食欲の秋を堪能しつつも、毎週日本列島に上陸してくる大型の台風が早く収まらないかなと思う今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。
本当に役に立たないウェブサイト集
どう見ても「役に立たない」と思われるウェブサイトを次から次へと紹介してくれる、『 The Useless Web』です。
図1 「 役に立たない」ウェブサイトを次々と紹介する『The Useless Web』
credit:Tim Holman
ウェブサイトには、「 TAKE ME TO A USELESS WEBSITE(役に立たないウェブサイトに連れてって) 」というメッセージが表示されており、その下にある「PLEASE」のボタンを押すと、さまざまなウェブサイトへとユーザーを案内してくれます。メッセージの通り、紹介されるウェブサイトははっきり言って役に立たないウェブサイトばかりですが、あまりのくだらなさに、ついつい時間を費やしてしまいます。
固定化したウェブサイトの姿
『The Useless Web』で紹介されるウェブサイトのほとんどは、"一発ネタ"ともいうべき、非常にシンプルで個性的な内容で構成されています。深く考えず、時間を忘れ、次々と紹介されるウェブサイトを見ていくことが、本来の楽しみ方でしょう。
図2 『 The Useless Web』で紹介されるウェブサイトの一部(左から『le duchamp.com by rafa?l rozendaal』『 I Love You Like A Fat Lady Loves Apples』『 Eel slap!』 )
最近では、情報を提供する方法としてのウェブサイトが一般化しており、検索などのリンク先から"おかしな"ウェブサイトに誘導されることはほとんどありません。ユーザーが必要な情報をウェブサイトを通じて、安全・確実に得られるようになってきたことは、ウェブサイトの正常な発展ともいうべきで、実に素晴らしいことです。
その反面、どこかで見たようなコンテンツばかりで、ウェブサイトが持っていた個性とも言える、"玉石混淆の世界観"が薄れているようにも感じています。誰もが考えるウェブサイトの姿が固定化しつつある今だからこそ、こうした実験的なウェブサイトの存在意義が、もう一度見直される時期に来ているのかもしれません。
読みやすく、わかりやすく
オンライン写真コミュニティ「500px」のサービス利用規約を説明する、『 500px / Terms of Service』です。
図3 「 500px」のサービス利用規約とその要約が並ぶ『500px / Terms of Service』
ページの左側には、「 500px」のサービス利用規約が表示されています。その右側には「 Basically, ( 基本的には、) 」という見出しとともに、左側に書かれた利用規約の要約が並んでいます。このため『500px / Terms of Service』では、確認するのに時間がかかる利用規約を、要点を抑えつつ素早く理解できるようになっています。
わかりやすさをどう実現するか
ウェブサービスがアップデートされる度に、こうした利用規約は変更され、利用しているユーザーにその確認を求めます。しかし、内容が読みにくく、理解するのに時間が必要なため、確認することなく利用規約の変更に同意するユーザーも多いでしょう。
こうした問題点を解決するには、何よりもコンテンツのわかりやすさが必要です。文章の書き方や画像の使用、レイアウトなど、わかりやすさを実現する方法は多数ありますが、この事例のように、"要約する"という形でユーザーに説明するアイデアは、非常に素晴らしいものだと思います。
ウェブサイト上に存在するすべてのコンテンツは、ユーザーに理解してもらうために用意されたものです。どのコンテンツも埋もれることなく、ユーザーが理解できるようにどんな方法を使っていくのか、まだ見たことのないアイデアの登場にこれからも期待したいと思います。
誰もが参加できる、"報酬あり"のファッションショー
新ライフスタイルブランド「EN ROUTE」の2014年秋冬コレクションに合わせて開催されたプロモーション、「 EN ROUTE THE SNAP UP」のウェブサイトです。
図4 街中のファッションショーを舞台にした「EN ROUTE THE SNAP UP」のウェブサイト
credit:PARTY
"クラウドソーシングによる史上初のファッションショー"と銘打たれたこのプロモーションでは、「 ENROUTE」の2014年秋冬コレクションを着用したモデルたちが、街中の至るところに登場するという屋外のファッションショーが行われます。
「EN ROUTE THE SNAP UP」の概要を説明した動画
誰もが参加できるこのファッションショーで、参加者は専用のアプリでモデルを探し出し、撮影していきます。撮影された写真はリアルタイムで審査・購入(1枚1,000円)され、購入された写真の代金は、モデルと同じように街を歩いているCASHIER MANから直接現金で受け取れるという仕組みです。
"スマートフォン中心"に移行するプロモーション
イベント当日の様子はYouTube Liveでも生配信されていましたが、「 EN ROUTE THE SNAP UP」は、自分の意志で動くことで、より強い印象を参加者に与える、体験型のプロモーションです。
YouTube Liveで生配信された「EN ROUTE THE SNAP UP」の様子
こうしたプロモーションは、ただ見たり聞いたりする事例よりも、実際に体験したユーザーにとって、イベントが終了後も印象に残りやすく、体験を思わず他人に話したくなるような持続性があるのが特長です。
特に「EN ROUTE THE SNAP UP」では、閉鎖的なファッションショーとは異なり、誰もが参加できることや、写真撮影で報酬が発生するために、ユーザー自らが積極的に動くことで、より強くユーザーの印象に残るイベントになったのではないでしょうか。
体験型のプロモーションが成功を納めれば、PCの前にどっかりと座ったユーザーではなく、スマートフォンを持って自由に行動できるユーザーを動かすプロモーションが、今後は増えていくのでしょう。もちろん、成功には実際にユーザーを動かす力を持った強い企画やアイデア、大掛かりな準備が必要不可欠ですし、急激な増加があるとは思えません。ですが、こうした事例が次々と登場する今が、プロモーションがスマートフォン中心へと移行する、大きな変化に向かう途中なのかもしれません。
というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。