない天気から来る嫌な気分を、冷たい炭酸飲料で紛らわせている今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。
快適な旅のコツ、教えます
ファッションブランドのLouis Vuittonによる、旅行鞄のパッキングが学習できるコンテンツ、『 The Art of packing(旅のパッキング術) 』です。
図1 旅行鞄への収納方法を解説する、Louis Vuittonの『The Art of packing』
credit:KOKOKAKA
Louis Vuittonの代表的な3種類の旅行鞄(トランクタイプの「Alzel(アルゼール) 」 、トロリーバッグの「Pégase(ペガス) 」 、軽量・万能な「Keepall(キーポル) 」 )を使って、旅行に必要な各種アイテムの収納方法を解説していきます。
図2 衣類のたたみ方もアドバイスとともに解説される
拡大表示されるアイテムをクリックすると、順番に中央の鞄の中へと収まっていきます。アイテムの収納時には「重いアイテムはスーツケースの下部に収納する」 、「 ジャケットのシワを防ぐため、パンツやスカートと組み合わせて折りたたむ」といったアドバイスや、シャツやドレス、スーツやジャケットなど、鞄に収納する衣類のたたみ方も表示されます。
購入への壁を低くするコンテンツ
このコンテンツに登場するLouis Vuittonの旅行鞄は、非常に高価(正規品の場合、「 Alzel」は約60-72万円、「 Pégase」は約25-40万円、「 Keepall」は約14万円)な商品です。こうした高級ブランド品を購入しようとする場合、値段以外にもいくつか気になる点があるでしょう。
その一つは「元が取れる使い方ができるのか」という点です。購入した商品の使い方がよくわからず、「 結局、無駄になってしまうのでは」と考えると、欲しい商品であるにもかかわらず、手を伸ばすことをあきらめてしまう可能性も出てきます。
Louis Vuittonの『The Art of packing』の紹介動画
『The Art of packing』では、購入した誰もが鞄を上手に使いこなせる収納方法を提供することで、こうした不安を解消しています。商品を使いこなせることができれば、購入者には商品への愛着が生まれ、さらなる満足感を生み出すことでしょう。
ここ数年、海外の有名ブランドの支店が撤退するニュースが報道されるなど、日本でも"ステータスシンボル"としての高級ブランド品は、なかなか売れない時代となっているようです。こうした状況下では、『 The Art of packing』のような、消費者の購入を妨げる壁をより低くするコンテンツの提供が、今後は必要不可欠になっていくのかもしれません。
パーティーだって余裕の品質
25年間の品質保証を行っているIKEAのキッチンシステムを紹介するコンテンツ、『 Kitchen Quality Guarantee』です。
図3 25年保証のキッチンシステムを紹介する『Kitchen Quality Guarantee』
"We will take you through the test we perform to guarantee our kitchens for 25 years(私たちのキッチンを25年間保証するために行うテストにお連れします)"ということで、画面中央の人物をマウスでドラッグして左右に動かすと、イケアキッチンを25年間保証するために行なっている試験(引き出しやドアの開閉耐久テストや棚の重量負荷テストなど)を、アクロバティックな動作とともに紹介してくれるというコンテンツです。
図4 アクロバティックな人物の動きが面白い
"普通"でも、"特別"なコンテンツを
『Kitchen Quality Guarantee』では、商品をアピールするときにありがちな価格や機能の説明ではなく、商品の"25年間の品質保証"という耐久性をフィーチャーしているのが特徴的です。
また、コンテンツ内で紹介されている商品が、いわゆる普通の商品であることも特徴的です。IKEAを象徴するような特別な商品ではなく、こうした"普通"の商品に、きっちりと作り込んだコンテンツを用意してきたことは注目すべき点でしょう
世界的に知られているIKEAの商品ですが、これまで"低価格"と"商品のデザインの良さ"以外の優位性を積極的にアピールすることは少なかったように思います。厳しい競争を勝ち抜き、他社との優位性を保つため、普通の商品にも"スペシャル"コンテンツを用意するという動きが広がるのか、今後に注目したいと思います。
広がるポップアップウィンドウの世界
(※要Google Chrome+ポップアップウィンドウの許可)
フランスのエレクトロ・ポップミュージシャン、ALBによるインタラクティブミュージックビデオ、『 ALB - Golden Chains』です。
図5 ALBによるミュージックビデオ『ALB - Golden Chains』
credits:CLM BBDO 、ACNE Production
登場人物がミュージックビデオの中に現れるアイテムを映像の枠外に押し出すと、ポップアップウィンドウが開き、アイテムがその中に表示されます。表示されたアイテムは、販売されているウェブサイトにリンクしており、そのまま購入できます。
図6 映像の枠外にアイテムが飛び出すと、ポップアップウィンドウが開く
映像とポップアップウィンドウが連携するタイミングの良さや、映像がポップアップウィンドウの中へ展開するなど、見ていてとても楽しいウェブサイトです。
ミュージシャンの資金調達法とは
『ALB - Golden Chains』にアクセスすると、始めに"All the items displayed in this video are my personal belongings and available for sale. The revenue gained will support the production of my upcoming album."(このビデオの中に表示されるすべてのアイテムは、私の個人の所有物で、販売されています。得られた収益は、次に公開される私のアルバム制作をサポートします)というメッセージが表示されます。
図7 最初に説明される「映像内に登場するアイテムの売却益が、次の作品の制作に利用される」というウェブサイトの仕組み
実はミュージックビデオ終了後に、映像内に登場したアイテムが一覧表示されるのですが、このアイテムすべてが、ALB自身のアカウントで、インターネットオークションサイトの「eBay」や、ハンドメイドマーケットサイトの「Etsy」などの商品として販売されており、その利益が次回のアルバム制作のために使われるという仕組みになっています。
図8 映像が終了すると、登場したすべてのアイテムが一覧表示される
また、視聴者が映像内のアイテムに興味を持ち、購入してくれるように、映像内では「Product Placement(プロダクト・プレースメント:映画やテレビ番組内で広告主の商品を使い、認知度を高めようとする広告手法のこと) 」の手法も使われているなど、アーティスト自身が広告主となって資金を調達しようとするための、さまざまな工夫が感じられます。
最近では「Crowd Funding(クラウドファンディング:インターネットを通じて支援者から資金を収集し、プロジェクトを実現する手法のこと) 」が注目されていますが、多種多様な資金の調達方法が登場することで、次々と個性的なプロジェクトが生まれ、実現されることを期待しています。
というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。