実家から送られてきたトウモロコシの皮をむき、茹でたてを頬張りながら、夏の近づきを感じる今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。
空き時間に合わせた、ハイライト動画
FIFAコンフェデレーションズカップ2013の開催に合わせて公開された、『 みんなのハイライト』です。
図1 長さの異なる3種類の動画が用意されている『みんなのハイライト』
ウェブサイトでは、コンフェデレーションズカップで行われた各試合のハイライト動画が視聴できます。一つの試合に対して、長さの異なる3種類の動画(90秒、3分、10分)が用意されているため、ユーザーは自分の空き時間に合わせてハイライト動画を楽しめます。また、試合によっては細かいシーンごとに分けられた動画も用意されており、SNSなどを利用した共有も可能です。
図2 試合によっては、シーン別のハイライト動画も用意されている
効率良い情報の取得が生み出すもの
今回のコンフェデレーションズカップはブラジルで開催されています。そのため、各試合の開始時刻は日本の早朝となり、試合を生放送で楽しむのは大変です。とはいえ、短期間の大会ですから、各チームの状況を把握できずに試合を視聴すれば面白さが半減してしまいます。そうなると、時間が限られた中で、自分に合った試合結果を知る必要が出てきます。
『みんなのハイライト』では、3つの長さの動画を用意しています。ゴールシーンを中心に試合結果を重視したものや、試合全体の流れをつかみやすいように長めに編集されたものなど、時間と内容の異なる動画を用意しているため、ユーザー自身が自分の都合に合わせた動画を視聴でき、満足度も高くなるでしょう。
図3 要約サービスの一つ、livedoorニュース(スマートフォン版)の「ざっくり言うと」
こうしたユーザー側に合わせたサービスとしては、昨年から始まっているlivedoorニュースの「ざっくり言うと」や、Yahoo!に買収された「sumally」などの、文章や内容の要約といった分野が特に注目されています。日々の生活の中で、自由な時間を確保できない人にとっては、非常にありがたいサービスでしょう。
今後もこうした時間を有効に使えるサービスは拡大していくでしょう。サッカー好きのひとりとしては、「 試合は始めから終わりまで見て欲しい」と思いますが、その人に合った楽しみ方ができる選択肢が増えることで、興味を持つ人が増えるのであれば、こうしたサービスも悪くはないと感じています。
フォロワー数“0”のプロモーション
自動車メーカーFIATのコンパクトスポーツカー、「 FIAT ABARTH 500」のTwitter公式アカウントです。
図4 フォロワーの数が“ 0” の「FIAT ABARTH 500」のTwitter公式アカウント
公式アカウントでは、「 ABARTH 500. Too fast to follow.(ABARTH 500。速すぎて、誰もフォローできない) 」というメッセージが掲げられています。そして、そのメッセージを証明するように、フォロワーの数は0となっています。
図5 フォローすると一瞬だけ、フォロワー数が変更されるが…
“誰もフォローできない” という挑戦的な文言に、本当かどうか試してみたくなる人も多いのではないでしょうか。
実際にこのアカウントをフォローすると、一瞬だけフォロワー数が変更されますが、すぐ0の表示になります。再びフォローしようとしても、「 You have been blocked from following this account at the request of the user.(ブロックされているのでこのユーザーをフォローすることができません) 」と表示されます。
フォローさせないという“逆転の発想”
SNSにおける企業のプロモーションでは、“ 自分たちをフォローする人数をどうやって増やすか” ということに対して、さまざまな工夫を凝らしています。最近ではプレゼントなどを用意して、Twitterでフォローさせたり、facebookで「いいね!」を押させたりする手法が多く見られます。
図6 フォローするとダイレクトメッセージ(左)が送られ、キャンペーンサイト(右)へと誘導される
今回の事例では、フォローさせないことで、逆にユーザーに注目させるという方法を取っています。もちろん、単にフォローを拒否するのではなく、アクションを起こしてくれたユーザーには、ダイレクトメッセージを送信して、現在行われているキャンペーンサイトへと誘導しています。少しでも興味のあるユーザーに対して情報発信するという点でも、効率の良いプロモーションと言えるでしょう。
数を増やすのではなく、増やさないことで、逆に印象に残るよう仕向けたこのプロモーション。数を増やすことにこだわらず、全く逆のやり方でユーザーにアプローチが可能なことを実践して見せた、非常に秀逸なプロモーション事例です。
デジタルに心をこめたキスマーク
新しい広告を追求するGoogleの実験プロジェクト「Art, Copy & Code 」から生まれた、イギリスのファッションブランドBurberryとのコラボレーションプロジェクト、『 Burberry Kisses』です。
図7 BurberryとGoogleのコラボレーションプロジェクト、『 Burberry Kisses』
credits:Grow 、Google
ウェブサイトにアクセスしたユーザーは、PCならばウェブカメラを使って、モバイル端末の場合は直接画面にキスして、キスマークを撮影します。こうして撮影されたキスマークを、メッセージとともにメールで送信できるというサービスです。
図8 ユーザー自身のキスマークをつけたメッセージが送信できる
送信したメールが相手に届くまでの経路は、アニメーションで表示されます。またウェブサイトでは、世界中のメールの送信がリアルタイムで確認できます。
印象に残るプロモーションにする仕掛け
個人のSNS利用の拡大とモバイル端末の普及で、商品やクーポンなどを獲得するような仕組みを利用して、より多くのユーザーの参加を実現するキャンペーンが次々と登場してきています。その反面、心に残り、時間が経過しても思い出せるようなプロモーションやキャンペーンは、やや少なくなってきたように思います。
内容が面白そうなキャンペーンでも、手順が複雑になれば、実際に参加するユーザーは少なくなってしまいます。かと言って、、クリックやタップのみで済むような単純な仕掛けでは、似たような多くのキャンペーンがあふれる中で、ユーザーに大きな印象を残すのは非常に難しくなってきています。
「Burberry Kisses」の内容を説明した動画
この『Burberry Kisses』では、メール送信を完了するまでに、ユーザー自身が自分の体を動かすというステップを挿入しています。こうした部分を作ることで、単純な指先の動作とは異なり、ユーザー自身に「参加した」「 行動した」「 やった」という感覚を与え、プロモーションが記憶に残りやすくなる仕掛けを実現しています。
“手軽に参加でき、強く印象に残る仕掛けをどう実現するか” という問いかけに対する、ひとつの答えともいうべきこのプロモーション。より深いユーザーとの対話やつながりヘの第一歩として、面倒にならない程度に、ユーザーの動きや行動を利用する事例が増えるかもしれません。
というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。