強烈な蒸し暑さに、ついつい木陰や日陰を選んで歩いてしまう今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。
すべてが変わる、新しいメールサービス
Microsoftが開始した、無料で利用できる新しいメールサービス『Outlook.com』です。
図1 Microsoftが開始した、新サービス『Outlook.com』
「Outlook.com」は、FacebookやTwitterなどのSNSと、Microsoftの各種ウェブサービス(「 SkyDrive」「 Office Web Apps」 )をメールに統合したサービスになっています。このため、友達の最新情報が確認できたり、メールに添付された写真をOutlook.com上でスライドショー表示したり、WordやExcelなどの添付ファイルを、直接編集・共有できます。
図2 スッキリとしたデザインが特徴の「Outlook.com」の画面
また、他のメールアカウントの管理や、各種SNSと連携することで自動的に記録されるアドレス帳「People」 、受け取ったメールを自動的に分類するフィルターなど、サービスをより便利にする機能も追加されています。
『Outlook.com』の機能を説明した動画
「Outlook.com」では、「 Metro UI」を基調としたユーザーインターフェースが導入されており、今年10月にMicrosoft自身がハードウェアの設計・販売を行うタブレット端末「Surface 」の登場を意識した作りとなっています。
"ライバル"を明確にした戦術
Microsoftによる「Outlook.com」の説明 では、「 Compare(比較) 」というコンテンツが用意されており、「 Gmail」「 Hotmail」との比較が行われています。画面内には「Gmail」のメールを「Outlook.com」へと転送させて、ユーザーが実際の使い勝手を比較できるようにするためのリンク も用意されています。
図3 「 Outlook.com」と他のメールサービスとを比較している
ここでは「Outlookを勧める3つの理由」として、SNSやMicrosoftの各種ウェブサービスへの連携とともに、「 メールの内容を広告会社に売り渡すことはありません」と書かれており、明らかにGoogleが提供しているメールサービス「Gmail」を強く意識したものとなっています。筆者も、今まで使い慣れたウェブサービスをいきなり変えようとは思いませんが、自らの優れた点をアピールして、まずは使ってもらおうとするこの方法は面白いと思います。
公式Twitter によれば、「 サービス開始からわずか1日で、登録したユーザーが100万人を突破した」とのこと。ライバルを明確にすることによって、これからも多数のユーザーを獲得して「Gmail」を脅かすことができるのか。機能の追加も含め、新たなメールのありかたを打ち出した「Outlook.com」がどうなっていくのか、注目していきたいと思います。
最新技術を使った実験室
Googleによる"ウェブの魔法を生き返らせよう"とするアートプロジェクト、「 Web Lab」のウェブサイトです(※Google Chromeが必要) 。
図4 Googleによるアートプロジェクト、「 Web Lab」のウェブサイト
credit:B-Reel
ウェブサイトでは、Google ChromeとWebSocket、Node.js、WebGL、Canvas、JavaScript、Three.jsなどの技術を使った5つの実験(「 Universal Orchestra」「 Teleporter」「 Sketchbots」「 Data Tracer」「 Lab Tag Explorer」 )をユーザーが体験できます。
図5 最新の技術を使った、5つの実験が楽しめる「Web Lab」
つながっている"現実"と"インターネット"
ウェブサイトでさまざまな実験が体験できる「Web Lab」ですが、このプロジェクトは、オンラインだけでなく、実際にイギリスのロンドン科学博物館で、2013年6月まで展示(無料)が行われています。もちろん、ただの展示ではなく、実際に博物館を訪れた来場者と、世界中のインターネットを利用している世界中のユーザーとが、一緒になって楽しめる展示になっています。
図6 「 Universal Orchestra」では、博物館の来場者とネットのユーザーによる楽器の合奏が行われる
例えば、「 Universal Orchestra」では、博物館の来場者とウェブサイトを訪れたユーザーによって、リアルタイムに楽器が合奏されます。また、顔写真をアップロードすると似顔絵を描いてくれる「Sketchbots」では、博物館ではロボットが砂の上に似顔絵を描き、アップロードしたユーザーはその様子をYouTubeのライブ配信で確認できます。
"現実とインターネットはつながっている"という、いかにもGoogleらしいテーマと表現が素晴らしい「Web Lab」は、この連載でも紹介している「Chrome Experiments」シリーズ(「 The Wilderness Downtown 」 、「 3 Dreams of Black 」など)の一つです。このシリーズに、これからもこうした素晴らしいプロジェクトが続々と加わっていくことを期待したいと思います。
どんな競技も楽しめるオリンピックへ
2012年7月27日から8月12日まで、ロンドンオリンピックの競技を生中継するNHKによるウェブサイト、『 NHK ロンドン 2012 オリンピック ネット生中継』です。
図7 テレビで放送できない競技を中心に編成される『NHK ロンドン 2012 オリンピック ネット生中継』
ウェブサイトでは、テレビで生放送されないものを中心に、ロンドンオリンピックで行われている競技の様子を最大8チャンネルで同時配信しています。そのうちの2チャンネルでは、P2P(ピア・ツー・ピア)を使った高品位映像配信実験を行っています。
図8 P2Pによる高品位映像配信実験も行われている
広がってきた、視聴者側の選択肢
テレビを中心とした日本のオリンピック中継では、有名選手の登場するメジャーな競技や、日本人選手が出場し、メダル獲得の期待が高い競技を中心に放送されます。このため、さまざまな競技が行われているオリンピックであるにもかかわらず、放送される競技が偏ってしまいがちです。
ロンドンオリンピックの地元、BBC(英国放送協会)では、すべての競技が約2500時間も生中継され、多様な放送チャネルが用意(24のオリンピック放送専用テレビチャンネル、ラジオ放送、モバイル端末向けの無料視聴アプリ、ウェブサイトにおけるライブストリーミングやハイライト動画の配信など)されています。このため、視聴者は思い思いの手段で、好きな競技を楽しめるようになっています。
図9 ライブストリーミングやハイライト動画が配信されているBBC(英国放送協会)のウェブサイト
『NHK ロンドン 2012 オリンピック ネット生中継』では、OBS(Olympic Broadcasting Service)が制作した国際映像をそのまま利用して配信しているため、通常のテレビ放送にあるような、日本語による実況や解説などはありません。ですが、オリンピックで行われる多くの競技を、視聴者側が自由に選択して視聴できるようになったことは、非常に画期的だと思います。
競技の模様がライブストリーミング(3チャンネル)されていた2010年の冬季オリンピックバンクーバー大会から2年。今回は民放連(日本民間放送連盟)のオリンピック特設サイト『gorin.jp 』でも、ライブストリーミング(2チャンネル)が行われるなど、日本の視聴者にも、自由な競技の視聴環境が整いつつあります。
2年後の冬季オリンピックソチ大会、4年後のリオデジャネイロオリンピックと、今後もオリンピックが行われる度に、視聴者側の選択肢は広がっていくでしょう。こうした中継の変化が、人々のオリンピックの楽しみ方をどう変えていくのか、興味深いところです。
というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。