過ごしやすくなってきた日中の清々しさを感じつつ、朝夕の気温差に体調を崩さないように早寝早起きを始めた今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。
"100回目"という重み
2013年に第100回大会を迎えた、自転車プロロードレース「ツール・ド・フランス」の100年をインフォグラフィックで表現したコンテンツ、『 100 ans de tour』です。
図1 ツール・ド・フランス全100回のデータを美しいインフォグラフィックで表現した『100 ans de tour』
credits:Bastien Lardeux ,Ke'vin Lagier ,Monteil Florentin ,Se'bastien LAMBLA ,Nicolas Matt
ツール・ド・フランスの個人総合成績1位の選手に与えられる黄色のジャージ「マイヨ・ジョーヌ (maillot jaune)」の黄色、白、黒を基調に、シンプルな図形を組み合わせながら、全100回のデータ(各年度のルートや各選手の成績など)を、インフォグラフィックで表現しています。
図2 シンプルな図形で構成されたインフォグラフィックが美しい
大きな節目が生み出すコンテンツ
ツール・ド・フランスの100回大会を記念したコンテンツは、これ以外にも登場しています。そのなかから、Google Franceと84.Paris による『Your Tour』 を紹介します。
図3 Googleの持つコンテンツを最大限に利用した、『 Your Tour』
Google MapsやGoogle Street View、YouTubeやGoogle+など、Googleの持っているコンテンツを最大限に利用したツール・ド・フランスの100回大会を記念したウェブサイトです。画面をスクロールさせながら、ツール・ド・フランスの特徴的なコースを追体験できるという内容で、マウスのスクロールホイールを回しながら場面を進めていくと、実際に自分が自転車に乗ってレースに参加している気分になってきます。
図4 スクロールホイールを回しながら、各コースを進んで行くという方法が面白い
今回、100回目を迎えたツール・ド・フランスを題材にしたどちらのコンテンツも、表現方法こそ異なるものの、「 100年という歴史的な重みを伝える」という根底の部分は同じです。こうした大きな節目の年だからこそ、実現したコンテンツと言えるかもしれません。
2012年の株式会社帝国データバンクによる調査結果 によれば、2013年に100周年を迎える日本の企業は約1400社存在し、記念商品の販売やキャンペーンが実施されています。今年も残り3カ月を切りましたが、こうした企業から、特にウェブサイトを中心とした、素晴らしいコンテンツが登場することを期待したいと思います。
ただ、クッキーを増やすだけ
2013年9月中旬から、Twitterなどを通じて、爆発的な広がりを見せているブラウザゲーム『Cookie Clicker』です。
図5 クッキーを増やしていくゲーム、『 Cookie Clicker』
credit:Orteil
ゲームの目的は、画面左に表示されているクッキーをマウスでクリックしながら、その数を増やしていくという単純なものです。クッキーを次々と増産するためにおばあちゃんを増員したり、一風変わった方法や機械(錬金術、タイムマシン、反物質コンデンサなど) 、アイテムを利用する独特の世界観も魅力の一つです。
図6 独特のアイテムやレベルアップ方法も、『 Cookie Clicker』の魅力のひとつ
「分かりやすさ」と「手軽さ」
『Cookie Clicker』は、演出なども地味で、グラフィックも飛び抜けて美しいとは言いがたいのですが、「 クリックしてクッキーを増やしながら、そのクッキーを使い、さらに多くのクッキーを生産する」という目標の明確さが、多くのユーザーに受け入れられた理由の一つでしょう。
また、クッキーの生産数に応じたレベルアップやアイテムの獲得といった要点を抑えたゲーム性、アクセスしてすぐに遊べる手軽さも、多くのユーザーを集めた特徴の一つとして挙げられるでしょう。
図7 プレイ時間が600時間を超えた『Cookie Clicker』の画面
手軽にゲームを楽しむということであれば、スマートフォンの無料アプリでゲームを楽しむ(始める)のが、最近の主流となっています。こうした流れとは異なる今回の事例ですが、コンテンツのURLを伝えるだけで"ブラウザですぐ楽しめる"という部分は、さまざまな分野で応用できそうです。次のバージョンではダンジョンの追加が発表されており、要素の追加でゲームにどんな変化が生まれるのか、今から非常に楽しみです。
「検索」と「3Dプリンター」の融合
Yahoo! JAPANが開発した、未来の検索サービスコンセプトモデル、「 さわれる検索」のウェブサイトです。
図8 「 検索」と「3Dプリンター」を組み合わせた『さわれる検索』
「さわれる検索」は検索と3Dプリンターを組み合わせたサービスで、音声入力で認識したキーワードを3Dプリンターで出力するというものです。
「さわれる検索」マシンのメイキング動画
この仕組みを実現した装置も実際に制作されており、装置に向かって検索したいものを話すと、その結果と説明が音声と画面に出力されるだけでなく、3Dモデルをもとにした立体物が制作されます。
"触感"から始まる、新しい検索
今や"検索"という行為を行わない日はないでしょう。誰もが検索によって得られた情報を、意識することなく利用しています。その反面、検索から新しさや新鮮さ、生活を一変させるような感覚はなくなりつつあります。
こうした中で、登場してきた『さわれる検索』には、「 また新しい検索の世界を提供してくれるのではないか」という期待感を持っています。文字や画像、映像などの検索結果とは異なり、今までなら考えたり、想像したりするしかなかった検索結果が、現実のものとして登場してくるという驚きと、形や重さなどの触感が感じられるという、新たな方向性を示したことは本当に素晴らしいと思います。
「さわれる検索」が、実際に学校で稼働している様子
また、ビジョンや理論だけといった"絵に描いた餅"ではなく、実際に学校(筑波大学附属視覚特別支援学校)で稼働させ、いままでに生徒が体験したことのない、新しい世界を提供している点には感動を覚えます。
検索の新たな方向性を示しただけでなく、新しい世界を提供することにも成功しているこのプロジェクト。もちろん、こうした検索方法が新しい流れとなるかには疑問も残りますが、驚くような動きのなかった検索の世界に登場したこのプロジェクトを、ぜひ一度、どこかで体験してみたいと思っています。
というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。