朝晩の冷たい空気やしっとりと降る雨に、ゆっくりとした秋の深まりを感じる今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。
プロの講座、無料で提供します
各分野のプロが行う講座を無料で視聴できるウェブサービス、『 creativeLIVE』です。
図1 無料で講座が視聴できるサービス、『 creativeLIVE』
用意された「photography」「 business」「 software」「 design」「 video & film」のカテゴリーのなかから、カレンダーで見たい講座をチェックして登録すると、生放送の講座が無料で視聴できるというサービスです。
図2 各業界のプロによる講座が、無料で生中継される(再放送もある)
放送された講座はアーカイブとして販売されており、購入後はオンラインを利用して、またはダウンロードしていつでも視聴できます。
「視聴は無料」でも成り立つ仕組み
『creativeLIVE』では、各講座が無料で生中継されます。見逃した場合も、一定料金を支払うことで、講座すべてを視聴できますが、無料の生中継を見た方がお得でしょう。また、講座は短期間(3、4日)で終了するため、短期集中による学習効果の向上も期待できるでしょう。
視聴者にとって良いことばかりのサービスと思われますが、一回の講座は約6時間の枠を使って行われるため、確実に時間を確保できなければ、生放送で講座すべてを視聴するのは厳しいでしょう。つまり、『 creativeLIVE』は、まとまった時間が確保できない視聴者が、見たい講座の視聴権を購入することで成立するサービスです。
図3 「 software」のカテゴリーだけでも、多くの講座が用意されている
もちろん、この仕組みをしっかり機能させるためには、運営側が内容の充実した講座を提供しなければなりませんが、WIREDの記事 によれば、「 2010年4月のオープン以降、200カ国の100万人を超える学生が受講。売り上げに苦労はしておらず、人々は1講座あたり平均100ドルを支払っている」ということから、運営側、視聴者側、双方がメリットを感じているサービスのようです。
今年に入ってから、本連載でも紹介した『ドットインストール』 や『TheCodePlayer』 など、インターネットを利用した学習サービスが続々と登場しています。アイデアと工夫次第で、学習への意欲を向上させる方法がまだまだあることに驚くとともに、こうしたサービスがさまざまな分野へと広がっていくことを、学習者の一人として期待したいと思います。
歴史的資料を集めた、オンライン上の博物館
2012年10月11日にGoogleが公開した、20世紀の歴史的資料をデジタルアーカイブ化したウェブサイト、『 Google Cultural Institute』です。
図4 42のコレクションが用意された、『 Google Cultural Institute』
1905年から2008年までのさまざまな出来事(フランスの五月革命、D-DAY、エリザベス2世の戴冠式など)を、手紙や写真、動画やテキストなどの、貴重な歴史的資料を使って紹介しています。
図5 写真や動画などの歴史的資料が閲覧できる
オンライン上で築く、新しい博物館のかたち
『Google Cultural Institute』の「概要」 によれば、Googleは専門のチームが文化遺産の公開を簡単に行えるツールを開発することで、オンラインでの文化の保存と普及を支援しているということです。
『Google Cultural Institute』の概要を紹介した動画
Googleは"文化財をインターネット上でアーカイブする"試みを以前から行っています。"博物館に足を運ぶことなく、オンライン上で、誰もが歴史的資料を閲覧できる"という『Google Cultural Institute』では、インターネットが普及した現代における、"新しい時代の博物館のかたち"を提示しようとしているのかもしれません。
現在は英語版のみが公開されていますが、ウェブサイトに言語の切換を行うメニューがあることから、今後はさまざまな言語で『Google Cultural Institute』が楽しめるようになるでしょう。インタラクティブな効果を用いたオンライン上の博物館が、これからどんな影響と広がりを見せるのか注目していきたいと思います。
コミュニケーションで"世界を変える"
ファッションセレクトショップの「UNITED ARROWS」による、「 UNITED 世界を変える ARROWS」のキャンペーンサイト、『 UA TRANSFORM SHOW』です。
図6 「 UNITED ARROWS」によるキャンペーンサイト、『 UA TRANSFORM SHOW』
credits:SIMONE INC. 、PLUG-IN GRAPHIC 、tha.ltd. 、マガジンハウス 、伊藤総研株式会社、山本康一郎事務所
ウェブサイトでは、キャンペーン中に「UNITED ARROWS」の店舗で行われる「UA TRANSFORM SHOW」の解説や、実際に「UA TRANSFORM SHOW」で"世界が変わった"有名人12人の写真、コンセプトを紹介したドキュメントムービー、キャンペーン中の来店者の写真などが紹介されています。
図7 なめらかな縦と横の動きが心地よい
マウスのスクロールを利用したナビゲーション項目のなめらかな縦移動と、コンテンツを紹介する横移動の組み合わせで、操作感も楽しいウェブサイトとなっています。
「店舗で服を買う」という意味
2012年10月12日からスタートしたこのキャンペーンでは、「 UNITED ARROWS」の店舗で、「 情熱接客バッジ」をつけた販売員が、10分間で来店者の世界を変えるスタイリングを提案し、来店者は提案された服を着用し写真を撮影するという店頭イベント、「 UA TRANSFORM SHOW」が行われます。
「UA TRANSFORM SHOW」のコンセプトを表現したドキュメントムービー
苦痛にならない「10分間」という時間と販売員とのコミュニケーション、自分が着る服を販売員に任せることで新たな自分を発見できるおもしろさなど、ウェブサイトだけでなく、実際の店舗で行われるイベントに参加したいと思わせるイベント内容です。
図8 販売員と来店者のコミュニケーションは、「 Instagram」による写真で紹介
先日も「Gap」が日本でオンラインストアを開始する など、最近ではファッションブランドがオンライン販売により重きを置く流れが続いています。個人的にも、店員さんと顔を合わせず、実際に商品を手に取ることもなく、オンラインストアで服を購入する機会が増えています。
こうした中で、人と人とのコミュニケーションの基本に立ち返り、実際に「店舗に行ってみたい」と思わせるアイデアの数々が秀逸なこのキャンペーン。硬直化しつつある自分のファッションを壊し、新たな自分を見つけ出す良い機会として、時間を作って店舗を訪れてみたいと思っています。
というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。