"3月は別れの季節"と言いますが、目やノドのかゆみ、止めどなくあふれる鼻水、終わらないクシャミなど、そうしたものからは「今すぐにでもお別れしたい!」と思う今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。
ドローンがつくる、未来のストア
2015年3月5日に発売された、クロックスの軽量タウンスニーカー「norlin(ノーリン) 」のプロモーションサイト、『 空中ストアcrocs flying norlin project』です。
図1 クロックスの最新スニーカー「norlin」のプロモーションサイト、『 空中ストアcrocs flying norlin project』
credit:BIRDMAN
期間限定(2015年3月5~8日)で東京ミッドタウンにオープンした「空中ストア」は、試し履きしたい「norlin」をタブレットで指定すると、ディスプレイ台(高さ5m×幅10m×奥行6m)に陳列された80足のスニーカーの中から、ドローン(無人ヘリ)が指定された「norlin」を運んできてくれるというもので、ウェブサイトでは、その様子が生中継されました。
図2 東京ミッドタウンの「空中ストア」の様子は、ウェブサイト上でも生中継された
ビジネスとしてのドローンの価値
一般的な認知度も上がってきているドローンについては、すでにビジネスでの使用を企業が模索し始めています。海外ではドローンを使って人形を操作しようとするDisney Enterprisesの「PuppetCopter Maurice」 、Amazon.comの「Amazon Prime Air」やGoogleの「Project Wing」といった配送サービスプロジェクト、国内でも保険会社がドローン用の損害保険を発売したり、ドローン自体の製造を始めるメーカーが現れたりと、大企業がドローンを使ったビジネスに大きな可能性を見出しています。
Googleの配送サービスプロジェクト「Project Wing」の動画
VIDEO
こうした動きをみると、ドローンには明るい未来があるように思われますが、個人を含めた急速な利用の拡大で、アメリカでは立ち入り禁止地区への侵入やドローンと民間の航空機との接触未遂なども起きています。また、操縦者の免許制導入や飛行高度や操縦範囲に対しての法的規制も始まるなど、安全性やモラルといった周辺環境の整備はまだ始まったばかりです。
この「空中ストア」は、ドローンが運んでくることで、スニーカーの軽さをアピールするというアイデアも素晴らしいのですが、現時点でまだ"安全性の確保された確実に使える技術"でないにも関わらず、自作のドローンを使って、見たことも経験したこともないアイデアを実現しようという、大きなチャレンジを見事に実現していることに感動します。
少し考えてみるだけでも、現在の生活の中でドローンが活躍しそうな場面が数多く浮かんできます。今回の「空中ストア」を見れば、大人が子供のようにドキドキ、ワクワクさせられるような現実が、すぐそこまで迫っているのかもしれません。
本当の会社、教えます
世界各地に拠点を持つ広告代理店Sid Leeによる、『 Sid Lee - Dashboard』です。
図3 社内に取り付けられたセンサーからのデータをインフォグラフィックで表現した『Sid Lee - Dashboard』
フランスのSid Lee Parisの会社内にある冷蔵庫やコーヒーメーカー、玄関のドアや階段にセンサーを設置して取得したデータを、ウェブサイト上でリアルタイムに変化するインフォグラフィックとして表現しています。
各データ項目の右上にあるプラスの部分をクリックすると、期間(日・月・年)に応じたデータが棒グラフとして確認できます。
会社の雰囲気をどう伝えるか
どの企業のウェブサイトにも、「 会社案内」という名の項目が存在しています。その内容に関しては、「 会社概要」「 社長メッセージ」「 企業理念」「 沿革」「 組織図」「 IR情報」など、ほぼ"おきまり"の内容です。もちろん、企業の基本データの提示ということであれば、これらの項目が並んでも問題はありません。
『Sid Lee - Dashboard』の仕組みを説明する動画
VIDEO
ですが、こうした項目から社内の様子を伺い知ることは難しいでしょう。最近は、こうした雰囲気や仕事内容は、「 社員インタビュー」などを使って制作される「採用情報」のページで詳しく説明されるようになっています。
『Sid Lee - Dashboard』では、会社で起きている出来事をリアルタイムに表現することで、どのような会社なのかが想像できます。文章や画像、映像など、"実際の"会社の雰囲気を伝える方法はいろいろありますが、単なる数値データであるにも関わらず、会社の持つアイデアや技術力など、多くの情報を伝えてくれる面白い実例ではないでしょうか。
日本にもやってきた"第三の波"
アメリカ・カリフォルニア州オークランドで生まれたコーヒーショップ、「 Blue Bottle Coffee」のウェブサイトです。
図4 「 micro brewed coffee」で有名な、「 Blue Bottle Coffee」のウェブサイト
"第三の波"と呼ばれる「micro brewed coffee(マイクロ・ブリュー・コーヒー/豆を選別し、焙煎後48時間以内にバリスタが手で1カップずつ淹れるコーヒー) 」というコンセプトで、アメリカでも話題になっています。日本でも東京・清澄白河に第1号店がオープンし、3時間を超える長い行列ができたことで話題となりました。3月7日には青山に第2号店がオープンしています。
課題から確実に成果を得るメソッドとは
アメリカでも大人気の「Blue Bottle Coffee」ですが、店舗とは異なり、ウェブサイトで販売する商品の売り上げが伸び悩んでいました(ウェブサイトの売り上げは全体の利益の10%) 。そこで、ある方法を実施したところ、売り上げと滞在時間を2倍にすることに成功 します。それが「Design Sprint(デザインスプリント) 」です。
図5 「 Blue Bottle Coffee」の課題に対する「Design Sprint」を解説したページ
「Design Sprint」とは、Googleのベンチャーキャピタルである「Google Ventures」が用いているデザイン主導による課題解決方法で、ユーザーからのフィードバックを素早く改善につなげるため、"アイデアからプロトタイプまでを、わずか5日間で完結させてしまう"というものです。具体的な実施方法についても、ウェブサイト で詳しく公開されています。
図6 「 Design Sprint」を解説した「Google Ventures」のウェブサイト
近年、「 Design Sprint」のような課題の解決方法が数多く登場しています。もちろん、こうした手法を取り入れれば、必ず課題が解消されるというわけではありません。とはいえ、実施によって、問題解決への確実な成果が得られるとすれば、これからさらに多くの成功事例が登場してくることでしょう。2015年のトレンドとなるかもしれない、このような課題解決方法がどういう広がりを見せるのか、これからも注目していきたいと思います。
というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。