次第に厳しくなる寒さに耐えながら、今年の紅葉はどうかと気になり始めた今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。
年賀状に、手書きのやさしさを
年賀状作成ツール「はがきデザインキット2013」の素材が制作できる、郵便年賀.jpの『手書き風毛筆ツール』です。
『手書き風毛筆ツール』では、3種類の筆と13の色を使い分けながら、マウスを使ってブラウザ上に毛筆風の文字や絵が書けます。筆の動かすスピードによって、和紙の上に描くように「かすれ」や「にじみ」が発生するなど、多彩な表現が可能です。
『手書き風毛筆ツール』で作成した素材はダウンロードが可能で、年賀状の素材として利用できるだけでなく、TwitterやFacebookで共有もできます。
さらに進む"意味ある"SNSとの連携
「墨色のみ」といった制限がないことや、筆の移動スピードを使った豊かな表現が可能なことから、『手書き風毛筆ツール』は、イラストを描くためのツールとしても利用され始めています。
特に、直前の筆跡を取り消す機能がなく、「書き直す」を選択した場合には「描いていたものすべてが消去される」という制限は、作品の制作にも良い緊張感を与えているようで、すでにFacebookやTwitterに多くの個性的な作品が投稿されています。
「年賀状の素材を作るツール」という本来の目的だけを考えれば、SNSの使用は必要ないはずですが、ユーザー側の楽しみ方を広げるための利用が見事なため、SNSを通じて話題が広がったのは当然とも言えます。今後はウェブサイトでも、こうした"意味のある"SNSの連携が必須となっていくでしょう。「2013年1月31日まで」というコンテンツの利用期間が残念ですが、「年賀状の素材を作る」という考えを飛び越えた使い方を、ぜひ楽しんでもらいたいと思います。
アメリカ大統領選挙、知っていますか
在日アメリカ大使館が運営する「Connect USA」による、2012年11月6日のアメリカ大統領選挙をフィーチャーしたウェブサイト、『2012 アメリカ大統領選挙』です。
アメリカ大統領選挙を楽しむためのポイントを、各党のシンボルカラーとマスコット、政策や考え方の違い、歴代大統領の紹介など、さまざまな項目から解説しています。
日本でも毎回話題となるアメリカ大統領選挙ですが、政党の違いや選挙の仕組みなどを理解している人は意外に少ないのではないでしょうか。興味はあるものの、どのように大統領選挙を見ればよいのかわからない人たちにとって、『2012 アメリカ大統領選挙』は、要点が上手にまとめられ、非常にわかりやすい内容となっています。
多彩なコンテンツが生まれる理由
前回の2008年アメリカ大統領選挙でもそうでしたが、今回も"4年に一度"のアメリカ大統領選をテーマにしたウェブサイトが多数登場しています。
美しく、インタラクティブなインフォグラフィックに定評がある「NYTimes.com」では、大統領候補者の2人がどの州で勝利すれば大統領になれるかのルートを表した『Paths to the White House』を公開しています。
企業側もこの機会を逃さず、LCC(ローコストキャリア)の「JetBlue」が行った『JetBlue Election Protection 2012』では、「落選した候補者を応援した人が選挙結果に悲観して海外へと脱出するのを、無料の往復航空券をプレゼントして手助けする」という内容の大胆なキャンペーンを行っています。
こうした事例を見ると、多彩なコンテンツやキャンペーンが登場するほど、「大統領選」というテーマがアメリカの社会に根付いていると言えるでしょう。日本では、アメリカ大統領選挙における勝者総取り方式のような仕組みがなく、ダイナミックな展開になることは少ないですが、12月に行われる衆議院議員総選挙の際には、どんなコンテンツが生まれるのか注目したいと思います。
モバイルから飛び出した「Instagram」
2012年11月5日、写真共有サービス「Instagram」が発表した、PC用のプロフィール「Web Profile」です。
instagram.comの後にユーザー名(http://instagram.com/ユーザー名)を追加したアドレスにアクセスすると、そのユーザーの「Web Profile」がPCのブラウザから閲覧できます。画面右上から「ログイン」すれば、他ユーザーのフォローや写真へのコメントなども行えます。
画面上部にユーザーの投稿した画像がタイル状に並び、左下にプロフィール画像、さらにその下にユーザーが投稿した画像がグリッドに沿って並ぶ「Web Profile」のデザイン構成は、2012年4月に「Instagram」を買収した、Facebookのタイムラインによく似ています。
見過ごせない「接触時間」と「収益性」
今回発表された「Web Profile」には、モバイル版にある機能の一部(フィードに流れてくる写真の閲覧、ユーザー名やハッシュタグを使った検索など)はありません。とはいえ、今までモバイル版のみで展開されていたサービスが、なぜPCへの展開を始めたのでしょうか。
個人的には、この「Instagram」のPCへの展開は、「ユーザーのサービスに対する接触時間を長くすることが目的」ではないかと考えています。モバイル端末は、いつでもアクセスが可能な反面、サービスへの接触時間が細切れの短い時間となります。しかし、PCではアクセス可能な場所と時間が限られるものの、まだまだ生活の中で接する時間が長く、サービスへ接触するためのまとまった時間が取りやすくなります。
こうしたサービスへの接触時間の長さは、特に「Instagram」を利用しようとする企業にとって、重要視すべき点となるでしょう。今回「Instagram」が発表した「Web Profile」を利用すれば、企業やブランドは自社の製品をアピールできるだけでなく、オンラインショップへのリンクなど、実際の売り上げへとつながる導線を築けます。すでにこうした点から、「Web Profile」を利用して、いくつかの企業が自社の製品紹介を始めています。
こうしたサービス内容の変化の底には、やはり"収益化"という問題が関係してくるでしょう。同じように画像を中心としたウェブサービスとして有名な「Pinterest」も、ユーザーとの接触機会と時間を増やすために、幅広いデバイスにサービスを対応させ、企業の公式アカウントを認めるなどして、収益を上げる方法を模索しています。
現在、モバイル版のみのウェブサービスも数多く存在しています。そうしたサービスがこれからPC向けのサービス拡大を進めるのか、それとも、モバイルでの接触時間をさらに増やす方向へと舵を取るのか。さまざまな環境が変化する中で、画像を中心としたサービスがどう進化していくのか。サービスの内容だけでなく、利用する側のユーザーの変化についても、これから注目していきたいところです。
というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。