4年に一度のオリンピックとお盆休みが終了し、そろそろ夏も終わりかなと感じてきた今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。
比較が示す、メダリストの偉大さ
NYTimes.comによる2012年ロンドンオリンピックの特集コンテンツの一つ、『One Race, Every Medalist Ever』です。
オリンピック種目の一つ、陸上の「男子100m競争」をテーマに、歴代のメダリストを紹介しながら、打ち立てられてきた記録を、さまざまな角度から比較・解説していきます。数値などを並べて単に比較するのではなく、3Dモデルの使用や記録の見せ方にも工夫が感じられる内容となっています。
より深い興味のために
「男子100m競争」以外にも、水泳の「男子100m自由形」、陸上の「男子走り幅跳び」で同様のコンテンツを提供しています。
また、オリンピックでは実際に競技を視聴していても、一瞬で終わってしまったり、つい見逃したりする場面があります。ロンドンオリンピック期間中のNYTimes.comでは、こうした場面も『The First Goal in the U.S. Victory in the Women's Olympic Soccer Final』のような詳しい解説付きのコンテンツとして、連日、視聴者に提供していました。
「知識と理解」から、「興味や楽しみ」が始まるというのは、どの分野にも共通することではないでしょうか。わかりやすい解説で正しく知識を吸収し、より深い理解へと誰もが進めるための工夫がされたこうしたコンテンツが、スポーツのみならず、さまざまな分野で進んでいくことを期待したいと思います。
すべてを見せる、3つの列
イタリア・ヴィチェンツァにある高級ニットメーカー、Ballantyneの「2012-13 AUTUMN WINTER Collection」を紹介したウェブサイト、『Ballantyne』です。
インレイ(「はめこみ」の意)と呼ばれるテクニックを駆使して作られた、インレイ・ニットの製品を3つの列を使って紹介しています。画面をスクロールさせると動くこの3つの列は、画面中央の一列が逆方向に動くことで、ユーザーに非常に面白い印象を与えています。
デバイスと進化するスクロール表現
『Ballantyne』では、画像を多く使いながら、特徴的な模様を持ったニット製品が数多く紹介されています。また、製品に対するこだわりを記した文章も並んでいます。ですが、普通のウェブサイトと比べると、少し異なる点に気づきます。
このウェブサイトで気がつくのが、提供されているコンテンツの中でクリックを要求されるポイントがほとんどないという点です。この特徴は、特にスマートフォンやiPadのようなタブレット端末など、スレートデバイスが普及してきた時期から増えてきているように思えます。
パララックス(視差)などに代表されるスクロール表現を多用した場合、まだまだPCやスレートデバイスの機種によっては、動きの重いウェブサイトになることもあります。とはいえ、デバイスの性能向上と普及が進むことで、クリックを必要としないコンテンツを持った、こうしたウェブサイトが拡大していくのかどうか注視したいと思います。
オリンピックを、もう一度
IOC(国際オリンピック委員会)によるYouTube公式チャンネル、『Official Olympic Channel by the IOC』です。
先日まで開催されていた、ロンドンオリンピックのほとんどの競技(「サッカー」から「近代五種」まで)が、高画質の映像で楽しめます。また、音声も「英語」「スペイン語」「場内音声のみ」を自由に選択できます。
開会式や閉会式、その日に行われた競技のニュース映像も用意されており、用意されたナビゲーションから「日付」「国」と「競技」を選択すれば、見たい競技を素早く選択できます。「すべてを視聴するのに、いったいどれくらいの時間がかかるのか」を想像しただけでワクワクしてくる映像のアーカイブです。
未来のためのアーカイブ
日本と8時間の時差があったロンドンオリンピックでは、開会式・閉会式といったセレモニーや主要な競技の決勝が日本時間の深夜帯に行われました。そのため、翌日の仕事などを考え、競技を視聴したいという思いをこらえながら布団に入った方も多かったでしょう。
もちろん、深夜に行われた競技は日中に再放送が行われていたのですが、今度は働いている時間であるため、競技の模様をじっくりと視聴する機会を得られず、各競技のダイジェストだけを見てお茶を濁した方も多かったことでしょう。そうした方にとって、時間を気にせずに楽しめるこのアーカイブは、まさに待ち望んでいたサービスではないでしょうか。
今回公開されたアーカイブの中には、少ないながら、ロンドンオリンピック以外の映像も存在します。今後、IOCがこうした過去の膨大な映像をこのチャンネルで充実させていくのかどうかに注目するとともに、映像の中に今も生きている、オリンピックに情熱をかけた数々の選手の姿が、これから消えることなく、永遠に存在するためのアーカイブとなって欲しいと願っています。
というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。