いよいよ2013年も終わりに近づき、忙しい毎日を迎えながらも、年末年始の大型連休をどう過ごそうかとワクワクしている今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。
楽しく学べる、Processingの世界
ビジュアルデザインやインタラクションデザインなどの分野におけるプログラミングに特化した、オープンソースのプログラミング環境である「Processing」の基礎をわかりやすく解説する『Processing Hour of Code』です。
図1 「 Processing」を初歩から解説している『Processing Hour of Code』
credits:Daniel Shiffman , Scott Garner , Jesse Chorng , Graham Mooney , Scott Murray , Casey Reas
ウェブサイトでは、動画で「Processing」を使った実例を説明しながら、実際にコードを実行して、基本的な「Processing」のプログラミングを学べる仕組みになっています。プログラミング学習の動画にしては、良い意味で飽きさせない動画になっており、少しでも興味があれば、非常に楽しく学習できるのではないでしょうか。
図2 動画やコードを見ながら、楽しく「Processing」が学べる
「プログラミング」は、未来の「読み・書き・そろばん」となるか
アメリカでは、12月9日からComputer Science Education Week(コンピュータサイエンス教育週間)が始まりました。「 K-12」と呼ばれる幼稚園から第12学年(日本の高校3年生に相当)までの生徒がコンピュータサイエンスに触れるためのプログラムですが、この教育週間に合わせて始まったのが、Code.org によるキャンペーン、「 Hour of code(コードの時間) 」です。
これはアメリカで生徒を教える教師全員に、「 コンピュータサイエンスとプログラミングを生徒たちに教える時間を確保するよう求める」というもので、バラク・オバマ大統領をはじめ、ビル・ゲイツやマーク・ザッカーバーグ、有名俳優などが登場するプロモーションビデオが話題となっています。
有名人が多数登場して話題となった「Hour of code」の趣旨を説明した動画
動画に登場するのは誰もが知っている有名人ばかりで、このキャンペーン自体にかなりの力が入れられていることがわかります。もちろん、動画の豪華さだけでなく、GoogleやMicrosoft、Appleなど、多くのコンピューター関連企業がこのキャンペーンに参加しています。また、先程紹介した『Processing Hour of Code』も、このキャンペーンの一環として制作されたコンテンツです。
アメリカでは、こうした若年層に対するプログラミング教育が非常に活発です。また教育だけでなく、以前この連載でも紹介した「Codecademy 」のようなプログラミング学習サービスも次々と登場しており、国全体でプログラミング能力を身につけさせようとする熱意を感じます。
日本ではプログラミング自体が「特殊な能力を持つ人がすること」という考えがまだ残っており、誰もが気軽に始めるという状況ではありません。とはいえ、日本でも、基礎的な能力・学力としての「読み・書き・そろばん」があるように、論理的な思考を育むための基礎学習として「プログラミング」が広がり、やがて当たり前の時代となる日が近づいている気がします。
ネットで手軽に車が買える時代へ
2013年12月3日、ドイツの自動車メーカーDaimler AGが開始した自動車のネット販売サイト、『 Mercedes-Benz connect me Hamburg.』です。
図3 Daimler AGによるが開始した自動車のネット販売サイト『Mercedes-Benz connect me Hamburg.』
ドイツ・ハンブルクのMercedes-Benz販売代理店を通じて、「 Mercedes-Benz」ブランドの高級車である「A-Class」「 B-Class」「 CLA-Class」「 CLS Shooting Brake」の4車種が、ウェブサイトから購入(またはリース契約)が可能となります。各車種とも標準仕様モデルのみを販売するため、納車時間は1ヶ月ほどで済むということです。
ネット販売で"若年層の自動車離れ"は止まるのか
『Mercedes-Benz connect me Hamburg.』で販売される各車種の価格は、既存の販売店への配慮として、値下げされてはいません(販売店と同価格) 。つまり、今回のネット販売は、あくまでも"新たな車の販売手段の提供"と"ネットで車が購入できるという利便性"をアピールしていると考えられます。
図4 「 Mercedes-Benz CLS」購入時には「ベルリン・ファッションウィーク 2日間のVIPチケット」が特典として与えられるが、車両の価格は販売店と変わらない
日本でも"若年層の自動車離れ"という言葉を目にすることが多くなってきていますが、この『Mercedes-Benz connect me Hamburg.』が開始されたドイツでも状況は似ているようで、「 新車購入層のうち、30歳未満はわずか7%弱」というのが現実です。
すでにMercedes-Benz以外のヨーロッパの各自動車メーカーも試験的に車のネット販売を行っており、こうした流れがいずれ日本に波及しても不思議ではないでしょう。新たな販売手段を用意することで、若年層への販売台数が増加していくのかどうか、注視していきたいと思います。
街にある文字が、フォントに生まれ変わる
古い町並みにたくさんある、個性的でステキな文字たちを「のらもじ」と名付け、それらを発見・分析してフォント化を進めていく「のらもじ発見プロジェクト」のウェブサイトです。
図5 『 のらもじ発見プロジェクト』のウェブサイト
credit:下浜 臨太郎 、西村 斉輝 、若岡 伸也
現在、9つの店舗の個性的な「のらもじ」のフォントが公開されています。各店舗の下に用意されたテキストボックスに文字を打ち込むと、フォント化された「のらもじ」が試し打ちできるのですが、入力した文字が多くなると、お店の看板と店舗が横に広がっていく様子がユニークで楽しいです。
図6 文字を入力すると看板と店舗が横に広がっていく
また、各店舗の看板から制作されたフォントの説明や書体見本(五十音) 、「 のらもじ」がある各店舗の関係者へのインタビューなど公開している「FONT」 、TwitterやInstagramにハッシュタグ「#noramoji」を付けて投稿された、ユーザーからの「のらもじ」画像をまとめた「PHOTOSTREAM」というコンテンツも用意されています。
図7 看板文字が生み出された経緯なども公開されている
対価の還元が生み出す、再生の仕組み
「のらもじ発見プロジェクト」では、実際に「のらもじ」の所有者に許諾を得た上で、フォントの制作が行われています。制作された「のらもじ」は代金(100円、500円、1,000円から選択)を支払うか、SNS(TwitterかFacebook)でシェアすることで、ダウンロードが可能です。
「のらもじ発見プロジェクト」の概要を説明した動画
また、制作されたフォントを使ってデザインされたTシャツも販売(3,500円)されており、これらの売り上げは「のらもじ」フォントを制作する元になった店舗へと支払われる(一部は「のらもじ発見プロジェクト」の活動資金に充てられる)仕組みとなっています。
図8 制作されたフォントでデザインされたTシャツの売り上げは、看板文字のある店舗へと還元される
都市部では、このプロジェクトに登場するような個人経営の店舗をあまり見かけなくなってきました。昔ながらの商店街も、地域住民のライフスタイルや生活圏の変化によって、じわじわと消えつつあります。
こうした中で、その店にしか存在しない文字をフォントとして再生させて今後に伝えるだけでなく、店舗へとフォントの対価を還元させることで、少しでも長く実際の文字を存在させるという意味でも、非常に意義のあるプロジェクトではないでしょうか。
というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。