年末の忙しさの中、休憩時の温かい飲み物が最高に美味しい季節になってきた今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。
投票前の情報、全部まとめました
2012年12月16日に行われた、第46回衆議院議員総選挙の投票のために、有権者が必要な情報をまとめたGoogleの特設サイト『Google 選ぼう 2012』です。
図1 選挙前に必要な情報がまとめられた『Google 選ぼう 2012』
政治家や政党に関する情報の提供だけでなく、ビデオチャットの「Google+ Hangouts」を利用して、一般から選ばれた10人が主要8政党の代表に直接質問するというイベント、「 政治家と話そう」も開催されました。
図2 「 政治家と話そう」は、「 Google+ Hangouts」を利用した生放送イベント
編集されない生放送での意見のやり取りを見て、自分の投票先を決める参考にした人もいたのではないでしょうか。この「政治家と話そう」の終了後は、各党首の主張が5つの項目にまとめられ、映像のアーカイブとともに、有権者が比較しやすいように公開されています。
有権者向けコンテンツの今後
年末に行われる選挙ということでは、『 日本政治.com 』が提供した「投票マッチング」もかなり役に立ったのではないでしょうか。「 投票マッチング」は、政策に関する20の質問に答えると、ユーザーの考えに最も近い政党を判定してくれるというもので、忙しい有権者にとっては、時間を有効に使えるありがたいコンテンツです。
図3 質問に答えるだけで、有権者の考えに近い政党を教えてくれる『日本政治.com』の「投票マッチング」
今回もインターネットを利用した選挙活動が認められることはなく、選挙戦へと突入してしまいましたが、過去の選挙時と比較すれば、今回紹介したような優良なコンテンツの登場によって、有権者が政治への興味を持つ機会は増えてきたのではないでしょうか。
ウェブサイトの更新を含め、公職選挙法の第142条「文書図画の頒布」の禁止行為にあたるとして、現在もインターネットを使った選挙運動は制限されています。しかし、政治家自身がYouTubeやTwitterなどのSNSを広く利用するようになり、「 政治活動」と「選挙運動」の区別が非常に難しくなってきていることを考えると、こうした時代にそぐわない制限が解除される日も近いと感じています。
インターネットを利用した選挙運動は、必ずしも良い面ばかりではありませんが、政治家と有権者の距離がより近くなる可能性を秘めています。お互いの理解が深まるだけでなく、インターネットで政治家が有権者にどのようなメッセージを発信できるのか、そして、どんなコンテンツを用意するのかを今から期待したいと思います。
より手軽に使えるウェブフォント
「Pay As You Go」と呼ばれる、新しいライセンス形式でのウェブフォント販売が始まった『MyFonts』です。
図4 「 Pay As You Go」形式のウェブフォント販売が始まった『MyFonts』
『MyFonts』では、「 Pay Once」というライセンス形式(1か月間のページビューが制限を超えない限り、一度購入すれば継続的に利用できる)でウェブフォントが販売されていましたが、ここに「Pay As You Go」という新しいライセンス形式が追加されました。
図5 ウェブフォントをカートに入れると「Pay As You Go」の表示がされる
「Pay As You Go」は、25万ページビュー制限のあるウェブフォントを販売するという仕組みです。フォントによって異なりますが、購入後に設定されたページビューを超えた場合は連絡が来るため、追加料金を支払う必要があります。現時点でも多くの有名フォント(Helvetica、Frutiger、DINなど)が対応しており、非常に魅力的なライセンス形式となっています。
「Pay As You Go」が、表現を広げるか
ここ数年で、国内外のウェブフォントサービスはかなり充実してきましたが、その多くは「一定の金額を毎月支払う」というライセンス形式が一般的です。ただし、こうしたライセンス形式は、アクセス数の少ない小規模のウェブサイトなどでは、コストの面などから、利用するのが難しい場合もあります。
『MyFonts』の「Pay As You Go」というライセンス方式では、有名書体が低価格で利用できること、ページビューの分だけ料金を前払いするという形になることから、毎月のページビューがばらつくウェブサイトや、デザイナーなどのポートフォリオでも利用機会が増えるでしょう。
ウェブフォントとして、有名なフォントが手軽に使えるようになれば、ウェブサイト上での表現の幅は大きく広がります。また、こうしたウェブフォントの利用が拡大することで、より低価格なサービスの提供が行われる可能性もあります。日本ではまだ数が少ないですが、こうしたライセンス形式の多様化から、ウェブフォントを利用した素晴らしいウェブサイトが増えてくることを楽しみにしたいと思います。
新車の告知は、アニメーションで
メルセデス・ベンツ日本公式サイトによるプロモーションサイト、『 NEXT A-Class』です。
図6 メルセデス・ベンツの新型Aクラスを告知する『NEXT A-Class』
ウェブサイトでは、2013年1月に発売するメルセデス・ベンツの新型Aクラスの告知として制作された、オリジナルアニメーションが公開されています。アニメーションは近未来の東京を舞台に、男女3人が乗った新型Aクラスが、街中でカーチェイスを繰り広げるというストーリーになっています。
図7 アニメーションやスタッフの紹介、プレゼントなどのコンテンツが並ぶ
また、公開されている約6分のアニメーションの制作に、貞本義行さんや「Production I.G」など、日本が誇るアニメーション業界のクリエーターが数多く関わっていることも話題となっています。
新たなユーザーの獲得を目指したプロモーション
もう一つ、最近注目したプロモーションを紹介したいと思います。Sonyによるブルーレイディスクレコーダーのスペシャルサイト、『 俺とローラとソニーのブルーレイ 』です。こちらは機能を解説した動画やTVCMが配信されていますが、俳優の山下真司さんとモデルのローラさんを起用した、大胆な言葉づかいやグラフィックが話題です。
図8 TVCMと同様にダイナミックな『俺とローラとソニーのブルーレイ』のウェブサイト
『NEXT A-Class』 、『 俺とローラとソニーのブルーレイ』の両方とも、今までTVCMや広告などで伝えていた企業イメージとは異なる内容となっています。今までのイメージを大きく変える、こうしたプロモーションをなぜ実施するのでしょうか。
現在、日本の家電メーカーが大幅な最終赤字を計上しているのは周知の事実ですが、Sonyもその例に漏れず、ここ数年は厳しい経営環境にさらされています。またMercedes-Benzも、Audiの「A1」やBMW「MINI」「 1シリーズ」などの好調もあり、プレミアムコンパクトカーにおける激しいシェア争いの中にいます。
こうした中、今までと同じように既存のターゲットに訴えても大きな動きはありません。もちろん、売り上げに結びつかないだけでなく、新たなユーザー獲得の効果もありません。そう考えると、"動く"ユーザー層の開拓と拡大するための新たなプロモーション方法が必要となってきます。
特に『NEXT A-Class』で公開されているアニメーションは、TVCMとしてだけでなく、先日公開された映画「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」を上映する全国の映画館で流されるなど、今までメルセデス・ベンツがターゲットとしていた層に向けたプロモーションとは、明らかに異なっています。
YouTubeで公開された『NEXT A-Class』は、200万回の再生を超えた
すでにYouTubeで公開されたアニメーションが、すでに200万回の再生を突破しているこのプロモーション。こうした話題の広がりとともに、新たなユーザーの獲得と販売へとつながるのか。想定するターゲットの変化から、企業の新しい動きが垣間見えた興味深いプロモーション事例ではないでしょうか。
というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。